注文住宅は間取りを自由に決められるのが大きな魅力の一つですから、計画を立てる時には人それぞれ様々な理想があります。
しかしこれから長く住むこと、金額が大きいことを考えると期待だけでなく失敗したり後悔したりしないかという不安がある方も多いのではないでしょうか。
本記事では、注文住宅の間取りの決め方のポイントやおすすめのアイデアと実際の成功例、後悔しないためのポイントQ&Aなどを紹介します。 間取りの決め方に不安がある人は、ぜひ理想の注文住宅を建てる参考にしてください。
監修者 高橋 良彰
一級建築士事務所 高橋良彰建築研究所 / 一級建築士
建築を学び始めた武蔵野美術大学時代から設計事務所スタッフやハウスビルダー勤務、また、「住まいの学校『住学』すがく」等これまで様々なかたちで建築に関わってきました。
この仕事の一番の魅力は“人との出会い”だと思っています。
「快適な省エネ住宅をローコストに供給する」を信条とする新住協会員。
住まい手の要望や想いを反映させた住まいづくりをモットーとしています。
注文住宅の間取りの決め方5つのポイント
注文住宅は間取りの自由度が高いところが魅力ですが、決め方の基準がわからず悩んでいる方も多いのではないでしょうか。
失敗しない注文住宅の間取りの決め方には大きく分けて①自分たちの希望を把握し調整する、②希望に優先順位をつけて動線や配置を考える、③世帯人数と土地の広さを考慮する、④実際の土地と間取りの相性を考える、⑤担当者と緊密にコミュニケーションを取るという5つのポイントがあります。
①自分たちの希望を把握し調整する
注文住宅の間取りを決める時には、自分たちが住宅に何を求めているのかをきちんと把握することが重要です。
家族・友人の口コミや情報誌・インターネットでの検索など間取りの情報を探そうとすると様々な情報が溢れており、その中には心惹かれるものがたくさんあるかもしれません。しかし、家族の形態は人それぞれですから一つの情報だけ取り出して良いと思っても、総合的に見て自分たちの希望にはそぐわない場合があります。自分たちが住宅に何を求めているのかを最初にきちんと把握しておけば、情報を判断する時の指針となります。
また、1人で住む場合は自分の希望だけで良いですが、1人ではない場合は家族間での調整も大事です。お互いに譲歩しあって気持ちよく納得できる指針を最初に決めておきましょう。
②希望に優先順位をつけて動線や配置を考える
家族間で話し合いどんな希望があるのかが把握できたら、希望に優先順位をつける作業が必要になります。
取り入れたい設備や間取りがいくつかあるとして、予算には限りがありますから全てを採用するのは難しいことが多いです。また、複数の要素をどこにどのように配置するかで暮らしやすさが変わってきます。
良いと思った設備を適当につなげるだけでは快適に暮らすことができる間取りになりません。また、ある設備とある間取りは取り入れ方によっては両者の良さを半減させてしまうということがあるかもしれません。そうなったとき、何をより優先するかの指針としてあらかじめ希望には優先順位を付けておきましょう。
③世帯人数と土地の広さを考慮する
間取りを考える時には、世帯人数と土地の広さを考慮することも重要です。
1人暮らしの人が快適な間取りと2人で暮らすのに快適な間取りは違いますし、子供が増えた場合にはまた違った間取りが便利だと感じるでしょう。親世代と同居する場合はバリアフリーの設備が必要になるかもしれません。世帯の人数や構成によって、理想の間取りは変わってきます。
また、土地の広さはどのような間取りが実現可能であるかに深く影響します。土地面積が広ければ広いなりの、狭ければ狭いなりの間取りの考え方があります。
情報収集の時には、なるべく自分たちに近い世帯人数・土地の広さの情報を集めることを意識しましょう。
④実際の土地と間取りの相性を考える
いざ自分たちの希望がまとまったとしても、土地の立地や向き、形で希望が叶わないことがあるかもしれません。例えば、土地の向きが東西南北どちらに向いているかでも適した間取りは変わってきます。
土地に適さない家を無理やり建てても住宅の性能が十分に発揮できない可能性が高いので、土地との相性もきちんと考慮する必要があります。
⑤担当者と緊密にコミュニケーションを取る
現代では情報誌やインターネットでの検索などでいろいろな情報が手に入りますが、その土地に合った実情や最新の正確な情報は専門家に聞くのが一番です。また、担当者と円滑なコミュニケーションを取りわからないことや疑問に思ったことをなんでも質問することで、行き違いや不満などを減らすことにつながり、納得して家を建てることができます。
