ハウスメーカーなどが建てた家を購入する「建売住宅」と違い、一から家を建てる「注文住宅」は、家族のライフスタイルに合わせた住まいをつくれることが魅力です。しかし、建てる地域や希望する条件によって費用が大きく異なるため、目安がわかりにくいことも事実です。
そのため、「家を建てたい」と考えたとき、まず気になるのは「費用がいくら必要なのか」ということでしょう。また、「どんな家を建てられるのか、どんなことに費用がかかるのか知りたい」という人も多いはずです。
そこで、この記事では、ファイナンシャルプランナーの齋藤周一さんからのアドバイスを交えながら、家を建てる費用の目安をはじめ、費用の内訳や住宅ローン・頭金などの資金計画について解説します。建築費別に建てられる家のイメージと建築実例も紹介していますので、家づくりの際にぜひ活用してください。
監修者 齋藤 周一
斉藤商店 / ファイナンシャルプランナー
ファイナンシャルプランナーと知り合いになり、両親の相続を経て、ファイナンシャルプランナーの資格を取得。
ライフプランの一環として、生活者目線で住宅関連に取り組み、顧客満足度の向上を信念とする。
家を建てる費用の目安は?土地なし・土地あり別に解説
まずは、実際に家を建てた人たちが「いくらで家を建てたのか」を見てみましょう。
住宅金融支援機構が行ったフラット35利用者調査の結果から、土地を購入して建てる【土地なし】、すでに持っている土地に建てる【土地あり】の場合に分けて、費用の目安を解説します。
家を建てるときは、まず予算を決めましょう。資金計画をまとめずにスタートすると、途中で家づくりが止まってしまったり、支払いやローンの返済で生活が苦しくなったりする可能性があります。
土地を購入して家を建てる【土地なし】の場合
地域 | 建築費用 (万円) | 土地代 (万円) | 総費用 (万円) |
---|---|---|---|
全国 | 3,194.6 | 1,499.5 | 4,694.1 |
東京 | 2,960.0 | 3,662.9 | 6,622.9 |
首都圏 (東京を除く) | 3,167.7 | 1,855.1 | 5,022.8 |
近畿圏 | 3,133.4 | 1,760.4 | 4,893.8 |
東海圏 | 3,394.4 | 1,299.5 | 4,693.9 |
その他の地域 | 3,223.8 | 927.2 | 4,151.0 |
東京を除く、都道府県の分類について
- 首都圏(東京を除く):神奈川県、埼玉県、千葉県
- 近畿圏:大阪府、京都府、兵庫県、奈良県、滋賀県、和歌山県
- 東海圏:愛知県、岐阜県、静岡県、三重県
- その他の地域:上記以外の都道府県
土地を含めた総費用は「地域によって大きく異なる」
【土地なし】の場合、全国平均では建築費用が約3,200万円、土地代が約1,500万円であり、家を建てる総費用は4,700万円ほど必要なことがわかります。建築費用については東海圏がやや高めですが、あまり地域差はないようです。
しかし、土地代は地域によって大きく異なります。特に東京は土地代だけで3,000万円を超え、総費用は約6,600万円にもなるのです。東京に接する3県の平均と比較しても1,500万円以上の違いがあります。このことから、建てる場所によって総費用が大きく変わると言えます。
土地を探す際は「土地と建物、どちらにお金をかけたいか」をよく検討し、通勤や通学への影響を考慮しながら、広い範囲で探すと良いでしょう。
国土交通省が公開している「土地総合情報システム」では、実際に取引された不動産の価格や、都道府県ごとの地価を調べることができます。市町村単位で検索できるので、建築を予定している地域の土地相場が知りたいときに利用すると良いでしょう。
持っている土地に家を建てる【土地あり】の場合
地域 | 建築費用 (万円) |
---|---|
全国 | 3,716.7 |
東京 | 4,352.0 |
首都圏 (東京を除く) | 3,898.7 |
近畿圏 | 3,990.5 |
東海圏 | 3,798.1 |
その他の地域 | 3,502.7 |
都道府県の分類について
- 首都圏(東京を除く):神奈川県、埼玉県、千葉県
