一つの階層にすべてがまとまってる平屋は、生活の利便性や間取りの自由が高く、構造的にも安定していて災害に強いため近年注目を集めています。子供を安心安全な環境で育てたい子育て世帯や、子供が独立した引退後の生活を見据えた夫婦から特に人気が高いです。
しかし平屋には2階建てや3階建てとは違った特徴があります。平屋ならではの特徴を把握せずに間取りを決めてしまうと日の光が当たらない、動線が悪い、プライバシーが確保できない、収納スペースが足りないなどの様々な問題が出てくる可能性があります。 このような事態を避けるためには、実際に建てられた平屋の成功例から間取りのコツを学ぶことが重要になってきます。
本記事では、20坪・25坪・30坪・35坪・40坪といった坪数ごとに分けておしゃれで住みやすい平屋の間取り成功例を紹介します。ぜひ、平屋の間取りを決める時の参考にしてください。
監修者 高橋 良彰
一級建築士事務所 高橋良彰建築研究所 / 一級建築士
建築を学び始めた武蔵野美術大学時代から設計事務所スタッフやハウスビルダー勤務、また、「住まいの学校『住学』すがく」等これまで様々なかたちで建築に関わってきました。
この仕事の一番の魅力は“人との出会い”だと思っています。
「快適な省エネ住宅をローコストに供給する」を信条とする新住協会員。
住まい手の要望や想いを反映させた住まいづくりをモットーとしています。
平屋のメリット・デメリットと人気の理由
そもそも平屋とはどんな建物?
平屋は住宅の区分の一つで、1階建ての建物のことです。一般的には「平屋」という表記が広く用いられていますが、公的な表記では「平家」となります。近年では幅広い世代で人気が上がっており、新築着工数は増え続けています。
平屋には2階建てや3階建てとは違う特徴やメリット・デメリットがあります。平屋を検討する時は、これらの違いをきちんと把握した上でライフスタイルに合わせて総合的に判断しましょう。
平屋のメリット
平屋のメリットは、主に以下の3点が考えられます。
- ①上下階の移動が必要ない
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平屋は上下階の移動が必要なく段差が少ないため、転倒の危険性が低くなり、小さな子供や高齢者も安全に暮らすことができます。
- ②生活範囲がまとまる
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平屋は2階建て以上の建物と比べて生活範囲がまとまっています。これによって家事の動線が効率的になるだけでなく、家族が家の中のどこにいるのかわかりやすくなって、コミュニケーションが活発になることが期待できます。
- ③耐震性に優れ、間取りの自由度が高い
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平屋は構造がシンプルで高さがないため、耐震性に優れているという強みがあります。さらに2階建て以上の場合、上に乗る階層のことも考えて総合的な設計をしなくてはなりませんが、1階建ての平屋は上の階層のことを考える必要がないため間取りの自由度が非常に高いです。
平屋のデメリット
平屋のデメリットは、主に以下の3点が考えられます。
- ①広い敷地が必要になる
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平屋は1階部分しかありませんから、2階建て以上の建物と比べて生活に必要な面積を確保するために広い敷地が必要になります。
- ②費用が割高になる
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平屋は2階建て以上の建物と比べて、1階部分の床面積をなるべく広く取って立てる傾向にあります。その結果家の基礎と屋根の材料が多く必要になり、費用が割高になることが多いです。
- ③採光やプライバシーの確保に工夫が必要になる
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住宅密集地などで周囲に2階建て以上の建物が多い場合、何も考えずに平屋を建てると日の光が届かない家になってしまいます。しかし日の光を取り入れたいからといって窓を大きく取ると、外部から生活空間が見えやすくなってしまいますから、バランスの取れた適切な採光計画を立てる必要があります。
新築の平屋の数は10年で2倍以上増加している
国土交通省の建築着工統計調査によると、新たに建築される居住専用住宅の数は年々減少傾向にあり、2013年には506,252棟でしたが2023年には385,919棟と10年で約24%減少しています。一方で新たに建築される平屋の数は増加傾向にあり、2013年には36,551棟でしたが2023年には57,848棟で増加率は約58%です。
2013年 | 2023年 | |
居住専用住宅の総数 | 506,252棟 | 385,919棟 |
平屋の数 | 36,551棟 | 57,848棟 |
居住専用住宅の総数における平屋の数の割合は、2013年に7.2%だったのが2023年には15%と10年で2倍以上になっています。このように、近年平屋の需要は確実に高まってきているのです。
どんな人が平屋を選んでいる?