担当者に希望を伝える時は、取り入れたい設備や間取りそのものだけでなくそれを取り入れたい理由や目的も伝えると要望が伝わりやすくなり、別の角度からのより良い提案を受けられる可能性があります。また、参考写真などを用意して「こういうイメージが良い」と伝えるのも良いでしょう。
注文住宅のプランは、法律・敷地条件・建て主の要望・予算・構造など様々な要素が複雑に組み合わさって出来ています。
また、同じ敷地でも、プランの正解は 1 つではありません。
建築士と打合せを重ねながら、自分たちの優先順位を整理していくようなイメージで進められると、理想のプランに近づけられるでしょう。
注文住宅で人気の間取り成功例のアイデア集ランキング【重視するポイント別】
家族の形は人それぞれ異なり、生活様式に応じて理想の間取りは大きく変わってきます。間取り選びでは、自分たちの生活に何が必要なのかを的確に捉えることが重要です。
以下で①家事のしやすさ、②家族のコミュニケーション、③趣味やプライベート、④収納、⑤リモートワーク・テレワークの設備、⑥将来柔軟に変更できる間取りの6つの観点からおすすめの間取りを実例と共にランキング形式で紹介します。
①家事のしやすさを重視する
普段の整理整頓だけでなく災害時の備蓄準備にも!
キッチン横の小部屋、パントリー
パントリーは食品や調理器具を収納するための、キッチンに隣接した小さな部屋や収納場所です。
パントリーの設置には、以下のようなメリットがあります。
- 食料品や調味料、調理器具などをきれいに収納できる
- キッチンが片付くため調理がしやすくなる
- 買い置きしたものを管理しやすい
また、机や椅子を配置してちょっとした休憩や調理の補助スペースとして利用する場合もあります。
パントリーは普段の整理整頓に役立つだけでなく、災害時の備蓄の準備にもつながります。キッチンに隣接する場所に配置したり、玄関や駐車場から近い場所に設置したりすると使いやすいでしょう。
家事を行う場所を集約して効率アップ!
ちょっとした作業や休憩にも使える家事室
家事室は主に洗濯物を洗う・干す・たたむ・アイロンをかける・補修するなどの一連の衣服関連の家事を集約して行うために設けられる場所で、ユーティリティスペースと呼ぶこともあります。
どこまでの機能を持たせるかは人によって異なりますが、作業場所としてだけでなく衣服の収納場所としても利用したり、机やパソコンを設置して家事の合間にちょっとした作業や休憩をする場所として利用したりするといった使用方法も増えてきています。
家事室の設置には、以下のようなメリットがあります。
- 家事を行う場所を集約することで家事動線が良くなる
- 生活空間と家事を行う場所が分離されるので、リビングなどを片付いた状態で保ちやすい
- 家事の音が居室に伝わりにくくなる
家事室を上手に設計することで、家事の効率化と生活空間の快適性が両立できます。
設置場所はキッチンなど他の家事を行う場所との位置関係を考え、動線を無駄なく設計することが重要です。
家事室を設ける場所が確保できない場合は、リビングやキッチンの一角に家事コーナーを設けるという手段もあります。
②家族のコミュニケーションを重視する
開放的でお洒落な雰囲気を演出できるリビングの顔!
会話も弾むリビング階段
リビング階段は、上階につながる階段をリビングの一角に設ける構造です。部屋の中心的な存在としてデザイン性の高い演出が可能で、居室が上階にある場合帰宅後必ずリビングを通ることになるため家族間で会話が生まれやすくなります。
リビング階段の設置には、以下のようなメリットがあります。
- 素材選びやデザインの自由度が高く、開放的な雰囲気を演出できる
- 階段下を収納などに利用できる
- 家族の動きがわかりやすくなり、コミュニケーションが取りやすくなる
多くの場合吹き抜けとセットで採用され、住宅密集地や狭小地で採光を確保するために提案されることも多い設備です。
リビング階段はデザインや採光の面でもメリットが大きい設備です。
一方でリビングでの生活音や匂いが上階に伝わりやすくなったり、住宅の性能にもよりますが空調の効きが悪くなったりするといったデメリットもありますので、設置する時にはそれらの対策も一緒に考えた方が良いでしょう。
調理中も子供の様子を見守れる!