- 近畿圏:大阪府、京都府、兵庫県、奈良県、滋賀県、和歌山県
- 東海圏:愛知県、岐阜県、静岡県、三重県
- その他の地域:上記以外の都道府県
土地代が不要な分、総費用は抑えられる
【土地あり】の場合は建築費用が家づくりの総費用となるため、費用を抑えることができます。【土地なし】に比べて建築費用は少し高い傾向が見られますが、土地の購入にお金が不要な分、建物へ費用をかけていると言えるでしょう。
家を建てるにはどこに頼めばいい?依頼先の選び方
家を建てるとき、最も悩むのが「依頼先選び」です。多くの人が真っ先に思い浮かべるのは、テレビや雑誌の広告でよく目にする大手のハウスメーカーでしょう。また、なかには「ハウスメーカー以外にどんな会社があるのかわからない」という人もいるのではないでしょうか。
主な依頼先として、ハウスメーカー以外に工務店と設計事務所があります。建てたい家のイメージや予算を思い浮かべながら、どこへ依頼するのがいいか、考えてみてください。
建築会社を探すときは、性能・デザイン・コストなど「優先したいこと」をはっきりさせることが大切です。複数の会社に話を聞き、自分に合う会社を見つけてください。
ハウスメーカー 〈すべてがシステム化された 安心の家づくり〉
ハウスメーカーは、部材の生産から設計、施工に至るまでシステム化された「規格型住宅」を得意としています。規格を揃えることにより一定の品質を維持できるほか、工務店に比べて工期が短いというメリットがありますが、テレビCMなどの宣伝費が価格に転嫁されるため、建築費用は高い傾向があります。
また、あらかじめ用意されたプランから選択するスタイルのため、設計の自由度は低いです。さらに、標準仕様の変更やプランの追加などはオプションであることが多く、要望を加えていくと予算オーバーになることもあります。
ある程度決められたプランで家を建てたい、大手メーカーの安心感を優先させたい人におすすめです。
工務店 〈豊富な知識と細かな対応 風土に合った家づくり〉
工務店は、ハウスメーカーに近い大規模な会社から、地域密着型の小規模な会社まで様々です。広告宣伝費や人件費などにかかるお金が少ないため、一般的にハウスメーカーよりも建築費用は安くなります。
最大の特徴は、間取りやデザインなどの自由度が高い点です。コストの調整がしやすく、予算内で最大限のこだわりや希望を反映させた家を建てられます。土地の形に合わせた設計や、住まいに合わせた造作家具の製作などについても柔軟に対応してくれるほか、設計・施工が一貫しているため、アフターフォローやトラブルに強いことも魅力です。
限られた予算のなかでも、こだわって家づくりをしたい人におすすめです。
ただし、住宅の品質や性能は、会社ごとに差が見られることがあります。モデルハウスなどを見学して、その会社が「得意なこと」を確認し、建てたい家のイメージと一致しているか、照らし合わせると良いでしょう。
ハウスメーカーと工務店は、価格だけで「どちらが良い」とは言えません。コストを抑えることが最優先であれば、ローコスト住宅を扱う会社も選択肢に入れましょう。
設計事務所 〈「オンリーワン」を実現する こだわりの家づくり〉
設計事務所との家づくりは、まさに「オーダーメイド」です。間取りからデザインまでゼロからつくりあげるため、オンリーワンの家を実現できます。コストダウンのアイデアを豊富に持っていたり、敷地などの条件が厳しい場合でも柔軟な発想で設計を提案してくれたりするなど、対応力の高さが魅力です。
ただし、設計事務所が担うのは設計と工事監理のみで、工事は別の建設会社(工務店など)が請け負います。工事費に設計料(工事費の10%程度)がプラスされるため、家づくりの総費用は高くなります。また、家を建てた後のアフターフォローは施工した会社が保証元になります。
多少費用が高くても、他にはない個性的な家やこだわりの家を望む人にとっては、ベストの選択肢になるでしょう。
価格や予算で依頼先に悩むときは、住宅業界に精通したファイナンシャルプランナーに相談してみましょう。家計の状況やライフプランから、最適な金額や住宅ローンの借入額を提案してくれます。支払える金額がわかれば、価格帯から選択肢を絞ることができるでしょう。
家を建てる費用の内訳とは?
