【注文住宅】家を建てるにはまず何から始める?初心者向け決めることリスト

注文住宅、家を建てるにはまず何から始める?初心者向け決めることリスト

転勤・転職や結婚・出産など、環境の変化やライフイベントの節目に直面して、自分の家を建てたいと考える人も多いのではないでしょうか。しかし漠然と家を建てたいと考えても、初めてのことでは何から始めたら良いのかわかりませんよね。

本記事では、注文住宅を建てる時の基本的な流れから注文住宅を建てる時に各段階で決めておきたいこと家づくりで陥りがちな失敗例と対策を併せて紹介します。

さらに、各段階で決めておきたいことについては初心者向けの決めることリストを掲載しているため、チェックポイントを埋めていくだけで要点を押さえることが可能です。

家づくりは人生の大きなイベントであり、慎重な計画と準備が必要です。本記事を参考に、注文住宅を建築する時の全体像を把握し、どのように進めるべきかの具体的なイメージを持って家づくりに取り掛かりましょう。

この記事の監修者

監修者 高橋 良彰
一級建築士事務所 高橋良彰建築研究所 / 一級建築士
建築を学び始めた武蔵野美術大学時代から設計事務所スタッフやハウスビルダー勤務、また、「住まいの学校『住学』すがく」等これまで様々なかたちで建築に関わってきました。
この仕事の一番の魅力は“人との出会い”だと思っています。
「快適な省エネ住宅をローコストに供給する」を信条とする新住協会員。
住まい手の要望や想いを反映させた住まいづくりをモットーとしています。

目次

家を建てたいと思ったらすること

家を建てたいと思ったらすること

注文住宅の建築では、基本的な流れを把握しておくことが重要

注文住宅は、自分の希望に合わせて一から家を建てます。基本的な設計から素材や設備に至るまで自由に選ぶことができるため、自分の理想の家を実現できますが、その自由度の高さゆえに決めることが多く、計画的に進めることが求められます。

注文住宅を建てたいと考えたら、まず全体の流れを把握することが非常に重要です。建築計画の中で何をいつするべきかを把握しておけば、進行がスムーズになり、もし予想していないことが起きたとしても落ち着いて対応することができます。

土地をあらかじめ持っている場合や住宅ローンの組み方によって多少変化はありますが、基本的に注文住宅を建てる時の大まかな流れは以下の通りです。

STEP

予算計画・希望整理

予算計画を立てる

注文住宅にどれくらいの費用をかけられるのか、住宅ローンでどのくらいの金額が借りられるのかを把握して予算を決め、資金計画を立てます。

注文住宅への希望を整理する

家族で意見を出し合ったり、本や雑誌・インターネットで情報を調べたりして注文住宅に対する希望を整理し、注文住宅に何を求めているかを具体的に考えます。

STEP

建築会社・土地の選定

土地を探す

理想の家を建てられる土地を探します。不動産仲介会社に依頼するのが一般的な手段ですが、先に建築会社を決めてからその会社に相談して土地を探してもらう方法もあります。

建築会社を探す

理想の家を一緒に建てる建築会社を探します。資料請求やインターネットでの情報収集を通じて目星をつけてから、総合住宅展示場や現地見学会に足を運んでみましょう。あらかじめ依頼したい会社が決まっていても、2~3社は見学してみると参考になります。

STEP

土地の購入・建築計画の仮決定

建築会社の担当者との打ち合わせ・建築計画の仮決定

建築会社の担当者と打ち合わせをし、建築計画を仮決定します。トラブルを防ぐためにも、間取りや設備の希望を一覧にして円滑な話し合いを進める準備をしましょう。

建築会社からの見積もりの提示

建築会社から、仮決定した建築計画に基づいた見積もりを出してもらいます。見積もりは決まった形式があるわけではなく建築会社によって書式が異なるため、含まれる費用の内訳をしっかりと確認しましょう。

土地の購入(土地のローン審査・契約)

選定した土地に建てたい住宅が建てられるか確認できたら、土地を正式に購入します。土地も含めて住宅ローンを組む場合は、この時にローン審査を申し込みます

STEP

工事請負契約

建築計画の内容や見積もりから依頼する建築会社が決まったら、工事請負契約を締結します。

後々の追加費用を避けるためにも、希望する仕様や設備が契約に含まれていることを必ず確認しましょう。会社によっては、工事請負契約を結んだ時点で手付金(申込金)として建築費の最大10%の支払いがありますので、支払いのスケジュールについてもチェックが必要です。

STEP

建築計画の本決定

建築計画の本決定

工事請負契約を結んだら、打ち合わせを進めて建築計画の詳細を確定させ本決定します。合わせて簡易的な地盤調査を行い、必要であれば地盤改良工事の見積もりを取得しましょう。

建築確認申請

計画した住宅が法令に適合しているかを確認する「建築確認」を市区町村に申請します。住宅工事を始める前には必ず行わなければならない手続きです。

建物のローン審査・契約

土地のローンは組まない場合、建築計画が本決定した段階で建物に対する住宅ローンの申し込みを進めます。金融機関を選んで仮審査を受け、建築確認が承認されたら本審査に進んで正式な契約を結びましょう。

STEP

着工

建築確認申請が承認されたら、新築工事の着工が行われます。着工前には安全祈願として地鎮祭、骨組み完成後には棟上げが無事に終わったことへの感謝と工事が最後まで安全であることを祈念する上棟式があります。

工事中は、建築現場に足を運んで進捗状況を確認することもできます。ただし、工事の進行に影響を及ぼさないように注意して行動しましょう。

STEP

竣工・引き渡し

建物が完成(竣工)したら、建築確認申請に基づいて建物が適切に建てられているか検査する「完了検査」を受け、検査済証を発行してもらいます。

建物の引き渡し前には、施主が立ち会って最終的なチェックが行われ、設備の不具合や傷などがないかを確認します。最終的な修正や調整が行われたら正式に引き渡しとなり、建物の所有権が施主に移って入居できる状態になります。

予算計画・希望整理の段階で理想の家を具体的にイメージする

注文住宅の建築計画の流れは上記の通りですが、①予算計画・希望整理の段階できっちりと自分たちの要望を整理して把握しておくことが満足度の高い家づくりをするために非常に重要です。

予算の計画をしっかり立てておけば、資金面で無理なこと・可能なことがわかりやすくなります。注文住宅に求める希望がはっきりしていれば、間取りや設備選びに基準ができ、決定がしやすくなるでしょう。

このように予算計画・希望整理の段階でしっかりと要望を固めておくことで、後々の様々な決断の方針がはっきりし、建築計画の進行がスムーズになります。

ノートやチェックリストを活用して自分たちだけの家づくりのまとめを作る

予算計画・希望整理の段階でしっかりと要望を固めておくといっても、具体的にどうすれば良いのかわからない人も多いのではないでしょうか。一般的に注文住宅への要望を固めるには、調べたことや相談したことをまとめたノートを作ることが推奨されています。