毎日の調理が楽しくなる対面キッチン
対面キッチンは、キッチンの作業場所をリビングと対面するように配置する設備です。通常キッチンの作業場所は壁側を向いていて調理中はリビングの様子がわからないことが多いですが、対面キッチンならリビングを眺めながら作業することができます。
対面キッチンの設置には、以下のようなメリットがあります。
- 調理中も家族と会話したり子供の様子を見守ったりすることができる
- キッチンがリビングの一部となり、開放的で明るい空間になる
- 動線が効率的で家事が楽になる
調理は多くの人が毎日行う家事であるため人気のある設備ですが、壁側に設置するタイプのキッチンと比べて広い面積が必要になることには注意が必要です。
対面キッチンはI型・L型・U型・セパレート・アイランド・ペニンシュラといったように様々な形があります。設置できる面積や生活様式から自分たちに合ったものを選びましょう。
キッチンの形状はプランの大きな要素のひとつでもあります。
リビングやダイニングと一体として柔軟に考えると、よりプランのバリエーションが増えるでしょう。
住宅密集地でも採光バッチリ!
開放感あふれる吹き抜け
吹き抜けは、家の中の特定の場所において天井と床を設けず、複数階をつなげる設備です。土地が狭くても家の中に開放感を出すことができ、デザイン性も高いためとても人気があります。
吹き抜けの設置には、以下のようなメリットがあります。
- 家の中に開放的で明るい空間が生まれる
- 上下の空間がつながることで声や気配が伝わりやすくなり、家族のコミュニケーションが活発になる
特に住宅密集地や狭小地では採光を確保するために大きな役割を果たすでしょう。
吹き抜けは採光や開放感の演出に大きく貢献しますが、空調の効きが悪くなることは避けられません。天井に空気を循環させるシーリングファンを設置するなどの対策も検討しましょう。
大きな吹き抜けを設ける場合、高気密高断熱や空調・換気計画を慎重に検討することが快適な空間を作る上で重要です。設置する際は、建築会社の方に詳しく確認することをおすすめします。
③趣味やプライベートを重視する
天気が悪い日も車の乗り降りが楽々!
防犯性も抜群のインナーガレージ
インナーガレージは建物に車庫を組み込んだ設備で、ビルトインガレージとも呼ばれています。車庫が居住空間の延長になるため、車やバイクが趣味の場合は作業部屋のような造りにしたり、ショールームの様にガラス張りにして家の中から眺められるようにしたりするなど趣味の空間として設置する人もいます。
インナーガレージの設置には、以下のようなメリットがあります。
- 防犯性が高く周囲の目線が気になりにくい
- 天候が悪い日の車からの乗り降りや荷物の出し入れの負担が少なくなる
- 車やバイクが趣味の場合、室内から眺められ手入れもしやすい
車やバイクを日常的に使用している場合利便性の高い設備ですが、1階部分の大きな面積をガレージが占めることになるため、他の居室の配置が制限されてしまうことには注意しましょう。
車から屋内への動線が短くなり利便性が高い一方で、排気対策のための換気経路の確保が必須です。また、面積だけでなく騒音対策の意味でも居室の配置には気を遣う必要があります。
周囲を気にせず大きな音が出せる!
楽器演奏や映画鑑賞に便利な防音室
防音室は、室外に音が漏れないことを目的につくられた防音性の高い部屋です。主に楽器演奏や映画鑑賞などの用途で導入されます。
防音室の設置には、以下のようなメリットがあります。
- 大きな音が出る趣味や作業を周りを気にせず集中して行える
- 楽器演奏などを行いたい時、外部で練習場所を借りなくても自宅で練習環境を用意できる
壁と天井に吸音材や遮音材を使用し、外部からの音の遮断性も高くなるため集中するにはぴったりの環境です。
防音室を設置する場合、生活空間から適度に離れた位置が望ましいです。
用途にもよりますが防音設備はそれなりに高額であり、部屋が大きくなるほど費用がかさむ点には注意しましょう。
家の中に生まれる開放感!