「家を建てるのに必要なお金」とは、土地と建物にかかる費用だけではありません。各種手続きの手数料や引っ越し費用などの「諸費用」も必要です。ここでは家を建てるために必要な費用の内訳について、詳しく解説します。
土地の購入にかかる費用
土地を購入する場合、建築費用と土地代の割合は「6:4」または「7:3」をイメージすると良いと言われています。ただし、費用の目安から分かるように、土地代の高い東京などの都市部では、土地の割合が高くなる傾向があります。
土地の購入にかかる費用の内訳 | |
---|---|
土地代 | 土地の購入費 契約時に、土地代の5~10%の手付金を支払う |
土地の仲介手数料 | 仲介業者に支払う手数料(売主から直接購入する場合は不要) 一般的な相場は上限の「土地代の3%+6万円」 |
収入印紙代 | 土地の売買契約書に貼る収入印紙の代金 |
すでに土地を持っている場合、土地代はかかりません。しかし、土地が家を建てられる状態かどうかを調べる地盤調査費や、地盤が弱い場合には地盤改良費などが必要になることがあります。
建築費用
家を建てる費用のなかで、大きな割合を占めるのが、「建築費用」です。大きく「本体工事費」と「付帯工事費」の2つに分けられます。
本体工事費
建物本体にかかる費用のことで、建物以外にかかる費用は含まれません。広告などで目にする注文住宅の「建物本体価格」といった価格や坪単価は、この本体工事費のことを指していると考えて良いでしょう。
本体工事費の主な内訳 | |
---|---|
仮設工事費 | 工事に必要な設備や施設の設置にかかる費用 |
基礎工事費 | 家の構造全体を支えるコンクリートの基礎を造るための工事費 |
木工事費 | 構造躯体(住宅の骨組)の工事費、造作材(床・壁・天井など)の加工・工事費 |
外装工事費 | 屋根工事や外壁工事など、屋外の設備や装飾に関わる工事費 |
内装工事費 | 屋内の仕上げや建具・造作家具の設置に関わる工事費 |
住宅設備工事費 | キッチン・浴室・トイレなど、住宅設備や機器を設置する工事費 |
電気工事費 | 電気の配線、照明器具、スイッチなどを設置するための工事費 |
付帯工事費
庭や塀、駐車場のほか、配管や空調の工事など建物以外にかかる費用です。主な内訳は次の通りです。
付帯工事費の主な内訳 | |
---|---|
解体工事費 | 建て替えの際に、住んでいた家や古い建物を解体するための費用 |
地盤調査費 | 建てる土地が家を建てられる状態かどうかを調査するための費用 |
地盤改良工事費 | 地盤が弱いなど、家が建てられない土地の地盤補強・改良工事に必要な費用 |
造成工事費 | 家を建てるために土地を平らにする工事の費用 |
引き込み工事費 | 道路下から敷地内へ水道管を引き込むための工事にかかる費用 |
配管工事費 | ガスや給湯、空調などの配管を設置するための工事にかかる費用 |
空調工事費 | エアコンの設置工事にかかる費用 |
外構工事費 | 庭や塀、駐車場などを設置するためにかかる費用 |
付帯工事費は本体価格や坪単価に含まれないことが多く、また家を建てる土地の条件によって金額が変わります。
例えば、実家を建て直すという場合は、以前の住宅を解体するための「解体工事費」が必要になります。また、高低差のある土地や道路から離れている土地の場合、「引き込み工事費」が高くなります。
建てようとしている土地や条件と照らし合わせて、「何にお金がかかるか」をしっかりと把握しておきましょう。
諸費用
諸費用とは、各種税金や手続き・申請に必要な費用のほか、家具・家電購入費、引っ越し費用など建築工事以外にかかる費用のことです。基本的には現金で支払うことが多いため、あらかじめ用意しておきましょう。
諸費用の主な内訳 | |
---|---|
印紙代 | 工事請負契約書に貼る収入印紙の代金 |
登記費用 | 土地・建物の所有権を得るための登記をするための費用 |
建築確認申請手数料 | 建築前に行われる「建築確認」の申請にかかる手数料 |
火災保険料・地震保険料 | 火災や地震による建物の被害を補償する保険への加入費用 |
家具・家電購入費用 | 新居に置く家具や家電の購入費用 |
仮住まい費用 | 建て替えの場合に、工事期間中に住む賃貸住居の費用 |
引っ越し費用 | 新居へ引っ越しするための費用 |
