注文住宅を購入する際、多くの方は住宅ローンを利用されます。その際、お悩みになるのが、頭金はどれくらいの額を用意すれば良いのかということではないでしょうか。
頭金の金額以外にも、「頭金は多い方が良いと聞くが、なかなか貯められない」「将来かかる金額を考えるともっと貯めておいた方がいいのか」「自己資金ゼロでも住宅ローンを借りられると聞いたが本当だろうか」などの悩みや疑問をかかえている方も多いでしょう。
そこで本記事では、注文住宅を購入する際の頭金の相場や、頭金ゼロでも大丈夫なのかどうか、頭金の金額毎の返済シミュレーションなどについて解説・紹介していきます。
IECOCORO編集部
群馬・栃木・宮城・山形で注文住宅の情報誌「IECOCORO(イエココロ)」を発行する編集部。WEBサイト「自慢の注文住宅集めました。」では、地域の工務店情報のほか、多数の建築実例とイベント情報を紹介しています。
頭金ってなに?その必要性と相場について
本項では、頭金とはなにか、なぜ頭金を用意した方が良いのか、用意する頭金の相場などについて解説します。
頭金ってなに?なぜ必要なのでしょうか?
住宅ローンの頭金とは、注文住宅の購入代金の一部として、最初に現金で支払う費用のことです。支払うのは住宅の引き渡し時(売買契約から引き渡しまでの間)となり、頭金以外の金額はローンに組み入れられ、月々返済していくことになります。
例えばですが、4,500万円の注文住宅を購入する際、月々の返済を考えて住宅ローンは3,000万円に抑えたいとします。預貯金や親からの援助などで1,500万円を用意して先払いできれば、予定通り3,000万円の住宅ローンを組むことができます。もし、用意できたのが1,000万円だったら、住宅ローンは3,500万円で組むことになります。要するに、頭金とは住宅ローンで借りる金額を少なくするために用意するお金ということです。
そのため実は、契約において頭金の支払いは必須ではないのです。ただし、後述する手付金は、契約上支払いが必須になります。
頭金と手付金ってなにが違うの?
頭金に似た言葉で手付金というものがあります。
手付金は契約時に現金で支払う費用のことです。購入の契約が成立したことを表す重要なものなので、必ず支払わなければなりません。
相場としては購入価格の5%~10%程度ですが、細かい金額は施工業者との相談で決まることが多いです。支払った手付金は、そのまま住宅購入の支払いに充当されることが一般的であるため、頭金の一部とも言えます。ただし、途中で解約した場合、支払った手付金は放棄することになります。
また、この手付金の額は、宅地建物取引業法(e-Gov)「第三十九条(手付の額の制限等)」により、20%を超えてはならないと定められています。
頭金の相場ってどれくらい?
一般的に「頭金は購入価格の20%程度が理想である」と言われていますが、実際はどれくらいの金額を用意している人が多いのでしょうか。
住宅金融支援機構が公表しているデータ「2022年度 フラット35利用者調査」から見てみましょう。
建築費の平均額(万円) | 頭金の平均額(万円) | 頭金の割合(%) | |
建物のみ | 3,715 | 641 | 17.3 |
土地購入を含む場合 | 4,693 | 449 | 10 |
理想としては購入価格の20%ですが、金額も大きいため現実は10%~17%程度が多いようです。
また、後にも述べますが、歴史的な低金利状態が続いているため、大きい金額も借りやすい、というのもあるのではないでしょうか。
次に、国土交通省が公表しているデータ「令和4年度 住宅市場動向調査」を見てみましょう。
建築費の平均額(万円) | 頭金の平均額(万円) | 頭金の割合(%) | |
建物のみ | 3,935 | 1,177 | 29.9 |
土地購入を含む場合 | 5,436 | 1,665 | 30.6 |
こちらのデータには建て替え注文住宅のデータも含まれるため、フラット35利用者データに比べ、収入に余裕のある世代のデータも入っています。そのため、頭金の割合が30%前後と、かなり多い傾向が見て取れます。
頭金ゼロでもOKなの?メリットとデメリットについて!