屋内にいながら光や緑を楽しめる中庭
中庭は建物や壁の間にある庭で、一戸建てではロの字型やコの字型、またはL字型の建物や外塀で囲まれた庭を指します。家の中に開放感が生まれるだけでなく、外で行う趣味を人目を気にせず楽しむことができます。
中庭の設置には、以下のようなメリットがあります。
- 中庭に窓が面した部屋が自然光により明るく開放的な雰囲気になる
- 中庭に植栽を取り入れると、屋内にいながら緑を楽しむことができる
- 周りを建物で囲まれているため、人目を気にせず屋外で行う趣味や作業を行うことができる
光や緑を取り入れながらも外部とは切り離された開放的な空間を作り出すことが可能で、適切な設計と手入れができれば気分転換と癒やしの場所として活躍してくれるでしょう。
中庭の設置にはそれなりに広い面積が必要です。あまり場所は取れないけれど中庭のような機能が欲しいという場合には、1~3坪程度の坪庭を設置するという方法もあります。
どちらにしても排水設備や植栽の手入れなどの定期的なメンテナンスは必要です。
人目が気になりにくい専用の外部空間!
日光浴やガーデニングも楽しめる屋上
屋上は、建物の最上階の屋根の上に設けられた平らな空間です。眺望を楽しみながら洗濯物を干したり日光浴をしたりガーデニングなどの趣味を楽しんだりすることができます。
屋上の設置には、以下のようなメリットがあります。
- 敷地面積に制約がある中で、新たな空間が生み出せる
- 人目が気になりにくい専用の外部空間を確保できる
- 日光浴や読書、ガーデニングなど趣味の場として利用できる
一方で屋根の上に平らな空間を用意する都合上、防水工事をしっかりと行った上で排水設備はこまめに手入れしないと、豪雨で雨漏りしたり排水設備が詰まって屋上に水が溜まったりしてしまうため注意が必要です。
屋上には屋根の全面が屋上になっているタイプや一部だけのタイプなど様々な形態があります。用途や生活様式に合わせてどの形態にするか検討しましょう。
④収納を重視する
玄関をきれいな状態でキープ!
アウトドア用品も保管できる土間収納
土間収納は、靴を脱がずに利用できる玄関の一角に設けられた収納です。屋外で使用する、外に出しっぱなしにしておくのは不安な道具の収納などに便利です。
土間収納の設置には、以下のようなメリットがあります。
- 玄関をきれいな状態に保てる
- 外で使ったものを汚れを気にせず収納できる
- 高価なアウトドア用品なども風雨による劣化や盗難を心配せず収納できる
家族が多く靴がたくさんある家庭では靴箱を土間収納に設置すると玄関を片付いた状態で保つことができます。
土間収納に扉を設置する場合は、開き戸より折れ戸や引き戸が便利です。そもそも扉を設けない場合も多いですが、どうしても気になる場合はロールスクリーンなどで目隠しするのも一案です。
匂いがこもるのを防ぐために、換気のための小窓や換気扇を設置する場合もあります。
季節物の衣類も余裕を持って収納可能!
整理整頓が楽になるウォークインクローゼット
ウォークインクローゼットは人が立ち入れる広さがある大型の壁面収納で、クローゼットの内部に入って衣服を選ぶことができます。
ウォークインクローゼットの設置には、以下のようなメリットがあります。
- 内部が立ち入り可能なので、中の整理整頓がしやすい
- 季節物の大量の衣類も余裕を持って収納することが可能になる
- 扉を閉めれば中の荷物が見えなくなるため、見目の良い空間が保たれる
可能であれば家族それぞれのウォークインクローゼットを設けると非常に利便性が高くなるでしょう。
ウォークインクローゼットは一般的なクローゼットよりも広いため、衣類・靴・鞄・アクセサリーなどを整理しやすく、より効率的に保管できます。部屋の見た目がすっきりしますし、棚などを自由に配置できるので、自分好みに収納場所をカスタマイズすることができます。
⑤リモートワーク・テレワークの設備を重視する
リモートワーク・テレワークルームとしても使える!