地鎮祭費用 | 建築工事を行う前に行う儀式「地鎮祭」に必要な費用 |
諸費用のなかにはクレジットカードなどが使えるものもありますが、基本的に現金で対応することが多いです。また、諸費用向けのローンを利用したり、住宅ローンに組み込んだりできる場合もありますが、返済の負担が大きくなります。
必要な金額と貯蓄を照らし合わせ、足りない場合は予算や建てる時期を見直すなど、無理のない資金計画を立てることが大切です。
諸費用については、別の記事でさらに詳しく解説していますので、ぜひご覧ください。
本体工事費・付帯工事費・諸費用の目安は「7:2:1」
工事費と諸費用の割合は「本体工事費 約70%」「付帯工事費 約20%」「諸費用 約10%」 が目安と言われています。
例として、建築費用2,000~4,000万円までの4つのパターンで各費用の目安をまとめました。
費用の内訳 | 2,000万円 | 2,500万円 | 3,000万円 | 4,000万円 |
---|---|---|---|---|
本体工事費 | 1,400万円 | 1,750万円 | 2,100万円 | 2,800万円 |
付帯工事費 | 400万円 | 500万円 | 600万円 | 800万円 |
諸費用 | 200万円 | 250万円 | 300万円 | 400万円 |
予算を配分することで、建物にかけられる費用の目安が明確になります。思わぬ予算オーバーを防ぐためにも、漠然と総費用を決めるのではなく、内訳まで含めて具体的に考えることをおすすめします。
費用の配分を見て、「思ったよりも建物にお金をかけられない」と感じた人もいるかもしれません。本体価格だけで予算を設定し、実際の見積もりで予算オーバーするケースは多々あるため注意しましょう。
【建築費用別】建てられる家のイメージ
家を建てる費用は、「どんな家を建てたいか」によっても大きく変化します。ここではイエココロのWEBサイト「自慢の注文住宅集めました。」の建築実例を見ながら、建築費用別に建てられる家のイメージについて解説します。建てたい家のイメージづくりや、予算計画を立てる際の参考にしてください。
建築費用 1,000万円台〈面積を抑えたシンプルな形と間取り〉
建築費用が1,000万円台の家は、「ローコスト住宅」と呼ばれる価格帯です。無駄を省いたシンプルな一戸建てをイメージすると良いでしょう。一般的には、凹凸(おうとつ)の少ない四角いシンプルな形、コストの安い片流れ屋根、必要最低限の機能を備えた住宅設備など、金額を抑えることを優先したつくりになります。
《【土地なし】建築費用 1,800万円の場合 》全国平均と東京の費用シミュレーション
費用項目 | 全国平均 (万円) | 東京 (万円) |
---|---|---|
土地代 | 1,499.5 | 3,662.9 |
本体工事費 | 1,260.0 | 1,260.0 |
付帯工事費 | 360.0 | 360.0 |
諸費用 | 180.0 | 180.0 |
総費用 | 3,299.5 | 5,462.9 |
【建築実例】愛車を楽しむガレージ付きの平屋(群馬県)
愛車のためのガレージや住まいの象徴ともいえる薪ストーブを備えた理想の住まいです。夫婦の距離が近いコミュニケーションを意識した間取りが一番の魅力といえます。
- 本体価格
-
1,500〜2,000万円
- 設計・施工
-
中村住宅工業(群馬県太田市)
- 価格の目安
-
1,749万円~(延床面積28坪の場合)
建築費用 2,000万円台〈費用配分を考えて、こだわりを叶える〉
1,000万円台の家に比べて、素材や設備のグレードを上げることができます。全ての希望を叶えるのは難しいですが、性能にこだわる場合はその他のコストを下げるなど、希望に優先順位をつけることで、少しこだわって家を建てることができます。
《【土地なし】建築費用 2,800万円の場合 》全国平均と東京の費用シミュレーション
費用項目 | 全国平均 (万円) | 東京 (万円) |
---|---|---|
土地代 | 1,499.5 | 3,662.9 |
本体工事費 | 1,960.0 | 1,960.0 |
付帯工事費 | 560.0 | 560.0 |
諸費用 | 280.0 | 280.0 |