形式は自分たちの扱いやすい物で構いませんから、ノートに手書きしたりパソコンやスマートフォンのアプリに打ち込んだりして家づくりのまとめノートを作りましょう。注文住宅に求める希望がわかりやすくなり、後で迷った時に見返したり、建築会社の担当に要望を伝えたりする時に役に立ちます。文章だけでなく写真なども併せて用意できると、イメージの共有がしやすいでしょう。

ノートを埋める時には、注文住宅の建築において決めておくべきことをチェックリストなどで一覧にしておくと、自分たちが何を決めるべきで何が決まっていないのかわかりやすくなります。注文住宅で決定しなればならないことはたくさんありますが、一つ一つ埋めていくことで、着実に理想の住宅の実現に近づくことができるでしょう。

計画する前に確認しておきたいこと

本当に注文住宅が最適な選択なのか

最終的な目標が自分たちの家を持ちたいという所にある場合、注文住宅ではなく建売・分譲住宅を買うという方法もありますし、一戸建てにこだわらなければマンションを購入するという選択肢もあります。何故注文住宅が良いのか、他の選択肢とかかる時間・労力・費用などを十分比較検討してから計画を立てましょう。

現在の住宅で不満な点をはっきりさせる

新しい家への住み替えを検討する場合、多くの人は現在住んでいる住宅に何かしらの不満があるのではないでしょうか。せっかく自由度が高い注文住宅を建てるのですから、以前からある不満は解消しておきたい所です。

現在の家に住んでいてここが使いにくいな、もっとこうだったらいいなという部分を書き出しておき、建築計画を立てる時に活用しましょう。

高橋 良彰

注文住宅の建築において、ご自分たちの理想の家づくりを行うためには、予算や要望の整理・明確化を早い段階で行うことが大切です。

早めに行うことで、ご自分たちの考えに近い建築会社を見つけることが容易になり、理想の家づくりへより近づくことができます。

建築会社さんによっては、ヒアリングシートを用意されているケースもあります。

注文住宅の決めることリスト:予算編

予算を決める時のチェックリスト

注文住宅の建築計画を立てる時は、まず最初に予算を設定する必要があります。

注文住宅にどのくらいの費用をかけるのか、その中のどの程度の割合が貯金で賄えるのか、足りない分はどのくらい住宅ローンを借りて補うのかを具体的に考えてみましょう。

予算を決める時のチェックリスト

注文住宅にかける予算は、貯金から将来のための資金を引いた金額と住宅ローンで借りる金額を合わせたものになります。

貯金を全て使ってしまうと子供の教育資金や急な病気や怪我のための備え、老後の資金などが不足して困ってしまう可能性がありますから、よく考えて資金計画を立てましょう。

土地がない場合、家を建てるための土地を購入する必要があります。一般的に、建物と土地の資金割合は6:4~7:3程度が良いと言われています。

注文住宅にかかる金額で見逃しがちなのが、様々な手続きにかかる諸費用です。諸費用はケースによって異なりますが、おおよそ建物にかかる費用の5~10%が目安と考えると良いでしょう。

基本的に現金で支払う必要があるため、いつどれくらいの金額を支払うのか把握しておくのが大切です。

住宅ローンは様々な種類があり、それぞれ契約に対して設定している条件も違います。

住宅ローンを提供している金融機関はホームページで年齢や年収などの基本的な情報を入力すると概算の金額を出してくれるシミュ―レーターを設置しているところも多いので、実際に試してみて感覚を掴みましょう。

金融機関のシミュレーションで住宅ローンで借りられる金額の見当が付いても、借りられる金額の上限まで借りるのは得策とは言えません。

年収に対する1年間の返済額の割合である「返済負担率」を考慮し、無理のない範囲で返済できるよう計画を立てましょう。返済負担率は、(住宅ローンで借りる金額の合計金額÷返済期間)÷年収×100で算出します。

一般的に無理なく返せる返済負担率は25%以下と言われており、国土交通省の令和5年度住宅市場動向調査では返済負担率の全国平均は19.4%となっています。

高橋 良彰

全体予算の大部分を占めるのが、土地と建物です。

理想の立地を求めて土地代に重きを置くか、理想の建物を求めて建物代に重きを置くか考える必要があります。

もともと土地をお持ちの場合以外では、土地を決めた時点で建物にかけられる予算がほぼ決まってくることを念頭に置きながら、土地探しを進めましょう。

予算の簡易計算表

費用項目 必要総額 自己資金 住宅ローン借入
建物建築費用
土地購入費用
諸費用
合計金額
年収
返済期間
返済負担率

上記の表は、注文住宅を建てるのに必要な金額と貯金から出す自己資金を選択肢から選ぶと、足りない分の金額(住宅ローンで借りる金額)が表示されます。さらに年収と返済期間を選ぶと返済負担率も表示されますので参考にしてください。

紙のチェックリストの方が活用しやすい方のためにダウンロード用のPDFも用意しましたので、印刷してご使用ください。A4用紙1枚のサイズです。

注文住宅の決めることリスト:間取り編

注文住宅の間取りを考える時には、家族の希望を反映した要素の他に、採光や通風、プライバシーの確保なども考えることが必要です。また、現在の家族構成や生活スタイルに加えて、将来的な家族構成の変化や加齢による身体機能の変化も考慮に入れると長く快適な暮らしにつながります。

理想的な間取りを実現するために、広い視野を持って自分たちに最適な間取りを考えましょう。

家全体に関するチェックリスト

注文住宅を作るにあたって明確なコンセプトがあると、建築会社にイメージを共有しやすくなったり、後から複数の選択肢で迷った時の指針になったりと、建築計画が円滑に進みやすくなります。

「家族がリビングで集まって団らんしやすい家」「生活感を感じさせないお洒落な家」「週末には友達が集まってホームパーティができる家」など設定しておき、それを叶えるためには何が必要かを考えていくと理想の家づくりがしやすくなるでしょう。

「和風」「洋風」「北欧風」など、方向性が具体的に決まっていると素材や設備の選定もスムーズに進行します。そこまで具体的な方向性のイメージがなかったとしても、外壁の色は何色が良い・屋根の形は片流れが良いなど断片的にでも決まっているとそれに合わせてデザインを詰めていくことができます。

また、カタログやインターネットの検索などで気に入った写真を参考写真として保存しておくとイメージの共有がしやすくなるでしょう。

動線は、日常生活において建物内を人が移動する経路を線で表したものです。朝起きてから出かけるまで、食材の買い出しをして料理をするまで、洗濯物を洗って干して収納するまでなど、動線がきれいに通っているかどうかは快適な生活を送る上で非常に重要です。