本項では、頭金がゼロでも住宅は購入できるのかどうか、そのメリット・デメリットについて解説します。
頭金ゼロでも注文住宅は購入できる
かつては無理でしたが、現在ではほとんどの住宅ローンは価格の100%まで借りることができるようになっています。月々の返済金額は増えてしまいますが、それでもかまわない、という場合は頭金ゼロで住宅ローンを組むことも可能です。
もちろんすべてのローンでOKという訳でも、誰でも借りられるという訳ではありません。100%借入可能なローンでかつ、年収や返済能力の有無など、ある程度の条件はあります。しかしその条件をクリアできれば、頭金ゼロで住宅ローンを組むことができます。
とはいえ、頭金が少ないとその分ローンの借り入れが増えて月々の返済額の負担が多くなることから、非課税の制度を利用して親・祖父母からの資金援助を受けて頭金を増やす人も多いようです。
頭金ゼロにした場合、メリットもデメリットも両方ありますので、それぞれについて以下で詳しく解説します。
頭金ゼロの場合のメリット
頭金をゼロにした場合のメリットについて、4点に絞って紹介します。
①買うときの負担が軽くなる
頭金をゼロにすることで、土地や注文住宅購入前に準備する自己資金が少なくて済みます。取り急ぎ、諸費用や手付金を支払う分の現金が用意できればよくなるのです。
頭金の金額を貯めるのに時間がかかればかかるだけ年齢を重ねることになり、完済時の年齢も上がっていきます。多くのローンは完済時の年齢が80歳未満に設定されていることが多いため、年齢が上がることはリスクにつながります。また、現状が賃貸であれば貯めている期間の家賃の支払いも負担になりますので、早く購入した方がお得になります。
②住宅ローン減税が最大限受けられる
借り入れ金額が多い方が、住宅ローン減税の効果が大きくなります。
住宅ローン減税とは、住宅ローンを借り入れて住宅の新築・取得または増改築等をした場合、年末のローン残高の0.7%を所得税(一部、翌年の住民税)から最大13年間控除する制度のことです。住宅市場動向調査によれば、住宅ローン利用者の93.1%が減税制度を活用しています。
ただし、2024年1月以降に建築確認を受けた新築住宅の場合、省エネ基準を満たす住宅でない場合は住宅ローン減税を受けられないため、制度利用を検討している方は条件を確認しておくことをおすすめします。
出典:国土交通省「住宅ローン減税」
③条件の良い土地があれば即購入できる
頭金を用意しなくても良いので、気に入った土地に出会ったときに即購入を決断できます。条件の良い土地は、多くの方に人気があるため、すぐに売れてしまう可能性があります。そのため「お金が貯まるまで待つ」という事が難しい場合が多いのです。
④自己資金が残る
頭金として支払う費用がゼロになることで、その他の諸経費を支払ったとしても、ある程度のまとまった金額が手元に残ります。生活費や賃貸の家賃などはもちろん、引っ越しなどのための金額、子どもがいる場合は教育費など、お金が必要になるタイミングが多いので、生活に必要な費用といざという時のための備えを確保しておけるのは大きな利点です。
頭金ゼロの場合のデメリット
頭金をゼロにした場合のデメリットについて、4点に絞って紹介します。
①住宅ローンの返済が重くなる
頭金分の自己資金は用意しなくて良くなる半面、借りる金額が多くなるので、月々の返済額・利息負担は大きくなります。よくある事例として、月々のローンの返済が苦しくて後悔した、という話をききますので、余裕を持って返済できる金額をしっかり把握しておきましょう。
次項に簡単な月々の返済シミュレーションを用意しましたので、おおよその金額イメージを付けることにお役立てください。
②審査に通り辛くなる
住宅ローンの審査を行う金融機関は、契約者の返済能力を最も重視しています。そのため、頭金なしの場合、住宅ローンの審査は頭金ありの場合と比べて厳しくなります。
ローン完済までは家や土地に金融機関の抵当権が設定され、融資先に万が一のことがあってローンが支払えなくなってしまうと、金融機関はその物件を売却します。そういった場合、物件の売却価格が住宅ローンの残高よりも安くなってしまうリスクが高まるため、住宅ローンの審査に通りにくくなるのです。
③借り入れ金利が高くなることがある
フラット35などは頭金10%以下(融資額が購入価格の90%以上)の場合と頭金10%以上(融資額が購入価格の90%未満)の場合で金利が異なります。
頭金10%以下(融資額が購入価格の90%以上): 年2.020%~年3.410%(最も多い金利は年2.020%)
場合10%以上(融資額が購入価格の90%未満):年1.880%~年3.270%(最も多い金利は年1.880%)
フラット35以外にも、頭金の割合に応じて金利が異なる金融機関があるので、事前にしっかり確認しましょう。
④売却後にローンが残る可能性がある
頭金ゼロだと、将来その不動産が値下がりしたときのリスクが大きくなります。
例えば、住宅ローンを支払っている最中に、何らかの事情で不動産を手放す必要が出てくるかもしれません。しかし、その不動産が値下がりしてしまった場合は売却によって得られる資金だけではローンの残高を返しきれず、支払いが残ってしまう可能性があります。
頭金の額でこれだけ変わる!住宅ローン返済や金利について
本項では、借り入れ金と頭金による月々の返済趣味レーションとローン返済に関する各種調査、金利の状況について解説します。
月々の返済シミュレーション
借り入れ金額毎の、頭金の額と月々の返済額のシミュレーションを見てみましょう。