作業に専念できる書斎
書斎は、読書や勉強・仕事などに専念できるよう設けられた個室です。多様な働き方が増えている昨今では、在宅しながら仕事をする時のリモートワーク・テレワークルームとして利用するために設置する人も増えてきています。
書斎の設置には、以下のようなメリットがあります。
- 家族の生活音から切り離された静かな環境が作れる
- 作業に専念できるので、意欲的な状態の維持が期待できる
- オンライン会議の時にも、周りを気にせず集中できる
棚や机・椅子などの家具にこだわり自分らしく居心地の良い環境作りができれば、生産性の向上に大きく寄与するでしょう。
専用の部屋を用意できない場合は、リビングの一角などにちょっとした仕切りのあるワーキングスペースを設けるという方法もあります。
⑥将来柔軟に変更できる間取りを重視する
子供の成長に合わせて部屋の間取りを調整!
間仕切りで仕切れる子供部屋
間仕切り可能な子供部屋は、中間位置に後で間仕切りを設置できるよう工事をし扉を2つ用意する子供部屋です。最初は一つの広い子供部屋として使用し、子供が大きくなったら間仕切りを設置して二つの個室に分割します。
間仕切り可能な子供部屋の設置には、以下のようなメリットがあります。
- 子供が乳幼児期は広々とした空間で過ごすことができ、成長したら個室で過ごすことができる
- 居室を2つ用意する十分な面積がない場合でも子供に個人の空間を用意できる
- 子供が独立した後には、再び間仕切りを外し一つの広い部屋として使用できる
子供が小さい時・成長した時・独立した時で柔軟に間取りを変更することで1つの部屋を様々に使うことができる合理的な設計です。
仕切ることを想定していない部屋に子供が大きくなってから間仕切り工事をするより、最初から仕切ることを想定して作った方が経済的な負担は少なくなります。
注文住宅間取り成功例の写真付き実例15選【2LDK・3LDK・4LDK】
家族の人数や生活様式によって必要な部屋数は変わってきます。以下で、2LDK・3LDK・4LDKに分けておすすめの間取りを15個紹介しますので、自分たちが必要としている部屋数に近い実例を参考にしてください。
分類の補足として、数字とLDKを組み合わせた「〇LDK」という表記の仕方ですが、LDKはリビング・ダイニング・キッチンの略でリビングとダイニングとキッチンの3つが1部屋に集まっている間取りを指します。数字が前に付く場合、その数字はLDK以外の居室の数を表しています。
一見すると前に付いている数字が大きいほど家の面積が広いように感じられますが、家の中にあるのはLDKと居室だけではありませんから、4LDKの住宅より2LDKの住宅の方が広いこともあります。以下の紹介では坪数(延床面積)も表記していますので、合わせて確認してみてください。
居室の定義について詳しく見る
居室は建築基準法第二条において「居住、執務、作業、集会、娯楽その他これらに類する目的のために継続的に使用する室」として定められており、一般の住宅の場合には「リビング」「キッチン」「寝室」が当てはまります。LDKのある間取りではリビングとキッチンはLDKの括りに入りますから、「〇LDK」の数字部分は「寝室として利用できる部屋」の数として見ることもできます。
居室は広さについての定義がありませんので、居室として書いてあるからといって「〇畳以上」が保証されているということはありません。ただし、建築基準法第二十八条によって採光と換気についての基準は設けられているため、基準を満たす窓などの開口部がなければ居室と呼ぶことはできません。例外として地下室を居室として使用する場合採光の基準は適用されませんが、別途衛生上の基準を満たす必要があります。
玄関・トイレ・浴室・脱衣室・洗面所・押入れ・納戸・廊下などはLDKにも居室にも当てはまりませんので、「〇LDK」という表記のみではどのような広さか・そもそも存在するのかを判断することはできません。
DKとLDKの違いについて詳しく見る
DKはダイニング・キッチンの略で、ダイニングとキッチンが1部屋になっているものです。LDKとの違いはリビングがあるかないかということになりますが、どの程度の広さがあればリビングとして扱われるのでしょうか。