しかし、生活上の全ての動線をきれいに通すことは難しいです。どの動線を最優先するかを決めて、その他についてはある程度の所で妥協しましょう。

必要な収納の量は人によって異なりますが、一般的に一戸建てでは収納は延べ床面積に対して10~15%前後あると良いと言われています。

現在の自分や家族の持ち物の量、今後増えそうな物の量を想像し、大きさや場所による利便性などを検討しましょう。

家の向きや部屋の配置を決める時、各方角の日当たりの特性をよく考える必要があります。

太陽は東から登って南寄りの軌道を描き西に沈みます。そのため、午前中は東向き、午後は西向きの日当たりが最もよくなり、南向きは日が出ている間はずっと光が当たります。一方、北向きは日が出ている時間帯でも常に光が当たりません。

それぞれの部屋の用途に合わせて最適な方角を選ぶことが、一年を通じて快適な住環境を実現する鍵になります。

効果的な扉・窓の配置や換気扇の設置ができていないと風通しの悪い家になり、湿気やにおいがこもったり洗濯物が乾きにくくなったりします。

しかし窓の設置は風通しだけを考えれば良い訳ではなく、防犯面での安全性やプライバシーへの配慮、家具の配置や耐震性の確保も意識する必要があります。どこにどんな種類の窓をいくつ設置するか慎重に考えましょう。

間取りを考える時には、外からの視線が気にならないような工夫が必要です。隣家や通りからの視線を遮るために、窓の配置や大きさ、外構の設置で外からの見え方を制御しましょう。

防犯面では、完全に塀で覆われ道路から死角になってしまうと塀の中に侵入されたときに逆に危険ですから、適度に隙間が空いた外構の設置がおすすめです。

快適な住まいづくりには、音の伝わり方への配慮が欠かせません。線路や交通量の多い道路に面している場合は、外部からの騒音対策として寝室を奥に配置するなどの工夫が効果的です。

また、家の中の生活音の伝わり方も考える必要があります。例えば、リビング近くにトイレを設置したり、寝室の真上に水回りがあったりすると排水音が気になる可能性が高くなりますから、配置に気を配りましょう。

高齢になったら建て替えや住み替えを行うとあらかじめ決めている場合を除いて、急角度の階段や狭い通路は避けた方が無難です。玄関へのスロープの設置や階段・廊下に手すりを設置することも検討しましょう。

バリアフリーに対応した設備には自治体から補助金が出ている場合もありますから、家を建てる地域の自治体が発信している情報はこまめにチェックしておくと、通常より安く設備を導入できるかもしれません。

2階建てや3階建ての家では、現在は必要なくても後でホームエレベーターを設置しやすいようスペースを確保しておくという考え方もあります。

高橋 良彰

収納計画で重要なことは、今現在の暮らしでどの程度の量のものがどこに収納されているかを見直すことだと思います。

新居を建築する場合「より収納量を多くしたい」と考えがちですが、一言で収納といっても、キッチン回り・サニタリー回り・寝室近く・子供のおもちゃなど、内容によってどこに収納されていると便利かは異なってきます。より具体的に考えて検討してみましょう。

LDK(リビング・ダイニング・キッチン)に関するチェックリスト

最近ではリビング・ダイニング・キッチンは全てが一体になった「LDK」が人気です。LDKはそれぞれの場所の間に壁がないため部屋を広く見せることができ、コミュニケーションも取りやすい間取りです。しかし、各場所を独立させる間取りにも利点はありますから、特徴をよく考えて検討しましょう。

特に来客が多い家庭では、キッチン・ダイニングとリビングは切り離しておくと上手に生活空間を隠すことが可能になります。

リビングやダイニングにはテーブルや椅子、ソファーやテレビなどの家具を設置します。部屋の広さを決める時は、これらの家具を設置した状態を具体的に想像して、窮屈にならず快適に過ごすことができるか十分に検討しましょう。

リビングは家族がくつろぐことが多い場所であり、プライバシーの確保が重要です。玄関からリビングまで一直線になっている場合、扉を設けたり廊下に曲がり角を作ったりするなどの工夫をしないと、来客からリビングの様子が丸見えになってしまいます。

キッチンではいろいろな家電を一か所で扱うため、適切な配線計画が重要で、コンセントの位置や数も慎重に検討する必要があります。特に、消費電力が大きい機器を使用する時にブレーカーが落ちることがないよう気をつけましょう。

キッチンでは、各種家電やゴミ箱のための十分な場所を確保する必要があります。また、食品や調理器具、食器などの小物を保管する収納場所も必要です。

キッチン自体にあまり物を置いておきたくない場合、パントリー(食品庫)として隣接する小部屋を用意し、食品やこまごまとした調理器具などを保管しておくという方法もあります。

キッチンで扱う家電は後から比較的手軽に買い替えることができますが、キッチン本体は一度導入すると何年も同じものを使用することになり、交換するとなると工事が必要で多額の費用が掛かります。できれば最初から不満のないキッチンを選んでおきたいところです。

しかし、キッチンには多くの種類があり、値段や性能も様々です。コンロ台とシンクが分かれたセパレートキッチンと一体型のシステムキッチン、コミュニケーションの取りやすい対面型と作業に集中できて場所を取らない非対面型、I型とL型など形だけでも選択肢がたくさんあります。

さらにコンロの数やシンクの形、収納の数でも違いがありますし、機能面では食器洗い乾燥機が内蔵されているものもあります。色やデザインも豊富にあるため、なんとなくで選ぼうとすると選択肢が多すぎて困ってしまう人も多いでしょう。

キッチン選びはLDKの配置にもつながる大事なポイントですから、日常的なキッチンの使用方法から連想して、どのようなキッチンが自分たちに向いているか考えをまとめておきましょう。

水回りに関するチェックリスト

浴室や洗面・脱衣室、トイレは玄関や外部からの視線が届かない位置にあることが望ましいです。他の部屋との位置取りや利便性にも気を配りながら、プライバシーを最大限に確保できる場所に設置しましょう。

水回りの設備はできる限り集約することで工事費用の削減が期待でき、メンテナンスも楽になります。生活の利便性や動線なども考慮しつつ、適切な位置関係を検討しましょう。

水回りの設備は、湿気によるカビの発生に注意する必要があります。換気窓を設置して風通しを良くすることが対策になりますが、大きい窓は防犯面が心配になりますから適切なサイズ、構造のものを選ぶようにしましょう。