総費用 | 4,299.5 | 6,462.9 |
【建築実例】2階にアウトドアリビングのある家(宮城県)
大きな特徴は、何といってもアウトドアリビングとしても有意義に使えるバルコニーです。スタイリッシュな箱型の外観に一部施した木製格子により、光や風の通り道を確保しながらも、プライベート空間をしっかりと確保しています。
- 本体価格
-
2,000〜2,500万円
- 設計・施工
-
髙勝の家(宮城県大崎市)
- 価格の目安
-
1,923万円~(延床面積33坪の場合)
建築費用 3,000万円台〈理想の家を実現しやすい〉
建築費用の全国平均と同程度の3,000万円台では、デザイン性や素材へのこだわりを含め、大半の希望を叶えられます。ただし、「デザインも性能もより良く」と欲張りすぎると、予算オーバーになることもあります。ある程度はこだわりたい点の優先順位を決めておくことをおすすめします。
《【土地なし】建築費用 3,600万円の場合 》全国平均と東京の費用シミュレーション
費用項目 | 全国平均 (万円) | 東京 (万円) |
---|---|---|
土地代 | 1,499.5 | 3,662.9 |
本体工事費 | 2,520.0 | 2,520.0 |
付帯工事費 | 720.0 | 720.0 |
諸費用 | 360.0 | 360.0 |
総費用 | 5,099.5 | 7,262.9 |
【建築実例】自然素材をたっぷりつかった家族の気配を感じる家(栃木県)
杉の浮造りの床と羽目板の天井、壁は珪藻土の塗り壁と、自然素材をたくさん使った住まいです。吹き抜けを中心とした間取りには、家族の声や気配を感じる工夫がたくさん施されています。また、外部との融合も特徴で、林の木々や田園風景、暖かな日の光を取り込み、快適で癒される空間を実現しています。
- 本体価格
-
2,500〜3,000万円
- 設計・施工
-
みずもくの家(栃木県宇都宮市)
- 価格の目安
-
2,800万円~(延床面積30坪の場合)
建築費用 4,000万円台〈デザインにも性能にもこだわれる〉
建築費用だけで4,000万円の用意ができれば、完全分離型の二世帯住宅や広い平屋、太陽光発電や蓄電池を搭載した高性能住宅のほか、デザインや素材、グレードの高い住宅設備にこだわるなど、希望通りの自由な家づくりができるでしょう。外構や植栽などの付帯工事にも余裕が生まれ、庭や駐車場などへの予算配分もしやすくなります。
《【土地なし】建築費用 4,500万円の場合 》全国平均と東京の費用シミュレーション
費用項目 | 全国平均 (万円) | 東京 (万円) |
---|---|---|
土地代 | 1,499.5 | 3,662.9 |
本体工事費 | 3,150.0 | 3,150.0 |
付帯工事費 | 900.0 | 900.0 |
諸費用 | 450.0 | 450.0 |
総費用 | 5,999.5 | 8,162.9 |
【建築実例】回遊・水回りの距離感・吹き抜け・間取りにこだわったZEH(山形県)
玄関からキッチンまでの動線が短く、回遊できる間取りが特徴です。太陽光パネルによる「創エネ」と蓄電ユニット「畜エネ」設備を設け、使用エネルギーの自給自足にも挑戦しています。高断熱高気密仕様で、エアコン1台で快適に過ごせるのもポイントです。
- 本体価格
-
3,000万円以上
- 設計・施工
-
米住建設(山形県米沢市)
- 価格の目安
-
坪73万円(延床面積30坪の場合)
家を建てる費用を少しでも抑えたい!コストダウンのコツ
土地を購入して建てる人だけではなく、「できるだけ安く家を建てたい」と思う人は多いはずです。コストダウンの方法としては、建物をシンプルな形にする、間取りを簡素にする、素材や住宅設備のグレードを下げるなど、いくつかのコツが存在します。
コストダウンについては、別記事で詳しく解説していますので、ぜひご覧ください。
家を建てるときに受けられる補助金や減税制度
新しく家を建てるとき、条件を満たすことで補助金の支給や減税を受けることができます。補助金には、「全都道府県対象の国からのもの」と「その地域でしかもらえない自治体からのもの」の2種類があります。
国による補助金・減税(令和6年度)
補助金 | 対象・条件 |
子育てエコホーム支援事業 | 子育て世帯・若者夫婦世帯(※)が対象 高い省エネ性能(ZEHレベル)の新築住宅を取得する |