平屋のメリットとして多くの人が最初に思い浮かべるのは、段差がなく上下階の移動をしなくても良いという点ではないでしょうか。この点から、平屋を選ぶのは移動が困難になってきた高齢者・シニア夫婦が多いというイメージを持つ人もいるでしょう。
しかし近年ではシニア夫婦だけでなく、子育て世帯で平屋を選ぶ人が増えてきています。子育て世帯に魅力的な平屋の特徴は、以下のような点です。
- 家事が効率よく行える
- 家事をしながらでも子供に目が届きやすい
- 家族の時間が取りやすい
- 子供が独立した後も生活がしやすい
- 間取りの自由度が高い
住宅の購入は非常に大きな費用がかかります。また、買って終わりではなくその後長くそこに住み続けることになります。広さばかりを求めるのではなく、家族のコミュニケーションを重視した住みやすく性能の高い家を求める傾向が強くなってきているのかもしれません。
また、子供が独立した後、老後のことも考えて初めから平屋を選ぶという選択もあるようです。初めから平屋で家を建てておけば、老後に新しく平屋を建てたり2階建てを平屋にリフォームしたりする必要もなく、住み慣れた家にずっと住み続けることができます。
さらに若い世帯に平屋が魅力的に映る大きな要因として、平屋は上の階層のことを考えなくて良いため間取りの自由度が高いという点が挙げられます。家全体をどのような形にするかの自由度も高いため、自分たちの好みに合わせたおしゃれな住まいの実現が可能になります。
このような点から、近年子育て世帯で平屋を選ぶ人が増えてきていると考えられます。
【新築】坪数別平屋の間取り成功例【20坪・25坪・30坪・35坪・40坪】
平屋の間取りは高い自由度が魅力的ですが、自由度が高いからこそ失敗してしまわないか不安になる人も多いのではないでしょうか。
平屋の間取り決めで失敗しないためには、実際に建てられた平屋の成功例から間取りのコツを学ぶことが重要になってきます。以下で、IECOCORO編集部が運営するWEBサイト「自慢の注文住宅集めました。」から実際の平屋の間取り成功例を坪数とテーマごとに10個紹介します。ぜひ、間取りを決める時の参考にしてください。
実例を参考にする時は、なるべく具体的な状況を確認して自分と照らし合わせて検討するようにしましょう。実例はあくまでも参考に過ぎず、最終的には自分自身で総合的に判断する必要があります。
- 【20.4坪】趣味を満喫!リビングの半分が土間になっている平屋
- 【21.3坪】キャンプやアウトドアが好きな人は必見!本格派の薪ストーブがある平屋
- 【27.5坪】こだわりのヴィンテージテイスト!シンプルな間取りでおしゃれな平屋
- 【29坪】25年先を見据えた性能!自然の力を取り入れた20代にぴったりの平屋
- 【32.3坪】無垢材や珪藻土などの自然素材を贅沢に使用した、本格的なカリフォルニアスタイルの平屋
- 【34.44坪】まるで南国バリ!憧れのリゾートスタイルの平屋
- 【35.3坪】他とは違うデザインに!要望を叶える輸入住宅スタイルの平屋
- 【39坪】格好良さと温もりの両立!おしゃれなデザイナーズハウスの平屋
- 【46.35坪】高級感ある外観と内装!家事がしやすいのに生活感を感じさせない平屋
- 【52.91坪】夜でもカーテンは不要!完全プライベートな中庭のある平屋
延床面積20坪~25坪の平屋住宅
趣味の野菜作りと草木染めを存分に楽しむため土間を採用し、生活に溶け込ませた居心地の良い住まいです。コンパクトなサイズでありながら、空間を活かした巧みな設計によりこだわりがしっかりと反映されています。
趣味を追求する為の土間工房と土間物置
趣味の野菜作りと草木染めを満喫するために設置した土間工房と土間物置は、時間を忘れて作業に没頭できるこだわりの空間です。
半分が土間!利便性を追求したリビング
土間工房で作業をすることも多い生活のため、ダイニング・キッチンは工房からの土間続きでリビングの半分が土間という利便性を追求した設計です。薪ストーブも土間に置かれているため、手入れがしやすくなっています。
吹き抜けで開けた小屋裏収納
屋根裏には小屋裏収納を設置し、1階と吹き抜けでつなげることで開放感を演出しています。吹き抜けがあると空調の効きが心配になるところですが、冬場には薪ストーブを利用するため寒さを気にせず広々とした空間を楽しむことができます。
- 建築費(本体価格)
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1,500〜2,000万円
- 延床面積
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67.49㎡(20.4坪)
- 設計・施工
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シュガービレッジ