トイレが複数あると、家族の利用時間が重複することを避けられたり、夜間に視界が悪い中トイレのために他の階に移動しなくてよくなったりします。一方で、建築費用は個数の分上がりますし、掃除の手間も増えるでしょう。家族構成や生活動線を十分に検討した上で決める必要があります。

浴室は浴槽や床、シャワーや換気扇などについて様々な選択肢があり、性能や値段の幅も広くなっています。機能や素材を追求するとどんどん高額になっていくので、浴室にかける予算を最初にある程度決めておいたほうが良いでしょう。

家族の人数にもよりますが、洗面台が一つしかないと通勤・通学の時間が重なっている場合順番待ちの時間が発生してしまい不便かもしれません。1階だけでなく2階にも洗面台を設置したり、メインの洗面台に洗面ボウルを2つ用意したりするなど、日常の生活を思い浮かべながら設置する数を検討しましょう。

居室に関するチェックリスト

居室に関するチェックリスト

居室の数や広さは、現在の家族構成だけでなく将来的な変化も含めて考える必要があります。

特に子供部屋については、子供が増える計画があるならその分部屋を増やすか、間仕切りで仕切ることができる大き目の部屋を用意する必要があるかもしれません。また、ある程度大きな年齢の子供がいるなら、家を建てて間もなく独立して部屋が空くかもしれませんので、客室や収納など別の用途の部屋に転用しやすい作りにしておくと空間を有効に活用することができます。

居室の収納量については、実際に使う人とその人の生活動線を十分に考慮する必要があります。洋服や私物、季節物の収納が不足していると、部屋が散らかりがちになり居心地が悪くなるでしょう。一方で、収納が過剰だと生活動線を阻害したり、無駄な空間が生じたりする可能性があります。

適切な収納量を見極めるため、実際に部屋を使う人の生活習慣や家具の配置、部屋の広さなどを総合的に検討することが重要です。

空調設備やコンセント、照明のスイッチの位置などは居室の使い勝手に直結しますが、後から変更するには余計な手間と費用が掛かってしまう部分ですので、最初に入念な計画を立てておきたいところです。実際のその居室の使用目的に合った家具の配置や使い方をよく考えて設備を配置しましょう。

玄関に関するチェックリスト

玄関に関するチェックリストと外構・その他に関するチェックリスト

玄関は家の中と外をつなぐ通路であり、来客が家の中で一番最初に目にする場所でもあります。頻繁に使用する上に人目に付きやすいところですからきれいに保っておきたい場所ですが、収納の量が不足していると物が溢れて通行の邪魔になるだけでなく、来客があったときにも慌てて片付けなければいけなくなってしまいます。

靴やアウトドア用品を多く所持している場合には、シューズクロークや土間収納といった設備も検討しましょう。

玄関にコンセントが無いと、掃除機をかけたり照明を設置したりできません。しかし玄関は通路ですから、コンセントの設置場所や数によっては使い勝手が悪くなる可能性があります。

電源コードが通路を横切ることになったりコンセントの数が足りずに「たこ足配線」をせざるを得なくなったりすることがないよう、コンセントの位置や数には注意しましょう。

外構・その他に関するチェックリスト

車やバイクを持っている場合は、庭に十分な駐車スペースが確保できているかという点にも注意が必要です。

通勤・通学や買い物などで日常的に使用する場合は、車を止めた後にスムーズに建物内へと移動できる動線にしておくと便利でしょう。また、防犯面での安心感や悪天候でも濡れずに室内に入れるという点から、車庫が室内とつながっている「インナーガレージ」や「ビルトインガレージ」と呼ばれる形式も人気があります。

外構で見落としがちなのが、コンセントと水栓です。屋外で車の洗浄や庭の芝刈りを行ったりする場合、電源と水栓は必要不可欠です。外に照明や防犯カメラを設置する場合も、コンセントから電気を供給する必要があります。

外でどのような作業をするのか、作業頻度はどの程度かなどを考慮して、コンセントや水栓の場所を決定しましょう。

高橋 良彰

注文住宅の間取りを考える時は、法律的な制限や隣地の状況、日照条件や風通し、気候や眺望などの周辺環境の調査から始め、建主さんのご要望を考慮してプランニングを進めていきます。

打ち合わせの際は建築会社の方から道筋を立てて要望を伺い、様々な事柄を決めていくことになるでしょう。打ち合わせの進め方は会社や担当者、プランによって異なりますから、「この2つから選んでください」と言われるケースもあれば、「どんなものがお好きですか?」と質問されるケースもあるかもしれません。

慣れていなければ、質問されてすぐに答えることは簡単ではないでしょう。しかし、事前にご要望を整理されていれば、打ち合わせがスムーズに進みます。

間取りチェックリスト簡易まとめ表

上記で紹介した内容を簡単にまとめたチェックリストが以下になります。間取り決めは考えなければならないことが多くありますが、一つ一つ確認して理想の家を実現できる最適な間取りを考えてみましょう。

間取りチェックリスト
①家全体に関するチェックリスト
明確なコンセプトがあるか
家の外観デザインや内装は具体的なイメージがあるか
最優先の動線が決まっているか
収納の場所や量は決まっているか
家の向きや部屋の配置は日当たりを考えているか
扉や窓の配置は風通しを考えているか
外からの視線を遮る工夫はあるか
音の伝わり方への配慮があるか
高齢になっても住みやすい作りになっているか
②LDKに関するチェックリスト
自分の生活に適したリビング・ダイニング・キッチンの配置を考えているか
家具を置いて窮屈にならない広さを確保できているか
リビングに玄関からの視線を遮る工夫はあるか
キッチン家電の配線計画は立てられているか
キッチンの収納は十分な量を確保できているか
キッチンに対する希望とかけられる予算は決まっているか
③水回りに関するチェックリスト
浴室や洗面・脱衣室、トイレは玄関や外部からの視線が届かない位置にあるか
水回りを集約することを検討したか
換気窓の大きさや構造は防犯面を考慮しているか
家族構成に合わせたトイレの個数を検討したか
浴室への希望やかけられる予算は決まっているか
家族構成に合わせた洗面台の数を検討したか
④居室に関するチェックリスト
居室の数やそれぞれの広さが、現在の家族の人数や将来設計に合っているか
各居室の収納の量は十分か
空調設備やコンセント、照明のスイッチの配置は実際の使い勝手を考えたか
⑤玄関に関するチェックリスト
収納は十分確保されているか
コンセントの位置と数に不足はないか
⑥外構・その他に関するチェックリスト
駐車スペースは十分確保できているか
コンセントや水栓の必要性を確認したか

紙のチェックリストの方が活用しやすい方のためにダウンロード用のPDFも用意しましたので、印刷してご使用ください。A4用紙1枚のサイズです。

注文住宅の決めることリスト:土地編

注文住宅を建てる土地を選ぶ時には、立地や形、価格以外にも様々な要素に注意する必要があります。土地によって建物の形や大きさ、向きも左右されてしまいますから、細かいところまで気を配ってチェックするようにしましょう。