不動産公正取引協議会連合会の定める「不動産の表示に関する公正競争規約」によれば、DKとLDKの定義はそれぞれ以下のようになっています。
- DK
-
台所と食堂の機能が1室に併存している部屋をいい、住宅の居室数に応じ、その用途に従って使用するために必要な広さ、形状及び機能を有するものをいう。
- LDK
-
居間と台所と食堂の機能が1室に併存する部屋をいい、住宅の居室数に応じ、その用途に従って使用するために必要な広さ、形状及び機能を有するものをいう。
この定義によれば、DK・LDK以外の居室の数によってDK・LDKと表記する場合に必要な広さが変わってくるということになります。
この居室数と広さの関係については「不動産の公正競争規約集」で言及があり、以下の様に定義されています。
居室数 | DK | LDK |
1部屋 | 4.5畳 | 8畳 |
2部屋以上 | 6畳以上 | 10畳以上 |
DK・LDK以外の居室が1部屋しかない場合は4.5~7畳までがDK、8畳以上の広さがLDKという表記になり、DK・LDK以外の居室が2部屋以上ある場合は6~9畳までがDK、10畳以上の広さはLDKということになります。DKに満たない広さの場合は単にK(キッチン)と表記します。
S・N・DEN・WICについて詳しく見る
間取りを調べていると、S・N・DEN・WICといった記号を目にすることがあります。これらはすべて略称で、Sはサービスルーム・Nは納戸・DENは書斎・WICはウォークインクローゼットです。共通しているのは「居室としての採光や換気の要件を満たしていない部屋」であるという点です。ウォークインクローゼットについては専用の構造をしていることが多いですが、サービスルーム・納戸・書斎については間取りに使われている場合ほぼ同義語のことが多いでしょう。
居室の要件に広さの定義はありませんので、場合によっては6畳あるサービスルームというものも存在します。
2LDKの成功例5選
夫婦2人で暮らす、回遊性と適材適所の収納にこだわった快適な住み心地の間取りです。立地は周囲を建物に囲まれた旗竿地ですが、プライバシーは守りつつ採光にも配慮した明るい家になっています。
- 延床面積
-
27.86坪
- 設計・施工
-
グリーンハウザー
3LDKの成功例5選
夫婦2人と子供1人で暮らす、素材や動線・間取りにこだわった間取りです。水回りは回遊可能な動線になっており、家事効率の向上が見込めます。また、この動線上には家族全員の衣類や荷物をまとめて収納できるクローゼットや収納が配置されており、整理整頓もしやすいよう考えられた設計です。
- 延床面積
-
32.99坪
- 設計・施工
-
石井工務店
4LDKの成功例5選
夫婦2人と子供3人で暮らす、見せる収納と隠す収納のバランスを調整して空間をデザインした間取りです。内装や家具にもこだわり、自然素材を感じるカフェのような仕上がりになっています。
- 建築費(本体価格)
-
1,000〜1,500万円
- 延床面積
-
32.6坪
- 設計・施工
-
アットナチュレ
注文住宅おすすめの間取り成功例アイデア集4選【世帯の形別】
自分たちにぴったりの注文住宅の間取りは、世帯の形によっても変わってきます。以下で①子育て世帯・②シニア世帯の2つの形に分けておすすめのアイデアを紹介します。
①子育て世帯におすすめのアイデア
キッズスペース
キッズスペースは小さい子供が日中過ごすための空間です。子供部屋との違いは、リビングやキッチンから目の届くところに設置された仕切りのない空間であることで、遊んでいる子供たちの様子を家事をしながら確認することができます。
1つの階層に複数の高さの床面が設けられたスキップフロアや階段の床下空間を活用して設置すると、子供が大きくなって遊び場として使用しなくなった後は収納として再利用することも可能になります。
子供の安全面を考えた、安心できる設計です。また、子供の成長に合わせて空間の用途を変更できるのは、注文住宅ならではの大きなメリットだと言えます。
ファミリースペース
ファミリースペースは、家族が共有して勉強や作業に使えるよう机や椅子、本棚を設置した多目的な空間です。書斎や家事室、子供の勉強場所などの機能をすべてまとめたものと言えます。それぞれに部屋を用意するほどの場所が用意できない場合とても有用な空間です。