キャンプやアウトドアが好きな夫妻が2人で暮らす、片流れ屋根が美しい平屋です。土地は変形地ですが、スペースを無駄なく活用することで家も庭も十分な広さを確保しています。自然素材を豊富に使用しており、一歩室内へ入った瞬間から木の香りを感じることができます。
リビングを家の中心とした間取り
リビングを家の中心に置くことで、家全体が見渡せ自然と集まって会話が弾む空間になっています。
薪割りも自分たちで!本格派の薪ストーブ
山小屋を意識した内装のリビングに設置された薪ストーブの薪は、キャンプやアウトドアが好きな夫妻が自分たちで薪割りをして用意する本格派です。専用の薪置場も庭に設置されています。
家の中と外をつなぐウッドデッキ
軒下でコーヒーを飲みながらのんびりとした時間を過ごすことができるウッドデッキは、外にある二つ目のリビングのような場所です。趣味の自転車を格納できる収納場所も備えられています。
- 建築費(本体価格)
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1,500〜2,000万円
- 延床面積
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70.38㎡(21.3坪)
- 設計・施工
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中村住宅工業
延床面積25坪~30坪の平屋住宅
夫婦2人で暮らす、ヴィンテージテイストの内装にこだわったおしゃれな住まいです。勾配天井による立体的な大空間で実際の坪数以上の開放感を感じられます。
ヴィンテージスタイルのインテリア
夫婦が以前から愛用しているお気に入りのショップの家具を基調としたヴィンテージスタイルのインテリアは、シンプルな間取りをおしゃれに彩っています。
間仕切りが少なく一体感のある間取り
間仕切りの少ない開放的なLDKを挟んで両側に配置された個室は、それぞれに大きな室内窓を設けることで全体としての一体感と個室としての独立感を両立しています。
収納たっぷりで生活しやすい間取り
各所に配置された収納と2か所のウォークインクローゼットに加え、外土間収納も備える収納たっぷりの住まいで、物があふれて困るということがありません。
- 建築費(本体価格)
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1,000〜1,500万円
- 延床面積
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91.00㎡(27.5坪)
- 設計・施工
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アットナチュレ
「25年先を見据えたパッシブデザイン&パッシブ換気」をコンセプトに建築された、20歳代にぴったりの住まいです。建築におけるパッシブとは、機械に頼らず自然の風や光などを上手に利用したり建物全体の構造や材料などにこだわったりすることで快適な住宅環境を整える方法のことで、長い目で見たときに光熱費に大きく差が付きます。
将来的な光熱費に差が付き環境にも優しい高性能住宅
自然の力を上手に取り入れて活用する設計で、ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)の基準を満たした高性能な住まいです。
大容量のレベルフロア収納
小屋裏収納と階段下収納を組み合わせて、2段階の大容量収納スペースを確保しています。
家族用と来客用で分けた2種類の動線がある玄関
玄関は家族用・来客用を分けた2種類の動線を用意しており、急な来客の時でも慌てて玄関を片付ける必要がありません。
- 延床面積
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95.9㎡(29坪)
- 設計・施工
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コンクスハウジング
延床面積30坪~35坪の平屋住宅
ゆるやかな勾配と落ち着いた色彩の大屋根が印象的な外観の平屋です。リビングは平屋ならではの勾配天井になっており、開放感のある空間に仕上がっています。
自然素材を贅沢に使用
壁は珪藻土塗り、床には無垢材を使用しており自然素材の質感が引き立つよう設計されています。
統一感のあるおしゃれなインテリア
家具や建具はすべて施工工務店が運営するインテリアショップでコーディネートされており、統一感のあるおしゃれな仕上がりです。
高い断熱性能と全館空調システムで、一年中快適でエコロジーな住まい
高い断熱性能と太陽光発電システムで家計にも環境にも優しい住まいです。全館空調システムを作用しているため、どの部屋にいても一定の温度で快適に過ごすことができます。
- 建築費(本体価格)
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2,000〜2,500万円