土地の基本情報チェックリスト

土地の基本情報チェックリスト

土地の形によって、建物の形が限定されたり建てるのに工夫が必要になったりします。正方形や長方形の整形地なら心配ありませんが、それ以外の不整形地や狭小地は注意が必要です。

地目は土地の用途による区分で、住宅を建築できる地目は「宅地」「山林」「原野」「雑種地」「田」「畑」の6つです。ただし、このうちの田・畑については建てる前に宅地に地目を変更する必要があります。

農地は農業を保護するための農地法で保護されているため、勝手に農業以外の用途で使用してはいけません。農業以外の目的で使用したい場合は申請手続きを行う必要があり、一定の期間と提出に必要な書類を揃えるための手数料がかかります。

なお、農地転用が許可されても勝手に地目が変更されるわけではないため、家を建てる場合は別途地目変更登記をする必要があります。

用途地域は都市計画法により「市街化区域」「非線引き区域」「準都市計画区域」に定められたルールで、建築できる建物の種類や用途を制限しています。

例えば「第一種低層住居専用地域」では、建てられる建物の高さが10m(もしくは12m)に制限されており、商業施設も店舗兼住宅や事務所兼住宅で営業しているような小規模の物しか建てることができません。

建てる家の形だけでなく近隣施設の傾向にも関わってきますので、用途地域は必ず確認するようにしましょう。

建ぺい率は、土地の面積に対する建物を建てて良い面積の割合です。100坪の土地の建ぺい率が50%だった場合、建物を建てて良い部分は50坪分になります。

容積率は、土地の面積に対する建物の床面積の合計の割合です。100坪の土地の容積率が100%だった場合、建物の床面積の合計は100坪までになります。

建物を建てる前には地盤調査を行う必要があり、調査の結果地盤が弱ければ、地盤改良工事をしなければなりません。

地盤の強度によりますが、場合によっては多額の費用がかかります。

上物は土地の上にある建物です。上物の状態や種類は千差万別ですが、取り壊す場合は取り壊し費用がかかりますので、取り壊しの費用を買主と売主のどちらが持つのかは確認しておきましょう。

境界標は土地と土地の間の境界線を示すために現地に設置された標識です。土地の境界がはっきりしていないと、隣地とのトラブルが起きやすくなり、災害時の復旧作業などでも混乱が起きます。

境界標が元から存在していない、もしくは何らかの理由で紛失してしまっている場合でも、測量図があれば土地家屋調査士に依頼して新たに境界標を設置することができます。

境界標も測量図もない場合は一から測量する必要があり、これには多額の費用がかかります。

周辺環境のチェックリスト

土地の周辺環境チェックリスト

都道府県庁・市役所や病院などの公共施設や、スーパー・コンビニや薬局などの買い物施設が近くにあるかどうかは日常生活の利便性に大きく関わります

公共交通機関が利用しやすいかどうかは通勤・通学や旅行の利便性に大きく関わります。厳密な定義はありませんが一般的には徒歩5分以内なら近いといって良く、徒歩10分以内でも徒歩圏内として認識されることが多いでしょう。

騒音や異臭などは後から発覚するとトラブルの原因になりますから、必ず土地の購入前に現地に足を運んで確認しましょう。

国土交通省のハザードマップポータルサイト浸水ナビ、各自治体のホームページなどを確認して過去の浸水被害などについて調べておきましょう。土地の特性を知ることで災害時に取るべき対応も変わってきます。

道路には公道と私道の2種類があり、公道は国や自治体が所有し管理する道路、私道は個人や法人が所有し管理する道路です。土地に隣接している道路が公道であれば問題ありませんが、私道の場合、持分と所有形態を確認する必要があります。

接道している道路に持分がなかったり、接道部分は持分があっても奥まった土地でたどり着くまでに他人の私道を通る必要がある場合、ライフラインの引き込み工事を行うにあたって私道の持ち主の許可を得なければなりません。

セットバックは、土地を道路分後退させることです。現在建築基準法では、都市計画区域及び準都市計画区域内において、緊急車両の通行幅を確保するため原則として幅員4m以上の道路に2m以上接している土地でなければ建物を建てることができません。

しかし、建築基準法で基準が定められるより前に住宅が建築されていた土地では、この基準を満たしていないことがあります。その場合、建物を新しく建てる時に接している道路の幅員が4m以上になるように土地を後退させる必要があるのです。

セットバックを行った部分は公道という扱いになりますから建築物を建てることはできませんが、後退させた部分については固定資産税や都市計画税がかからなくなります。

ただし、市区町村が全てのセットバックの情報を把握しているわけではありませんので、セットバックを行った時は自治体に非課税の申告をするのを忘れないようにしましょう。

建物を建てる時、日照や風の通りを考えて玄関や居室を配置する方角を決めます。そのため、土地が道路とどの方角で接しているかは建物の間取りにも関わる重要な要素になります。

上下水道や電気・ガスなどのライフラインは人が生活するために必要不可欠ですが、農地を転用した土地などでは近くまで通っていないこともあります。引き込み工事を行う距離によって工事費用は変動しますので、どのくらいの料金がかかりそうか事前に確認しておきましょう。

高橋 良彰

土地の形状や地目、用途地域などは、建物の設計や住環境に大きな影響を与えるため、事前にしっかりと確認することが必要です。また、地盤の強度やライフラインの状況も見逃せません。

これらを適切に理解して土地選びを進めることが、理想の住まいを実現する第一歩になります。

土地のチェックリストまとめ表

上記で紹介した内容を簡単にまとめたチェックリストが以下になります。土地選びは確認しなければならないポイントが多いですが、住宅そのものの形や構造にも関わる重要な要素ですので慎重に検討しましょう。

土地選びチェックリスト
価格土地の面積
土地の形地目





農地転用地盤


用途地域











建ぺい率容積率












上物境界標・測量図


公共施設買い物施設






バス停




騒音・異臭過去の浸水被害


道路の種類セットバック


道路の方角ライフライン










紙のチェックリストの方が活用しやすい方のためにダウンロード用のPDFも用意しましたので、印刷してご使用ください。A4用紙1枚のサイズです。

注文住宅の決めることリスト:建築会社編

注文住宅の建築会社を選ぶ時には、自分たちの予算や希望する建築スタイルに対応できるかどうかを確認する必要があります。また、担当者とのコミュニケーションが円滑に取れるか、提案力や技術力が十分かどうかも吟味したほうが良いでしょう。