※適用金利は金融機関や返済プランによって変動します
※2023年10月現在、全期間固定金利(フラット35)は平均1.9%、大手金融機関の変動金利は平均0.4%
以下の表では上の数字の平均を取って金利1.2%で計算しています
※月々の返済金額の表記の単位を万円に統一するため、百の単位は四捨五入しています
借り入れ金額1,000万円(住宅ローン金利1.2%、返済期間35年) | ||
頭金(万円) | 月々の返済額(万円) | 返済総額(万円) |
0 | 2.9 | 1,226 |
100 | 2.6 | 1,103 |
200 | 2.3 | 980 |
400 | 1.7 | 735 |
500 | 1.5 | 613 |
頭金がゼロで1,000万円の家を建てようとした場合、住宅ローンの月々の返済額は29,000円です。頭金を200万円用意できれば、月々の返済額は23,000円になります。
あまり差がないように感じられるかもしれませんが、借り入れ金額が大きくなればなるほどこの差は大きくなっていきます。
では、2,000万円、3,000万円、4,000万円の場合も続けて見ていきましょう。
借り入れ金額2,000万円(住宅ローン金利1.2%、返済期間35年) | ||
頭金(万円) | 月々の返済額(万円) | 返済総額(万円) |
0 | 5.8 | 2,452 |
100 | 5.5 | 2,329 |
200 | 5.3 | 2,207 |
400 | 4.7 | 1,961 |
600 | 4.1 | 1,716 |
800 | 3.5 | 1,471 |
1,000 | 3 | 1,226 |
借り入れ金額3,000万円(住宅ローン金利1.2%、返済期間35年) | ||
頭金(万円) | 月々の返済額(万円) | 返済総額(万円) |
0 | 8.8 | 3,678 |
100 | 8.5 | 3,555 |
200 | 8.2 | 3,433 |
400 | 7.6 | 3,187 |
600 | 7 | 2,942 |
800 | 6.4 | 2,697 |
1,000 | 5.8 | 2,452 |
借り入れ金額4,000万円(住宅ローン金利1.2%、返済期間35年) | ||
頭金(万円) | 月々の返済額(万円) | 返済総額(万円) |
0 | 11.7 | 4,904 |
100 | 11.4 | 4,781 |
200 | 11.1 | 4,659 |
400 | 10.5 | 4,414 |
600 | 9.9 | 4,168 |
800 | 9.3 | 3,923 |
1,000 | 8.8 | 3,678 |
このシミュレーションは毎月均等払いを想定しているので、ボーナス月に多めに返済するプランを選べば月々の返済額はさらに抑えることができます。また、繰り上げ返済などを利用すれば、期間の短縮や残金を効率的に減らすこともできます。
利用する住宅ローンに当たりを付けている方や、自分に合わせたパターンを自由に試算してみたい方は、シミュレーターを活用してみてはいかがでしょうか。
ローンの返済に関するの各種調査
住宅ローンの平均返済期間はどれくらい?
返済期間は、「5年未満/5~10年未満/10~20年未満/20~35年未満/35年以上」という選択肢の中で「35 年以上」が最も多く72.7%で、平均返済期間は32.8年でした。
住宅ローンの平均年間返済額はどれくらい?
住宅ローン年間返済額は、全国平均で174万円、年収に対する住宅ローンの返済負担率は全国平均で16.4%でした。
住宅ローンの負担感についてどう思ってる?
住宅ローンの返済について、「非常に負担感がある」と答えた方は7.7%、「少し負担感がある」と答えた方は57.5%、負担を感じている方の合計は65.2%でした。
「あまり負担感はない」という方は28.3%で「全く負担感はない」という方は5.8%いました。
参考:国土交通省「令和4年度 住宅市場動向調査」
歴史的な低金利状態だからこそ
2023年10月現在、歴史的な低金利の状態が続いています。
固定金利は若干増加していますが、変動金利は横ばいないし若干の下降傾向ということもあって、住宅ローンなど、大きい金額を借りやすくなっています。
ただし、日銀の金融緩和の政策次第で今後どんどん上昇する恐れはあります。また、世界的には利上げの傾向のあるため、日本でも2024年に利上げが見込まれるという噂もあるので、金利に関しては注視していく必要があります。
変動金利は金利上昇のリスクがあるため、固定金利を選んだ方が安全ではありますが、変動金利に比べて高いのは確かです。実際に、住宅市場動向調査によれば、2022年度の調査対象の75.7%の方が住宅ローンの金利タイプは「変動金利型」を選んでいます。
自己資金やローンに関するQ&A
まとめ
頭金の相場としては、理想は住宅の購入価格の20%、実情としては10%前後の人が多い、という状況です。
現在では、頭金を用意しなくても住宅ローンを借りることは可能です。ですが、月々のローン返済が負担になる可能性もあるので、できるだけ頭金は用意しておいた方が安全でしょう。 たとえ頭金として使わなくても、費用を用意しておけば、諸費用や当面の生活費、引っ越し費用など、現金での支払いが必要な際に活用できます。
金利の傾向次第では早く借りて家を購入した方がお得になる場合もあるので、自己資金をためるのに時間がかかる場合は無理をせず、柔軟に対応すると良いでしょう。
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