- 延床面積
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106.82㎡(32.3坪)
- 設計・施工
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Smooth(スムース)
夫婦2人で暮らす、南国バリ風のデザインに暮らしやすさと趣味の空間を加えた住まいです。勾配天井を活かした開放的な空間に南国風のインテリアや雰囲気を際立たせる観葉植物を配置したことで憧れの世界観を実現しています。リビングからつながる屋外のテラスでは、外からの視線を気にすることなく時間を忘れて寛ぐことができるでしょう。
南国バリ風のこだわりのインテリア
全体的に落ち着いた配色の中に設置された観葉植物や籐の家具が南国バリ風の雰囲気を醸し出しており、家にいながらリゾートにいるような気分が味わえます。
趣味のアクアリウムを楽しむ土間収納
趣味のアクアリウムを楽しむため土間収納を設置して、水槽を並べたアクアリウム空間を作っています。外から直接出入りができるため、荷物の搬入や水槽の手入れがしやすく趣味を楽しむのにぴったりの場所です。
リビングと段差のないテラス
リビングとテラスは段差のない大開口部で一体感のある作りになっており、室内と屋外が気軽に行ったり来たり出来るようになっています。
- 延床面積
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113.86㎡(34.44坪)
- 設計・施工
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アルネットホーム
延床面積35坪~40坪の平屋住宅
夫婦と子供2人で暮らすのは、青と白のツートンカラーの爽やかな外観が特徴的な輸入住宅スタイルの平屋です。輸入住宅は海外でその国の定番設計になっている住宅を資材別など一定の規格で輸入して国内に建築する方法で、他とは一味違う外観や内装を実現することができます。
輸入住宅スタイル
周りと違う個性を出したいと考えた時、輸入住宅スタイルは有力な選択肢の一つです。設計自体が海外の思想に沿っているため、日本の住宅街の中でパッと目を引く外観にすることができます。
回遊動線が魅力のペニンシュラキッチン
リビングとの一体感を重視しつつ、動線の効率化も図ったキッチンレイアウトです。半島状に突き出したペニンシュラキッチンは対面型キッチンのため、家事をしながら子供を見守ることができます。
効率的な回遊動線
玄関ホール・リビング・キッチン・洗面脱衣室・ファミリークローゼットは全て回遊が可能で、効率的な家事・生活動線を実現しています。
- 延床面積
-
116.55㎡(35.3坪)
- 設計・施工
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石井工務店
直線美を活かしたシンプルで鋭角な形の外観が特徴的な、デザイナーズハウスの平屋です。表面的なデザインだけでなく、厳選された自然素材や造り付けの家具、細かな動線にまでこだわりが感じられるのが大きな特徴となっています。
リビングにつながる通り土間
リビングの一角は玄関からつながる通り土間になっており、半分屋外であるかのような楽しみ方が可能です。
下部に収納のついたスキップフロア
半階ずらした空間を作るスキップフロアによって空間を広く使うことができ、下部を収納にすることで部屋がスッキリ片付きます。
ウォークスルークローゼット
キッチン・寝室・洗面脱衣室に隣接した行き止まりのないウォークスルーのクローゼットは、通路としての動線を確保しながら収納としても機能するため、スペースを有効活用することができます。
- 延床面積
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128.9㎡(39坪)
- 設計・施工
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アイワホーム
延床面積40坪以上の平屋住宅
夫婦と子供3人で暮らす、一見平屋には見えない立体感のある外観が特徴的な平屋です。内装は白を基調とした高級感のある仕上がりで、吹き抜けと大きな窓で開放感と明るさも抜群な光溢れる住まいになっています。
採光はバッチリの吹き抜け5連窓
リビングは柱がなく、南面の大きな窓と吹き抜けの5連窓から採光できるため隅々まで自然光が行き届きます。昼間は照明がいらないほど明るく開放的です。
家事がしやすく生活感のない家
室内は主に白を基調とした高級感ある内装で、家事がしやすいよう動線が考えられていながら生活感を感じさせません。
二方向から通り抜けられる洗面室
洗面室はリビング側と玄関ホール側の両方向から通り抜けられるレイアウトで、忙しい時でもスムーズに移動ができるよう配慮しています。