さらに、アフターサービスの内容や保証制度の充実度も重要な判断基準になります。これらの要素を総合的に評価し、自分たちの需要に最も適した建築会社を選ぶことが、理想の家づくりへの第一歩となります。

建築会社を選ぶ時のチェックリスト

建築会社を選ぶ時のチェックリスト

注文住宅の建築計画は何回も打ち合わせを行いますから、担当者との関係性は非常に重要です。同じ家を建てるのでも、信頼関係が築けている状態とそうではない状態では、満足度が違ってきます。

こちらの意図をくみ取ってくれるか、要望の実現が難しい場合に納得のいく代替案を出してくれるか、わからないところを質問したらきちんと答えてくれるかなど、担当者が信頼できる人物であるかを見極めましょう。

大手のハウスメーカーなどでは、正当な理由があれば担当者を替えてもらえる場合もあります。ただし、自分の方があまりにも無茶な要求をしていないかどうかもよく考えてから申し出るようにしましょう。

家を建てる土地の環境によって、寒さに強い方が良い・暑さに強い方が良いといった住宅に求める性能は変わってきます。その土地に合った性能の家が建てられるかどうかはしっかりと確認しておきましょう。

建築会社によって、平屋が得意、2階建てが得意など秀でている分野は違ってきます。建てたい家の方向性と建築会社が得意としている分野が一致しているかを確認するためにも、過去の施工事例はチェックしておきたいところです。

住宅展示場で展示されているモデルハウスは参考になりますが、一般的な住宅より広く作られていることが多いです。実際にその会社で建てた人の家の現地見学会などが開催されていれば、ぜひ参加して実物のイメージを掴みましょう。

安さを売りにしているような建築会社では、建てっぱなしでアフターサービスがほとんどないところもあります。新築の住宅は住宅の品質確保の促進等に関する法律により構造耐力上主要な部分や雨水の侵入を防止する部分については10年の保証が義務付けられていますが、それ以外の部分については会社の方針によるところが大きいです。

何を重視するかは人によって異なりますが、より長期の保証や定期点検など、どんなアフターサービスが受けられるかも確認しておきましょう。

高橋 良彰

建築会社選びは、予算や建築スタイルだけでなく、担当者との信頼関係が非常に重要です。担当者がこちらの要望をしっかり理解し、技術力と提案力を持って応えてくれるかを見極めることが、理想の住まいを実現する鍵になります。

また、アフターサービスや保証制度の内容も、長期的な安心感を得るために欠かせない要素です。これらの点を総合的に評価し、自分たちに最適な家づくりのパートナーを選びましょう。

建築会社チェックリスト簡易まとめ表

上記で紹介した内容を簡単にまとめたチェックリストが以下になります。建築会社はそれぞれ特徴があり、得意分野も違います。自分たちの需要に最も適した建築会社を選ぶことが理想の家づくりへの第一歩となりますから、比較検討を重ねて慎重に検討しましょう。

建築会社を選ぶ時のチェックリスト
担当者は信頼できるか
その土地の環境に適した家が建てられるか
建てたい家の方向性と建築会社が得意としている分野が一致しているか
アフターサービスは充実しているか

紙のチェックリストの方が活用しやすい方のためにダウンロード用のPDFも用意しましたので、印刷してご使用ください。A4用紙1枚のサイズです。

注文住宅の決めることリスト:契約編

注文住宅の建築契約は、建設業法で工事請負契約書を取り交わすことが定められています。工事請負契約書には工事の内容や建築部材の詳細、住宅性能の水準などが記載され、工事を依頼する施主側と工事を請け負う建築会社側がそれぞれ保管します。

工事請負契約書の内容はお互いに同意した内容ということになりますから、よく確認せずに契約を取り交わすと後々思わぬトラブルに発展する可能性があります。長文の契約書に尻込みしてしまう人もいるかもしれませんが、要点を抑えてしっかり目を通しておきましょう。

工事請負契約書を確認するときのチェックリスト

工事請負契約書を確認する時のチェックリスト

工事請負契約書には設計図書が添付されており、建築会社はこれに基づいて施工します。契約書への署名捺印は双方が図面に同意したことを意味し、後の変更は追加契約となりますから、契約前に図面を十分確認しておく必要があります。

また、見積もり書と図面を照らし合わせて内容が一致しているか、打ち合わせで調整した内容や金額がきちんと反映されているかもチェックしておきましょう。

工事請負契約書に着工日や完成日、引渡し日などの工事スケジュールが明確に記載されているかも重要です。「未定」や「要相談」といった曖昧な表現になっていないか、無理のない日程になっているか、引き渡し日は入居したい日より前になっているかなど一つ一つ確認しましょう。

工事代金の支払いは通常一括ではなく分割して行います。工事請負契約書に合計の支払い金額と分割した支払い時期がきちんと記載されているか確認しておきましょう。一般的には契約締結時に10%、着工時・上棟時・引渡し時にそれぞれ30%ずつ支払いを行うことが多いです。

住宅ローンを利用する場合は融資が行われる時期も勘案しながら支払いスケジュールをチェックしましょう。

住宅ローンを利用する場合、住宅ローンの審査と建築計画の打ち合わせは並行して行われます。住宅ローンは提供している金融機関によって審査項目が異なりますから、場合によっては建築会社と契約を結んだのにも関わらず住宅ローンの審査が通らず融資が受けられないことがあります。

通常、施主側の事情で一度契約した後に契約を解除すると手付金が返還されず、場合によっては違約金が発生することもあります。しかし、ローン特約が契約に盛り込まれていれば、ローンが不成立になった場合に限り契約を白紙に戻すことができ、手付金が返還されなかったり違約金を支払わなければいけなくなったりする事態を避けることができます。

様々な事情で、工事が大幅に遅れて引き渡しが記載されている期日までに完了しないことや、工事内容が変更・中止になることがあります。

また、工事中に台風や地震などの自然災害で資材や設備に損害が出たり、工事によって第三者を負傷させてしまったりすることもあるかもしれません。

さらに、引き渡し後に工事の不具合や欠陥が見つかることもあります。

このようなトラブルが起こった場合、どのような対応をとってもらえるのかも契約する前にきちんと確認しておきましょう。

契約をした後に施主側の事情で契約を解除した場合は、原則として損害賠償が必要になります。

一般的に工事に着手する前の違約金は建築費の10%程度が目安になりますが、工事が始まってしまった後に契約を解除するとこれまでにかかった工事費用を負担する必要があります。懸念材料がある場合は、契約をする前にどの段階でどれくらいの違約金が発生するのか確認しておきましょう。

高橋 良彰

注文住宅の工事請負契約書は、施主と建築会社の間で取り交わされる法的な効力がある約束です。図面や見積書の整合性、工事スケジュール、支払い条件については細かくチェックしましょう。

