注文住宅は間取りを自由に決められるのが大きな魅力の一つですから、計画を立てる時には人それぞれ様々な理想があります。
しかしこれから長く住むこと、金額が大きいことを考えると期待だけでなく失敗したり後悔したりしないかという不安がある方も多いのではないでしょうか。
本記事では、注文住宅の間取りの決め方の流れやおすすめのアイデアと実際の成功例、後悔しないためのポイントQ&Aなどを紹介します。 間取りの決め方に不安がある人は、ぜひ理想の注文住宅を建てる参考にしてください。

監修者 高橋 良彰
一級建築士事務所 高橋良彰建築研究所 / 一級建築士
建築を学び始めた武蔵野美術大学時代から設計事務所スタッフやハウスビルダー勤務、また、「住まいの学校『住学』すがく」等これまで様々なかたちで建築に関わってきました。
この仕事の一番の魅力は“人との出会い”だと思っています。
「快適な省エネ住宅をローコストに供給する」を信条とする新住協会員。
住まい手の要望や想いを反映させた住まいづくりをモットーとしています。
注文住宅の間取りの決め方は?考える手順とコツ

注文住宅は間取りの自由度が高いところが魅力ですが、決め方の基準がわからず悩んでいる方も多いのではないでしょうか。
間取りを考える時は感覚で決めず、段階を踏んでアイデアを固めていくのが失敗を防ぐ近道になります。基本的には、次のような流れで決めていくのがおすすめです。
- 家族と話し合い、必要な部屋数と優先事項を整理する
- カタログやホームページ、SNSなどで希望に近い実例を集める
- 動線を軸に部屋の配置を考える
- 収納や窓・コンセントなどの具体的な数や配置を考える
- 専門家に相談し、土地の形状や日当たり、法律に合わせて調整する
本章では、各段階について詳しく解説します。
①家族と話し合い、必要な部屋数と優先事項を整理する
注文住宅の間取りを決める時には、自分たちが住宅に何を求めているのかをきちんと把握することが重要です。必須事項と優先事項、余裕があれば付けたい仕様などが最初に決まっていれば、情報を判断する時の指針となります。
1人で住む場合は自分の希望だけで良いですが、そうでない場合は家族間での調整も大事です。お互いに譲歩しあって気持ちよく住める家の計画を立てましょう。
また、家族構成と将来の変化(子供の成長・独立、二世帯化の可能性など)を前提に、部屋の数と共用部分のバランスも考える必要があります。後で変更すると他の作業もやり直しになるため、最初に方向性を固めておくのが効果的です。
②カタログやウェブサイト、SNSなどで希望に近い実例を集める
ハウスメーカーのカタログやウェブサイト、SNSなどでさまざまな注文住宅の施工事例を探してみましょう。多くの実例に触れることで、どのような間取りがあるのか選択肢が広がり、イメージがしやすくなります。
また、気に入った間取りやデザインの画像を集めてまとめておくと、後で建築会社と話し合う時に役に立つでしょう。参考にできる間取りがあると、動線や収納、採光の計画も立てやすくなります。
ただし、あまりにもかけ離れた家族構成やライフスタイルでは参考にしづらいので、情報収集の時には、なるべく自分たちに近い実例を集めることを意識しましょう。
③動線を軸に部屋の配置を考える
部屋の数やイメージが固まってきたら、部屋の配置を具体的に考えます。
部屋の配置には、家の中を移動する経路である「動線」が重要です。特に、料理や洗濯といった家事の動きを示す「家事動線」は、日々の暮らしやすさに直結します。
基本的には、空間をゾーニング(機能や用途などで分けて配置すること)して、同じゾーンの部屋は近い場所に配置するのがおすすめです。家の中で機能別に空間をゾーニングする場合は、おおまかに以下の4つに分けて考えます。
| パブリックゾーン | リビングやダイニングなど、家族や来客が過ごす空間 |
| プライベートゾーン | 寝室や書斎など、個人の時間を過ごす空間 |
| サービスゾーン | 洗面所や浴室など、生活するための作業を行う空間 |
| 通路ゾーン | 廊下や階段など、通行に必要な空間 |
家の中で大きな面積を占めるのはパブリックゾーンなので、まずはここに属するリビングやダイニングの配置から考えると良いでしょう。