- 延床面積
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46.35坪
- 設計・施工
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グリーンハウザー
夫婦と子供1人で暮らす、光と風を取り込んだ開放的な中庭がある平屋です。外観からは存在すること自体がわからない中庭では、家族だけのプライベートな時間を楽しむことができます。
2台置き出来るインナーガレージ
車を風雨や盗難から守ることができるインナーガレージは、2台分駐車できる広々仕様です。ガレージとパントリーは半地下でつながっており、買い物後は荷物をスムーズに移動できるようになっています。
統一感のあるデザイン性
落ち着いた木目調のデザインで統一された室内は、間接照明の明かりがおしゃれさを引き立てています。
四方を囲んだ中庭
四方を囲まれ外からは存在がわからない中庭は、家族だけの完全なプライベート空間です。人目を気にすることなく、昼夜問わず屋外の空気を楽しむことができます。
- 建築費(本体価格)
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3,000万円以上
- 延床面積
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174.93㎡(52.91坪)
- 設計・施工
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thinks 翼創建
住みやすい平屋の間取り作りを成功させるための5つのポイント
平屋には2階建てや3階建ての住宅とは違った特徴があるため、間取りを考える時にはいくつかの重要なポイントを押さえておく必要があります。以下で、平屋の間取りを成功させるためのポイントを5つ紹介します。
具体的な生活を想像して動線を考える
平屋はすべての機能が一階層に集約されているため、動線が非常に重要になります。普段の自分たちの日常生活を具体的に想像し、どの部屋をどう接続するかをしっかりと考える必要があります。
天井を高くして採光・通風を確保する
平屋の天井を2階建てや3階建てと同じ感覚で低く作ってしまうと、採光や通風に不満が生じる可能性が高いです。天井を高めにしたり窓を大きくしたりして、光と風をなるべく取り込むようにしましょう。
プライバシーを確保できるようにする
個室とLDKやトイレ・洗面室などを直に隣接させると、家族間でのプライバシーの確保が課題になります。間取りを工夫したり、家具の配置を工夫したりして、プライバシーが保たれるよう気を配りましょう。
収納を多めに作る
平屋を2階建てや3階建てのような感覚で建ててしまうと、収納が不足して困ってしまうことが多々あります。平屋ならではの縦空間の高さを活用したり、造作収納を取り入れたりして、収納を多めに確保しましょう。
自分たちの生活様式に合った間取りにする
家族構成や生活様式によって、必要な間取りは変わってきます。小さな子供がいる場合と高齢者がいる場合でそれぞれ暮らしやすい家の形は違いますから、自分たちの生活様式を考慮して間取りを決めましょう。
住みやすい平屋の間取り作りを成功させるためには、これらのポイントをしっかりと押さえ、建築会社の担当者と緊密なコミュニケーションを取りながら計画を進めることが大切です。
間取りを考える時は、漠然としたイメージだけでなくインターネットの検索やカタログなどの写真を集めてまとめておくと依頼を予定している建築会社に相談する時に意図が伝わりやすくなります。
また、取り入れたい設備や間取りがある場合はなぜそれを取り入れたいと思ったのかを一緒に伝えると良いでしょう。取り入れたいと思ったものが予算や素材の関係で不可能であるとき、代替案を提案してもらいやすくなります。
住みやすい平屋を作るための目的別おすすめアイデア
自分たちの生活様式に合った平屋を建てたいという希望があっても、どんな設備や部屋を用意すれば住みやすい平屋になるのかわからず悩んでいる人も多いのではないでしょうか。
以下で、住みやすい平屋を作るためのおすすめのアイデアを①限られた空間をなるべく広く使いたい②子供を安心して育てたい③老後のことも考えておきたいという3つの目的別に紹介します。
限られた空間をなるべく広く使いたい人におすすめのアイデア
ロフト・小屋裏収納
ロフトや小屋裏収納は、どちらも家の中の縦方向の空き空間を収納として活用するための設備です。ロフトは部屋の天井を高くして部屋の一部を二層式にする収納、小屋裏収納は屋根と天井の間の空間を活用する収納になります。建築基準法と各自治体の法令によって細かく規定がありますが、基本的にロフトと小屋裏収納はともに「小屋裏物置」という扱いです。