令和6年度 ZEH補助金 | 登録されたZEHビルダーまたはプランナー(ハウスメーカー・工務店)によって、条件に合った住宅を新築する 【ZEH】一戸につき55万円+α、【ZEH+】一戸につき100万円+α |
減税 | 条件 |
住宅ローン減税(所得税) | 認定長期優良住宅・認定低炭素住宅、ZEH水準省エネ住宅、省エネ基準適合住宅を新築する |
投資型減税(所得税) | 耐久性や省エネルギー性に優れた住宅を、ローンを利用せずに自己資金のみで取得する |
固定資産税、登録免許税、不動産取得税の優遇措置 | 認定長期優良住宅・認定低炭素住宅を新築する |
贈与税非課税措置 | 父母や祖父母などの直系尊属から住宅を取得する費用の贈与を受けて、省エネ性能等に優れた住宅を新築する |
※詳細は各項目のリンク先でご確認ください。
※子育て世帯:18歳未満の子を有する世帯、若者夫婦世帯:夫婦のいずれかが39歳以下の世帯
ZEH、長期優良住宅とは
- ZEH(ゼッチ)
-
実質的なエネルギー消費量がゼロ以下になる住宅「Net Zero Energy House(ネット・ゼロ・エネルギーハウス)」のことで「ゼロ・エネルギー住宅」とも言われます。住宅の性能を高めることで日常の消費エネルギー(電気やガス)を減らしつつ、太陽光発電などを用いてエネルギーを創り出すことで「創出エネルギー≧消費エネルギー」を実現します。
エネルギー消費量の削減割合などに応じて、「ZEH」のほか、「ZEH +(ゼッチ プラス)」「Nearly ZEH(ニアリー ゼッチ)」「Nearly ZEH +(ニアリー ゼッチ プラス)」「ZEH Oriented(ゼッチ オリエンテッド)」の5つの種類に分類されます。参考:資源エネルギー庁「ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)に関する情報公開について – 省エネ住宅」
- ZEHビルダーまたはプランナー
-
ZEHを建てることを認定されたハウスメーカーや工務店のこと。ビルダーとプランナーは事業者の業種によって分かれ、建設会社は「ビルダー」、設計事務者は「プランナー」として登録されます。
- 長期優良住宅
-
国が定めた長期優良住宅認定制度の基準をクリアし、「長く安心・快適に暮らせる」と認定を受けた住宅のことです。以下の基準を満たすことで認定されます。
- 長期に使用するための構造及び設備を有していること
- 居住環境等への配慮を行っていること
- 一定面積以上の住戸面積を有していること
- 維持保全の期間、方法を定めていること
- 自然災害への配慮を行っていること
参考:一般社団法人 住宅性能評価・表示協会「長期優良住宅とは」
補助金は、スケジュールや対象・適用条件を確認することが大切です。申請期間や受付期間を過ぎないよう、あらかじめ調べておきましょう。
自治体による補助金
国が実施する制度のほかに、自治体が独自の補助金を支給している場合があります。家を建てる予定の自治体に補助金の制度があるか、必ずチェックしておきましょう。
自治体の補助金制度は、各自治体の公式サイトに掲載されています。「●●市 補助金 住宅」などのワードで検索したり、補助金制度の情報がまとめられたポータルサイトを利用したりすると良いでしょう。
補助金は申請期間が短いことが多く、また、予算の上限に達した時点で終了するケースも多いです。補助金を受けたい場合は早い段階で依頼先に伝え、条件を満たすように家づくりを進めましょう。
自分に合う費用を見つけよう!住宅ローンの考え方
家を建てるとき、ほとんどの人は住宅ローンを利用することでしょう。そこで、まずは実際に家を建てた人が「どれくらいの金額で住宅ローンを組んだのか」を見てみましょう。フラット35利用者調査(2022年)の結果をもとに、【土地なし】と【土地あり】別に、世帯年収と住宅ローンの借入額・頭金・年収倍率をまとめました。
【土地なし】世帯年収と住宅ローンの借入額・頭金・年収倍率
地域 | 世帯年収 (万円) | 借入額 (万円) | 頭金 (万円) | 頭金の割合 (%) | 年収倍率 (倍) |
---|---|---|---|---|---|
全国 | 659.5 | 4,244.4 | 449.6 | 9.6 | 6.4 |