④収納や窓・コンセントなどの具体的な数や配置を考える
おおまかな部屋の配置が決まったら、収納や窓、コンセントなどの具体的な数や配置を考えます。家具や家電のレイアウトも一緒に検討し、必要な数と高さを調整しましょう。
特にコンセントの数や位置は、過不足があると後悔しやすい要素です。実際の生活をシミュレーションして、必要な位置に必要な数が確保できているかよく検討しましょう。
収納は一カ所にまとめて大きな空間を取るより、収納するものの使用場所に近い位置に分散させて配置する方が、利便性が高くなります。
⑤専門家に相談し、土地の形状や日当たり、法律に合わせて調整する
間取りのイメージがだいたい固まったら、予算や方向性が近いハウスメーカーや工務店で相談しましょう。
間取りは建物だけでなく、建築予定の土地の形状や周辺環境、法律や条例も考慮する必要があります。これらを個人レベルで考えるのは困難ですから、専門家のアドバイスが不可欠です。
また、一般的に希望を盛り込んだ注文住宅は想定予算をオーバーしてしまうことが多いです。面積と仕様を段階的に調整し、①で決めた優先順位に沿って、コストと希望事項のバランスが取れた間取りの計画を完成させましょう。
建築会社の担当者としっかりコミュニケーションを取ることが成功のコツ
情報誌やインターネットでの検索ではいろいろな情報が手に入りますが、その土地に合った実情や最新の正確な情報は専門家に聞くのが一番です。建築会社の担当者と密にコミュニケーションを取り、気軽に質問して疑問や不安を解消することが、行き違いや不満のない納得できる家づくりにつながります。
建築会社に希望を伝える時は、取り入れたい設備や間取りそのものだけでなく、それを取り入れたい理由や目的も一緒に伝えましょう。要望が伝わりやすくなり、別の角度からのより良い提案を受けられる可能性があります。
高橋 良彰注文住宅のプランは、法律・敷地条件・建て主の要望・予算・構造など様々な要素が複雑に組み合わさって出来ています。
また、同じ敷地でも、プランの正解は1つではありません。
建築士と打合せを重ねながら、自分たちの優先順位を整理していくようなイメージで進められると、理想のプランに近づけられるでしょう。
間取りを決めるときにおすすめのアイデア13例!重視するポイント別に紹介

家族の形は人それぞれ異なり、生活様式に応じて理想の間取りは大きく変わってきます。間取り選びでは、自分たちの生活に何が必要なのかを的確に捉えることが重要です。
本章では、6つの観点からおすすめの間取りを実例と共に紹介します。ぜひ、重視するポイントに合わせて参考にしてください。
①家事のしやすさを重視する人におすすめ
家事の効率を上げることは、日々の暮らしの快適さに直結します。毎日の料理や洗濯、片付けなどの負担を軽減できる設備を取り入れることで、時間に余裕が生まれ、家族との時間も増やせるでしょう。以下で、家事動線を改善し、作業効率を高める2つの設備をご紹介します。
パントリー|キッチン横の小部屋
パントリーは食品や調理器具を収納するための、キッチンに隣接した小さな部屋や収納場所です。
机や椅子を配置してちょっとした休憩や調理の補助スペースとして利用する場合もあります。
- 食料品や調味料、調理器具などをきれいに収納できる
- キッチンが片付くため調理がしやすくなる
- 買い置きしたものを管理しやすい
高橋 良彰パントリーは普段の整理整頓に役立つだけでなく、災害時の備蓄の準備にもつながります。キッチンに隣接する場所に配置したり、玄関や駐車場から近い場所に設置したりすると使いやすいでしょう。
家事室|ちょっとした作業や休憩にも使える
家事室は主に衣服関連の家事を集約して行うための場所です。
衣服の収納や、机やパソコンを設置した作業・休憩スペースとして利用する場合もあります。
上手に設計することで、家事の効率化と生活空間の快適性の両立が可能です。
- 家事を行う場所を集約することで家事動線が良くなる
- 生活空間と家事を行う場所が分離されるので、リビングなどを片付いた状態で保ちやすい
- 家事の音が居室に伝わりにくくなる