また、ローン特約や契約解除時の違約金についても理解しておくことで、予期せぬトラブルを防ぐことができます。契約前にこれらの点を慎重に確認することで、安心して家づくりを進めることができるでしょう。

工事請負契約書の確認チェックリスト簡易まとめ表

上記で紹介した内容を簡単にまとめたチェックリストが以下になります。契約は法的に効力がある双方合意の上の約束です。よく確認せずに契約を取り交わすと後々トラブルに発展する可能性がありますから、契約前に内容を慎重に検討する必要があります。

工事請負契約書を確認するときのチェックリスト
図面の内容に不満はないか
工事の日程は問題ないか
金額に間違いがなく、支払いスケジュールも問題ないか
ローン特約は盛り込まれているか
トラブルが起きた時に取ってもらえる対応を確認したか
契約を解除した時の違約金の扱いを確認したか

紙のチェックリストの方が活用しやすい方のためにダウンロード用のPDFも用意しましたので、印刷してご使用ください。A4用紙1枚のサイズです。

注文住宅の決めることリスト:工事編

工事に入った段階で施主が関わって行うことは、①地鎮祭・上棟式を行うこと②工事現場をチェックすることの2点です。

①地鎮祭・上棟式については、近年では建築会社に任せてしまったりそもそも執り行わなかったりする場合も増えてきています。しかし、現場で作業する人や近所に住むことになる人とコミュニケーションが取れる貴重な機会ですから、基本的には行いたいところです。地域によって慣習も様々ですので、自分が家を建てる地域の一般的な様子を建築会社の担当者に聞いてみましょう。

②工事現場をチェックすることについて、工事の段階になると施主側で決めることはほとんどありませんが、注文住宅は建築工事中の現場を見学することが可能です。見学において何か気になる点があれば、建築会社の担当者や現場監督に申し出ることで改善・変更してもらえることもあります。

ただし、連絡もなく突然押しかけたり、勝手に現場に立ち入ったりすると作業の邪魔になってしまいますし、大変危険です。必ず事前に連絡してから見学し、施工中のものに不用意に触ったりしないようにしましょう。

地鎮祭・上棟式についてのチェックリスト

地鎮祭・上棟式についてのチェックリストと建築現場全体でのチェックリスト

地鎮祭は、建築工事の前に行われる工事の安全を祈願する儀式です。通常、神主を招いて神式で行われますが、他の宗教式や簡易な形式も可能です。

費用は主に神主への謝礼(2〜3万円程度)と供物代(1万円程度)がかかります。その他、粗品(2,000円程度)を用意して担当者と近隣にあいさつしたり、儀式後に宴会を行ったりします。宴会の規模は様々で、宴会を省略して弁当を配布するケースなどもあります。家を建てる地域の慣習を事前に確認し、どの程度の規模で開催するのか決めておきましょう。

上棟式は、棟上げの完成を祝い今後の工事の無事を祈る儀式です。施主が主催し、工事関係者とともに行われます。

上棟式の後には直会と呼ばれる宴会を行います。最近では宴会は省略する場合も増えてきていますが、貴重な工事関係者とのコミュニケーションの機会ですので余裕があればぜひ行いたい所です。

費用は簡易なものなら10万円前後になりますが、式を盛大に行ったり宴会の参加人数が増えたりすると30万円程度かかることもあります。どの程度の規模で行うか早めに考えておきましょう。

建築現場全体でのチェックリスト

建物の建築には、工事を設計図書と照合し、それが設計図書のとおりに実施されているかを確認する工事監理者が必ず必要です。

工事現場を見学できるといっても多くの場合施主は素人ですから、完璧に見て回ることは難しいです。見学する時はできる限り工事監理者に立ち会ってもらい、説明を受けながら現場をチェックしましょう。

雑然と散らかっているような現場では、床下などの隙間にごみが入り込んだり、作業をする人の安全面や衛生管理が行き届いていなかったりするかもしれません。気になるようであれば、現場監督や建設会社の担当者に伝えて改善してもらいましょう。

実際の工程ごとのチェックリスト

工事の実際の工程ごとのチェックリスト

実際に建物を建てる前に、建築する土地の上に建物や駐車スペースを縄やロープで形どって位置を確認する地縄張りという作業があります。地面に書く大枠の間取り図のようなものなので、隣家や道路との距離が問題ないか確認しておきましょう。

保存状態が悪いと、使用する材料の木材に割れやひびが入っていることがあります。そのような素材を見つけたら、指摘して使用しないようにしてもらいましょう。

接続金物は、木材を固定して接続する部品です。必要な位置に設置されているか、固定に使うビスやボルトに抜けがないかなどをチェックしておきましょう。

外壁工事では、壁在の下地に貼る防水シートが隙間なく適切に貼られているかをチェックしましょう。特に窓周りやベランダの取り付け部、換気扇の開口部などの複雑な箇所を確認しておくと安心です。

断熱工事に使う断熱材は様々な種類があり、それぞれ性能も違います。別の素材と取り違えられていないかどうかしっかり確認しておきましょう。

断熱材は隙間があるとそこから熱の出入りが生じて断熱効果が薄れてしまう上に、隙間で結露が発生してカビや腐食の原因になってしまうこともあります。窓の周りやコンセントの周りなどの隙間ができやすい所をチェックしておきましょう。

玄関のドアや窓のサッシが指定通りの商品になっており、傷などがついていないかも確認しておきましょう。また、玄関のドアについては開く方向が正しいかどうかにも注意が必要です。

建物内部の工事では、床などの養生が適切になされているかを確認しておきましょう。養生が適切に行われていないと、床に傷や汚れなどがついてしまいます。

建物内部の工事において、コンセントやスイッチの位置に問題はないかもチェックが必要です。設計図通りに配置されているか、使用時に不便が生じない位置であるかをしっかり確認しましょう。

特に、家具の配置や生活動線を考慮した位置に設置されているかがポイントです。完成後に変更すると余計な追加費用が掛かってしまいますから、設置時に細かく確認することが大切です。

建物内部の工事において、床材や内部建具の商品、品番、開き方向などが仕様通りになっているかどうかも確認しておきましょう。後からの修正が難しい部分なので、施工中にしっかりチェックすることが重要です。

キッチンや浴槽、トイレなどの取り付けに工事が必要な設備は指定した商品になっているかもチェックが必要です。これらの設備は日常生活に直結する上に簡単には付け替えできませんから、品番やサイズが間違っていないかを入念に確認しましょう。

キッチンや浴槽、トイレなどの設備の設置位置が図面通りになっているかも確認しておきましょう。これらの設備の位置は、使い勝手や生活の快適さに直結するため、誤りがないかしっかりとチェックする必要があります。配管や配線も含めて丁寧に確認しましょう。