東京 | 837.9 | 5,644.4 | 978.4 | 14.8 | 6.7 |
首都圏 (東京を除く) | 695.2 | 4,607.2 | 415.6 | 8.3 | 6.6 |
近畿圏 | 658.8 | 4,396.8 | 496.9 | 10.2 | 6.7 |
東海圏 | 659.4 | 4,270.4 | 423.6 | 9.0 | 6.5 |
その他の地域 | 614.9 | 3,779.9 | 371.0 | 8.9 | 6.1 |
※頭金の割合は「頭金の金額÷総費用」から算出、年収倍率は「借入額÷世帯年収」から算出
都道府県の分類について
- 首都圏(東京を除く):神奈川県、埼玉県、千葉県
- 近畿圏:大阪府、京都府、兵庫県、奈良県、滋賀県、和歌山県
- 東海圏:愛知県、岐阜県、静岡県、三重県
- その他の地域:上記以外の都道府県
【土地あり】世帯年収と住宅ローンの借入額・頭金・年収倍率
地域 | 世帯年収 (万円) | 借入額 (万円) | 頭金 (万円) | 頭金の割合 (%) | 年収倍率 (倍) |
---|---|---|---|---|---|
全国 | 623.7 | 3,075.5 | 641.2 | 17.3 | 4.9 |
東京 | 700.1 | 3,314.7 | 1,037.4 | 23.8 | 4.7 |
首都圏 (東京を除く) | 674.9 | 3,176.0 | 722.8 | 18.5 | 4.7 |
近畿圏 | 632.7 | 3,306.6 | 684.0 | 17.1 | 5.2 |
東海圏 | 624.5 | 3,136.8 | 661.3 | 17.5 | 5.0 |
その他の地域 | 595.6 | 2,949.4 | 553.3 | 15.8 | 5.0 |
※頭金の割合は「頭金の金額÷総費用」から算出、年収倍率は「借入額÷世帯年収」から算出
都道府県の分類について
- 首都圏(東京を除く):神奈川県、埼玉県、千葉県
- 近畿圏:大阪府、京都府、兵庫県、奈良県、滋賀県、和歌山県
- 東海圏:愛知県、岐阜県、静岡県、三重県
- その他の地域:上記以外の都道府県
住宅ローン借入額は、世帯年収の5~6倍が目安
世帯年収の平均は「600~800万円台」であり、それに対する借入額の倍率は【土地なし】の場合は6~6.7倍ほど、【土地あり】の場合は5倍ほどということがわかります。このことから、世帯年収に対して5~6倍の借入金額であれば、無理なく返済できると言えるでしょう。
世帯年収はあくまで平均値であり、実際には世帯年収600万円未満でも多くの人が家を建てています。年収を理由に家づくりを諦める必要はありません。
住宅ローンの借入額を決める基準は「無理なく返済できる金額」
住宅ローンを考える際、「自分の年収では、いくら借りられるのか?」と考える人もいるかもしれません。しかし、年収などから計算される「借りられる金額」は、「返済できる金額」ではないため注意しましょう。
同じ年収でも家族の人数によって、ひと月に使える自由なお金の金額が異なります。そのため、家計の状況を考慮せずに上限まで借りると、返し始めてから「想像よりも返済が大変」ということが起こり得ます。
家を建てた後、何が起きても対応できるように、住宅ローンは「無理なく返済できる金額」を基準にして考えることが重要です。
住宅ローンを組む前に「ライフプランニング」を行うと良いでしょう。
ライフプランニングとは、「ライフイベント表」を使って人生の設計図を作ることです。平均寿命などを参考に「自分の寿命」を定め、家族構成や収入・支出の変化、ライフイベント(出産・入学・旅行など)を記入していきます。その際、寿命は長めに考えるなど、楽観的ではなく厳しめに想定するのがおすすめです。
ライフプランニングシートの一例
老後までのイベントやお金の動きを書き出すことで、目標や叶えたいことを整理できます。また、出費の多い時期や貯金を優先するべき時期もわかるため、返済に充てられる金額も自ずと見えてくるでしょう。
住宅金融支援機構のWEBサイトでは、毎月の返済額や借入可能額を調べられる「ローンシミュレーション」を公開しています。ライフプランニングとともに、ぜひ活用してみましょう。
そもそも「頭金」とは?必ず用意した方がいいの?