高橋 良彰設置場所はキッチンなど他の家事を行う場所との位置関係を考え、動線を無駄なく設計することが重要です。
家事室を設ける場所が確保できない場合は、リビングやキッチンの一角に家事コーナーを設けるという手段もあります。
②家族のコミュニケーションを重視する人におすすめ
家族のコミュニケーションを大切にしたい人には、空間のつながりを意識した間取りが効果的です。動線や縦空間の広がりを上手に使って、毎日の暮らしの中で家族の距離が近づく住まいを実現しましょう。
リビング階段|家族の会話が弾む
リビング階段は、階段をリビングの一角に設ける設備です。部屋の中心的な存在としてデザイン性の高い演出が可能で、リビングを通る機会が増えるため家族間で会話が生まれやすくなります。
多くの場合吹き抜けとセットで採用されます。
- 素材選びやデザインの自由度が高く、開放的な雰囲気を演出できる
- 階段下を収納などに利用できる
- 家族の動きがわかりやすくなり、コミュニケーションが取りやすくなる
高橋 良彰リビング階段はデザインや採光の面でもメリットが大きい設備です。
一方でリビングでの生活音や匂いが上階に伝わりやすくなったり、住宅の性能にもよりますが空調の効きが悪くなったりするといったデメリットもありますので、設置する時にはそれらの対策も一緒に考えた方が良いでしょう。
対面キッチン|毎日の調理が楽しくなる
対面キッチンは、キッチンの作業場所をリビングと対面するように配置する設備です。壁側に設置するタイプのキッチンと違い、リビングを眺めながら作業することができます。
人気のある設備ですが、壁側向きと比べて広い面積が必要になるので注意しましょう。
- 調理中も家族と会話したり子供の様子を見守ったりすることができる
- キッチンがリビングの一部となり、開放的で明るい空間になる
- 動線が効率的で家事が楽になる
高橋 良彰対面キッチンはI型・L型・U型・セパレート・アイランド・ペニンシュラといったように様々な形があります。設置できる面積や生活様式から自分たちに合ったものを選びましょう。
キッチンの形状はプランの大きな要素のひとつでもあります。
リビングやダイニングと一体として柔軟に考えると、よりプランのバリエーションが増えるでしょう。
吹き抜け|あふれる開放感
吹き抜けは、家の中の特定の場所において天井と床を設けず、複数階をつなげる設備です。土地が狭くても家の中に開放感を出すことができ、デザイン性も高いためとても人気があります。
特に住宅密集地や狭小地では採光を確保するために大きな役割を果たすでしょう。
- 家の中に開放的で明るい空間が生まれる
- 上下の空間がつながることで声や気配が伝わりやすくなり、家族のコミュニケーションが活発になる
高橋 良彰吹き抜けは採光や開放感の演出に大きく貢献しますが、空調の効きが悪くなることは避けられません。天井に空気を循環させるシーリングファンを設置するなどの対策も検討しましょう。
大きな吹き抜けを設ける場合、高気密高断熱や空調・換気計画を慎重に検討することが快適な空間を作る上で重要です。設置する際は、建築会社の方に詳しく確認することをおすすめします。
③趣味やプライベートを重視する人におすすめ
趣味に没頭できる時間は、日々の暮らしを豊かにしてくれます。周囲を気にせず好きなことができる間取りを取り入れて、自分らしい暮らしを実現する理想の住まいを目指しましょう。
インナーガレージ|防犯性も抜群
インナーガレージは建物に車庫を組み込んだ設備で、ビルトインガレージとも呼ばれています。
車庫が居住空間の延長になるため、車やバイクが趣味の場合は作業部屋のような造りにしたり、ショールームの様にガラス張りにして家の中から眺められるようにしたりするなど様々な活用方法があります。
- 防犯性が高く周囲の目線が気になりにくい
- 天候が悪い日の車からの乗り降りや荷物の出し入れの負担が少なくなる
- 車やバイクが趣味の場合、室内から眺められ手入れもしやすい
高橋 良彰車から屋内への動線が短くなり利便性が高い一方で、排気対策のための換気経路の確保が必須です。また、面積だけでなく騒音対策の意味でも居室の配置には気を遣う必要があります。