壁紙の品番や色、柄は間違いないかもチェックが必要です。複数の壁紙を使う場合、配置が正確かどうかも確認しましょう。

高橋 良彰

基本的には、現場打合せの際は建築会社の担当者と一緒に見られるケースが多いです。

構造体の状態、下地段階では、一般の方が完成形をイメージすることは難しいでしょうから、担当者の方と図面等を見ながら気になった箇所は遠慮せずに質問しましょう。きっと丁寧に説明してもらえます。

工事チェックリスト簡易まとめ表

上記で紹介した内容を簡単にまとめたチェックリストが以下になります。工事の段階に入ると施主側で決めることはほとんどありませんが、見学において何か気になる点があれば、建築会社の担当者や現場監督に積極的に進言しましょう。

注文住宅の工事工程チェックリスト
①地鎮祭・上棟式についてのチェックリスト
地鎮祭を行うか、行う場合規模は決まっているか
上棟式を行うか、行う場合規模は決まっているか
②建築現場全体でのチェックリスト
見学の時に工事監理者と一緒に見て回れるか
工事現場はきちんと整理整頓されているか
③実際の工程ごとのチェックリスト
建物を建てる位置は問題ないか
木工事において、材料の木材に割れやひびがないか
木工事において、接続金物に不備がないか
外壁工事において、防水シートは隙間なく貼られているか
断熱工事において、断熱材は指定通りの材料が使われているか
断熱工事において、断熱材は隙間なく施工されているか
玄関のドアや窓のサッシは指定通りの商品になっているか
建物内部の工事において、床などが養生で適切に守られているか
建物内部の工事において、コンセントやスイッチの位置に問題はないか
建物内部の工事において、床材や内部建具の商品、品番、開き方向などが仕様通りか
キッチンや浴槽、トイレなどの取り付けに工事が必要な設備は指定した商品になっているか
キッチンや浴槽、トイレなどの設備の設置位置は図面通りになっているか
壁紙の品番や色、柄は間違いないか

紙のチェックリストの方が活用しやすい方のためにダウンロード用のPDFも用意しましたので、印刷してご使用ください。A4用紙1枚のサイズです。

失敗例から見る、家を建てる時気をつけること5選

理想の家づくりを行うためには、失敗例と対策を知っておくことも重要です。以下で、注文住宅を建てる時によくある失敗例とその対策を5つ紹介します。これらの事例を念頭に置いて、建築計画を堅実なものにしていきましょう。

予算オーバーの失敗例

後から予定になかった設備を追加した結果、当初の予算から1,000万円オーバーしてしまいました。

  • 計画を進めるうちに、予定になかった内装や設備を加えたくなるのはよくあることです。余裕があれば、あらかじめ予算を実際の予想金額から10%程度上で考えておくと困らずに済みます。
  • 見積もりの時に「オプション」と記載されている項目は、金額が反映されていない可能性があります。
  • 希望に優先順位をつけ、絶対に譲れない部分を明確にしておきましょう。

間取りのミスマッチの失敗例

子供部屋をリビングに隣接させましたが、子供が成長したらプライバシーがないと揉めています。

  • 現在だけでなく、5年後や10年後の家族の姿をイメージして設計しましょう。
  • 家族で使う共有部分と個人の部屋の配置はよく考える必要があります。例えば、必ず誰かの部屋を通らないとバルコニーに出られない設計は、トラブルの元になる可能性が高いです。
  • 間取りを考える時は、家族全員の意見を聞き、生活動線を具体的にシミュレーションしてみましょう。

収納スペース不足の失敗例

生活空間を広くしたくて収納を削ったら、物が溢れて片付かない家になってしまいました。

  • 必要な収納の量は人によって異なりますが、一般的に延べ床面積に対して10~15%前後あると良いと言われています。
  • 「見せる収納」と「隠す収納」のバランスを考えて家具の配置を検討しましょう。
  • 構造上生活空間に活用しにくい場所を収納にする「階段下収納」や「小屋裏収納」などの方法も検討してみると良いでしょう。

設備の過剰投資の失敗例

最新の機能に惹かれて高額な設備を選びましたが、実際の生活ではあまり使いませんでした。

  • 最新の設備は魅力的ですが、自分たちの生活に本当に必要かよく考えてから導入しましょう。
  • 展示場で実際に触れて使用感を確認するとイメージがしやすくなります。特に水回りの設備は、清掃のしやすさなど長期的な使い心地を考慮して選びましょう。
  • 導入費用だけでなく、維持・運用にかかる費用も考えて設備を選ぶ必要があります。

建築会社選びの失敗例

価格の安さを重視して会社を選びましたが、アフターフォローが少なく心細いです。

  • 複数の建築会社を比較する時は、価格だけでなくアフターサービスの内容と期間も必ず確認しましょう。法定点検以外の保守・管理も重要なポイントです。
  • 建築会社を選ぶ時は、過去の施工例を見学して経年変化もチェックしておくと安心です。
  • 契約前には必ず契約書の内容を精査して、不明な点は質問し、疑問を解消してから契約することが大切になります。

これらはあくまで一例ですが、このような失敗例と対策を念頭に置くことで、より良い選択ができるはずです。家づくりは長期的な視点が必要ですから、一時の気分や流行に惑わされず、本当に自分たちに必要なものは何かを常に問いかけながら進めていきましょう。

注文住宅で決めることを順番に一つずつこなして、理想の家づくりをしよう

注文住宅の建築は自由度が高い分決めなければならないことがたくさんあり、多くの決断を必要とします。慣れない作業である上にたくさんの下調べと打ち合わせが必要になるため、気疲れしてしまう人も多いのではないでしょうか。

しかし、全体像を把握し、決めるべきことを一つずつ順を追って決めていくことで、現在行っている作業が全体の中のどの段階であるのかわかりやすくなり、重圧も軽減されます。各段階を丁寧に進めていくことが、無理なく理想の家を実現する近道になるでしょう。

ぜひ本記事を参考に、決めるべきことを一つ一つ着実にこなし、理想の家づくりを楽しみながら計画してください。

参考文献
群馬・栃木・宮城・山形で注文住宅を建てるなら

イエココロのWEBサイト「自慢の注文住宅集めました。」では、群馬・栃木・宮城・山形を中心とした工務店情報やモデルハウス情報のほか、多数の「建築実例」を紹介しています。お近くにお住まいの方は、ぜひチェックしてください。

この記事を書いた人

IECOCORO編集部
群馬・栃木・宮城・山形で注文住宅の情報誌「IECOCORO(イエココロ)」を発行する編集部。WEBサイト「自慢の注文住宅集めました。」では、地域の工務店情報のほか、多数の建築実例とイベント情報を紹介しています。

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