家族みんなが利用できるため、互いに気兼ねなく作業に打ち込むことができ、家族同士のコミュニケーションも自然と生まれやすくなります。
限られた面積を有効活用できる上、家族のコミュニケーションと絆を深める役割も期待できる空間です。
②シニア世帯におすすめのアイデア
玄関スロープ
玄関スロープは、玄関入り口の段差をなくすために設置する傾斜のある歩行者通路です。わずかな段差や階段であってもバランスを崩しやすく転倒の危険性がある小さな子供や高齢者、車椅子の利用者や体の不自由な方が行き来する時や、重い荷物を運ぶ時などに活躍し転倒や怪我を防いでくれます。
あらゆる世代にとって非常に有用な設備ですが、勾配がきついとかえって足腰に負担がかかってしまったり、幅が狭いと車椅子が通れなかったりする可能性がありますので、設置する時には専門家とよく相談しましょう。
スロープの勾配は建築基準法とバリアフリー法でそれぞれ基準が設けられています。バリアフリー法の方が車椅子利用者が自力で登れる限界の勾配を考慮した厳し目の基準です。
勾配が緩やかになるほど長いスロープが必要となり、設置場所の確保が重要になります。
車椅子でも利用できるトイレ
車椅子でも利用できるトイレは、シニア世帯や二世帯住宅などで人気の設備です。
段差がなく、扉は引き戸や自動ドアになっており、車椅子が回転できる広さが確保されていることが重要です。また、手すりの設置や洗面台の高さにも気を配るとより使いやすいものにでしょう。
現在車椅子を使用していない家庭でも、将来的に必要になることを考えて設置している場合があります。
設置する場合は専門家に相談し、車椅子利用者の実際の利便性を考えた設計をすることが大切です。狭小住宅への設置は難易度が高まりますが、対応可能な範囲で工夫を重ねることはできます。
【一級建築士監修】注文住宅の間取りを後悔だらけにしないためのQ&A
注文住宅の成功例やアイデアを見て「これを取り入れよう」と考えても、実際に計画を始めると本当に自分たちに合った間取りなのか不安になる人もいるのではないでしょうか。
以下で、注文住宅の間取りで後悔しないためのポイントについて、一級建築士の高橋さんの監修のもとQ&A形式で紹介します。
間取りの成功例を参考に計画をしっかり立てて、後悔のない注文住宅を建てよう
本記事では、注文住宅で理想の間取りを実現するためのポイントから参考になる実際のアイデアや成功例、気になるポイントのQ&Aを紹介しました。 自由度の高い注文住宅だからこそ、失敗や後悔を避けるために事前にしっかりと計画することが重要です。
計画する時は、細かな設備や間取りを決める前に何を重視するかの指針を建てておきましょう。指針を決めずに漠然とした考えだけで建築会社を決めてしまうと、建てた後に後悔することになってしまうかもしれません。
建築会社の担当者にうまく要望を伝えられるか不安な場合は、インターネットや情報誌で参考写真を探してチェックしておいたり、事前に間取り作成アプリなどでシミュレーションしたりしてイメージを固めておき、それを一つにまとめておくと話がしやすくなります。
建築計画を立てはじめ、どのような間取りにするか検討するにあたって、建築会社によっては事前にヒアリングシートや住宅調書を建て主さんに書いてもらうケースもあります。
そういったものを利用して、事前に一旦自分たちの要望をまとめて見直してみることも大切です。
要望を整理し、担当者としっかりコミュニケーションを取って、自分たちの生活様式に合った快適な住まいを実現してください。
IECOCORO編集部
群馬・栃木・宮城・山形で注文住宅の情報誌「IECOCORO(イエココロ)」を発行する編集部。WEBサイト「自慢の注文住宅集めました。」では、地域の工務店情報のほか、多数の建築実例とイベント情報を紹介しています。
- e-GOV法令検索「建築基準法第二条」
- e-GOV法令検索「建築基準法第二十八条」
- 不動産公正取引協議会連合会「不動産の表示に関する公正競争規約」
- 不動産公正取引協議会連合会「不動産の公正競争規約集」
イエココロのWEBサイト「自慢の注文住宅集めました。」では、群馬・栃木・宮城・山形を中心とした工務店情報やモデルハウス情報のほか、多数の「建築実例」を紹介しています。お近くにお住まいの方は、ぜひチェックしてください。