防音室|楽器演奏や映画鑑賞に便利
防音室は、室外に音が漏れないことを目的につくられた防音性の高い部屋です。主に楽器演奏や映画鑑賞などの用途で導入されます。
壁と天井に吸音材や遮音材を使用し、外部からの音の遮断性も高くなるため集中するにはぴったりの環境です。
- 大きな音が出る趣味や作業を周りを気にせず集中して行える
- 楽器演奏などを行いたい時、外部で練習場所を借りなくても自宅で練習環境を用意できる
高橋 良彰防音室を設置する場合、生活空間から適度に離れた位置が望ましいです。
用途にもよりますが防音設備はそれなりに高額であり、部屋が大きくなるほど費用がかさむ点には注意しましょう。
中庭|屋内にいながら光や緑を楽しめる
中庭は建物や壁の間にある庭で、一戸建てではロの字型やコの字型、またはL字型の建物や外塀で囲まれた庭を指します。
家の中に開放感が生まれるだけでなく、外で行う趣味を人目を気にせず楽しむことも可能になるでしょう。
- 中庭に窓が面した部屋が自然光により明るく開放的な雰囲気になる
- 中庭に植栽を取り入れると、屋内にいながら緑を楽しむことができる
- 周りを建物で囲まれているため、人目を気にせず屋外で行う趣味や作業を行うことができる
高橋 良彰中庭の設置にはそれなりに広い面積が必要です。あまり場所は取れないけれど中庭のような機能が欲しいという場合には、1~3坪程度の坪庭を設置するという方法もあります。
どちらにしても排水設備や植栽の手入れなどの定期的なメンテナンスは必要です。
屋上|日光浴やガーデニングも楽しめる
屋上は、建物の最上階の屋根の上に設けられた平らな空間です。
眺望を楽しみながら洗濯物を干したり日光浴をしたりガーデニングなどの趣味を楽しんだりすることができます。
- 敷地面積に制約がある中で、新たな空間が生み出せる
- 人目が気になりにくい専用の外部空間を確保できる
- 日光浴や読書、ガーデニングなど趣味の場として利用できる
高橋 良彰屋上には屋根の全面が屋上になっているタイプや一部だけのタイプなど様々な形態があります。用途や生活様式に合わせてどの形態にするか検討しましょう。
④収納を重視する人におすすめ
「収納が足りない」「物が片付かない」という悩みは、多くの家庭が抱える課題です。以下で、生活空間を広く使うことができ、日々の片付けが楽になる設備を2つ紹介します。
土間収納|アウトドア用品も保管できる
土間収納は、靴を脱がずに利用できる玄関の一角に設けられた収納です。屋外で使用する、外に出しっぱなしにしておくのは不安な道具の収納などに便利です。
家族が多く靴がたくさんある家庭では靴箱を土間収納に設置すると玄関を片付いた状態で保つことができます。
- 玄関をきれいな状態に保てる
- 外で使ったものを汚れを気にせず収納できる
- 高価なアウトドア用品なども風雨による劣化や盗難を心配せず収納できる
高橋 良彰土間収納に扉を設置する場合は、開き戸より折れ戸や引き戸が便利です。そもそも扉を設けない場合も多いですが、どうしても気になる場合はロールスクリーンなどで目隠しするのも一案です。
匂いがこもるのを防ぐために、換気のための小窓や換気扇を設置する場合もあります。
ウォークインクローゼット|整理整頓が楽になる
ウォークインクローゼットは人が立ち入れる広さがある大型の壁面収納で、クローゼットの内部に入って衣服を選ぶことができます。
可能であれば家族全員にそれぞれ用意できると、非常に利便性が高くなるでしょう。
- 内部が立ち入り可能なので、中の整理整頓がしやすい
- 季節物の大量の衣類も余裕を持って収納することが可能になる
- 扉を閉めれば中の荷物が見えなくなるため、見目の良い空間が保たれる
高橋 良彰ウォークインクローゼットは一般的なクローゼットよりも広いため、衣類・靴・鞄・アクセサリーなどを整理しやすく、より効率的に保管できます。部屋の見た目がすっきりしますし、棚などを自由に配置できるので、自分好みに収納場所をカスタマイズすることができます。
⑤リモートワーク・テレワークの設備を重視する人におすすめ
「自宅で仕事をする機会が増えた」という人には、仕事専用のスペース確保が欠かせません。家族との距離を保ちながら集中できる書斎は、在宅勤務の質を高める重要な設備です。