ロフトや小屋裏収納の最大のメリットは、法廷床面積に算入されないため固定資産税の計算の対象外になるという点です。同じ面積を同階層上に設置すると広い土地が必要なうえに固定資産税が増えてしまいますが、ロフトや小屋裏収納にすれば土地が広くなくても大きな空間を収納として活用でき固定資産税も増えません。
ただし居住用途は認められておらず、床面積が設置階の1/2未満・高さ1.4m以下・固定階段の設置不可(一部自治体では可能)など様々な制限があります。
設計時には上り下りの安全性・構造(小屋組みのつくりが変わるケースがあります)・断熱・換気への配慮など様々な点に注意が必要ですが、土地を広げずに広い空間を確保できる点で魅力的なアイデアです。
子供を安心して育てたい人におすすめのアイデア
キッズスペース
キッズスペースは、小さい子供が日中遊ぶことができる空間です。リビングやキッチンから見渡せるよう設計されているため、親は家事をしながら子供の様子を気にかけることができます。子供部屋とは異なり、仕切りがなく目が届くようになっていることが特徴的です。
設置する時は1つの階層に複数の高さの床面が設けられたスキップフロアの下の空間などを上手く活用すると、子供が成長して遊び場として使わなくなった後も収納として再利用することができます。
子供の安全面を考えた、安心できる設計です。また、子供の成長に合わせて空間の用途を変更できるのは、大きなメリットだと言えます。
ファミリースペース
ファミリースペースは、家族全員が共有して勉強したり作業したりする多目的空間です。机や椅子・本棚などを設置し書斎・家事室・子供の勉強場所などの機能を担います。個室を多数確保するのが難しい場合に有用な空間で、場所を共有することで自然と会話が生まれやすくなるというメリットもあります。
限られた面積を有効活用できるので、平屋にぴったりの設備です。家族のコミュニケーションと絆を深める役割も期待できます。
老後のことも考えておきたい人におすすめのアイデア
スロープ
玄関スロープは、玄関入り口の段差を解消するために設置される傾斜のある通路です。子供や高齢者、車いす利用者や体の不自由な人などが安全に出入りできるよう配慮されており、転倒の危険性を軽減して怪我を防ぐ役割を果たします。
あらゆる世代にとって非常に有用な設備ですが、勾配がきついとかえって足腰に負担がかかってしまったり、幅が狭いと車椅子が通れなかったりする可能性がありますので、設置する時には専門家とよく相談しましょう。
車いす対応トイレ
車椅子に対応したトイレは、段差がなく車椅子の回転スペースが確保され、扉は引き戸や自動ドアとなっているのが一般的です。さらに手すりや洗面台の高さにも配慮することで、より利用しやすい空間になります。現在車椅子が必要ない場合でも、将来に備えてこうしたトイレを設置する家庭も珍しくありません。
設置する場合は、専門家や実際の車椅子利用者の意見を参考にすべきです。十分な広さや適切な手すり位置など、利用者視点に立った設計が不可欠となります。
一級建築士に聞く、住みやすい平屋を実現するためのポイントQ&A
本記事では平屋の間取りの基本的な特徴や実際の成功例を紹介しましたが、具体的に考え始めるとより細かく気になるポイントが出てくる人も多いでしょう。
そのような疑問を解消するため、以下で住みやすい平屋を実現するにあたって気になる具体的なポイントを、一級建築士の監修のもとQ&A形式で解説します。
建築会社を決める時の注意点
建築会社によって得意分野が異なり、平屋が得意な会社と2階建てや3階建てが得意な会社があります。依頼を検討する時は過去の実績を確認し、平屋が得意な会社かどうか調べてから依頼すると良いでしょう。
特徴を把握して、子育ても老後も安心でおしゃれな平屋間取り図を考えよう
平屋は高齢者や体が不自由な人にとって生活しやすいだけでなく、家事や子育てなどの日常生活でも動線が短く効率的です。また自由度が髙い設計が可能で、外観もおしゃれにこだわることができます。このようなことから、近年平屋の需要が高まっています。
しかし、平屋と2階建て・3階建ての家では設計時に注意するべき点が異なります。平屋の特徴をしっかりと把握することが、おしゃれで住みやすい平屋間取り図を作ることへの第一歩です。
また、他の人の建築実例を参考にすることは有用ですが、自分たちの場合に当てはめて同じような結果が望めるかどうかは常に検討が必要です。様々な観点から総合的に判断し、無理のない間取りを実現できるよう心がけましょう。
IECOCORO編集部
群馬・栃木・宮城・山形で注文住宅の情報誌「IECOCORO(イエココロ)」を発行する編集部。WEBサイト「自慢の注文住宅集めました。」では、地域の工務店情報のほか、多数の建築実例とイベント情報を紹介しています。
イエココロのWEBサイト「自慢の注文住宅集めました。」では、群馬・栃木・宮城・山形を中心とした工務店情報やモデルハウス情報のほか、多数の「建築実例」を紹介しています。お近くにお住まいの方は、ぜひチェックしてください。