ここで、「頭金とは何?」「必ず用意しなければいけないの?」と疑問に思った人もいるでしょう。また、家づくりについて調べているとよく目にする「自己資金」との違いがわからないという人もいるはずです。
頭金の必要性を解説する前に、勘違いしやすい「頭金」と「自己資金」の違いについて理解しておきましょう。
「頭金」と「自己資金」の違い
- 頭金
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住宅ローンの借入額を減らすために、先払いする費用のことを言います。
例えば、家を建てる費用が4,000万円の場合に、住宅ローンの借入額を3,500万円に抑えたいとします。このとき、預貯金などから500万円を用意して先払いすることで、予定通り3,500万円で住宅ローンを組むことができます。つまり、ここで支払う500万円が「頭金」になります。
- 自己資金
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「頭金」と「諸費用」を支払うために預貯金などで賄う資金のことです。
頭金と同じ例で考えると、諸費用として400万円が必要です(総費用4,000万円の10%)。つまり、頭金500万円+諸費用400万の合計900万円が「自己資金」となります。
「自己資金」として「頭金+諸費用」分のお金を用意できれば理想的
家を建てるための初期費用として、「自己資金」で「頭金+諸費用」分を用意できれば理想的です。もし頭金が用意できない場合でも、手続きや申請時に支払う「諸費用」分のお金だけは用意することをおすすめします。
しかし、人によって様々な事情でお金の工面が難しいこともあるでしょう。そんなときは、予算を見直したり、時期を延ばしたりするなど、一度立ち止まることも大切です。
ローンの負担を減らしたいなら「頭金」を用意しよう
現在は、頭金なしで住宅ローンを借りることもできます。しかし、当然ですが、ローンの借入額が増える分、毎月の返済の負担も増えてしまいます。ローンの負担が少なくなることはもちろん、審査に通りやすくなるなどのメリットもあるため、頭金は用意した方が良いと言えるでしょう。
頭金なしの「フルローン」は、収入と費用(借入額)のバランスが取れる場合には選択肢となります。しかし、頭金を支払うことで、借入額を減らせるほか、金利を引き下げられる可能性があります。そのため、基本的には頭金を用意する前提で予算を考えるのが良いでしょう。
家を建てる費用は「建てたい家」に合わせて計画しよう
家を建てる費用は、建築する地域のほか、こだわりや条件によって人それぞれです。費用が安く済む場合も、高くなる場合もあります。そのため、あまり費用の平均にとらわれず、「建てたい家」のイメージをしっかり固めることが大切です。
「どの場所で、どんな家で、どういう暮らしがしたいか」をよく考えることで、「土地と建物、どちらにお金がかけたいか」が見えてきます。どんな家を建てたいか迷ったら、【建築費別】建てられる家のイメージを参考にしてみましょう。
また、家を建てる際には、たくさんのお金が必要です。頭金や諸費用など、預貯金から支払うものもあるため、家づくりの時期や予算計画は余裕をもって考えることをおすすめします。
「建てる前も後も負担のない予算計画」を立てることが、理想の暮らしを手に入れるための第一歩です。この記事が、あなたの家づくりに少しでも役に立てば幸いです。
- 国土交通省
- 一般社団法人 環境共創イニシアチブ「ZEH Web(ネット・ゼロ・エネルギーハウス補助事業)」
- 経済産業省 資源エネルギー庁
- 日本FP協会
IECOCORO編集部
群馬・栃木・宮城・山形で注文住宅の情報誌「IECOCORO(イエココロ)」を発行する編集部。WEBサイト「自慢の注文住宅集めました。」では、地域の工務店情報のほか、多数の建築実例とイベント情報を紹介しています。
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