書斎|作業に専念できる
書斎は、読書や勉強・仕事などに専念できるよう設けられた個室です。在宅しながら仕事をする時のリモートワーク・テレワークルームとして利用するために設置する人も増えてきています。
自分らしく居心地の良い環境作りができれば、作業効率の向上に大きく寄与するでしょう。
- 家族の生活音から切り離された静かな環境が作れる
- 作業に専念できるので、意欲的な状態の維持が期待できる
- オンライン会議の時にも、周りを気にせず集中できる
高橋 良彰専用の部屋を用意できない場合は、リビングの一角などにちょっとした仕切りのあるワーキングスペースを設けるという方法もあります。
⑥将来柔軟に対応できる間取りを重視する人におすすめ
家族構成やライフスタイルは時間とともに変化していくものです。子供が小さいうちは広々と使い、成長に合わせて個室に分けられる子供部屋なら、将来のリフォーム費用を抑えられます。
間仕切りで仕切れる子供部屋|部屋を柔軟に使える
間仕切り可能な子供部屋は、中間位置にあらかじめ間仕切り用の工事をし、扉を2つ用意しておきます。最初は一つの広い子供部屋として使用し、子供が大きくなったら間仕切りを設置して二つの個室に分割する設計です。
柔軟に間取りを変更することで、1つの部屋を様々に使うことができます。
- 子供が乳幼児期は広々とした空間で過ごすことができ、成長したら個室で過ごすことができる
- 居室を2つ用意する十分な面積がない場合でも子供に個人の空間を用意できる
- 子供が独立した後には、再び間仕切りを外し一つの広い部屋として使用できる
高橋 良彰仕切ることを想定していない部屋に子供が大きくなってから間仕切り工事をするより、最初から仕切ることを想定して作った方が経済的な負担は少なくなります。
注文住宅の間取り成功例15選!実例から学ぶ部屋の間取りの決め方

部屋をいくつ用意するかは間取りを決める上で重要な要素ですが、家族の人数やライフスタイルによって必要な部屋の数や配置は変わってきます。
以下で、2LDK・3LDK・4LDKに分けておすすめの間取りを15個紹介しますので、自分たちが必要としている部屋数に近い実例を参考にしてください。
分類の補足として、数字とLDKを組み合わせた「〇LDK」という表記の仕方ですが、LDKはリビング・ダイニング・キッチンの略でリビングとダイニングとキッチンの3つが1部屋に集まっている間取りを指します。数字が前に付く場合、その数字はLDK以外の居室の数を表しています。
一見すると前に付いている数字が大きいほど家の面積が広いように感じられますが、家の中にあるのはLDKと居室だけではありませんから、4LDKの住宅より2LDKの住宅の方が広いこともあります。以下の紹介では坪数(延床面積)も表記していますので、合わせて確認してみてください。
居室の定義について詳しく見る
居室は建築基準法第二条において「居住、執務、作業、集会、娯楽その他これらに類する目的のために継続的に使用する室」として定められており、一般の住宅の場合には「リビング」「キッチン」「寝室」が当てはまります。LDKのある間取りではリビングとキッチンはLDKの括りに入りますから、「〇LDK」の数字部分は「寝室として利用できる部屋」の数として見ることもできます。
居室は広さについての定義がありませんので、居室として書いてあるからといって「〇畳以上」が保証されているということはありません。ただし、建築基準法第二十八条によって採光と換気についての基準は設けられているため、基準を満たす窓などの開口部がなければ居室と呼ぶことはできません。例外として地下室を居室として使用する場合採光の基準は適用されませんが、別途衛生上の基準を満たす必要があります。
玄関・トイレ・浴室・脱衣室・洗面所・押入れ・納戸・廊下などはLDKにも居室にも当てはまりませんので、「〇LDK」という表記のみではどのような広さか・そもそも存在するのかを判断することはできません。
DKとLDKの違いについて詳しく見る
DKはダイニング・キッチンの略で、ダイニングとキッチンが1部屋になっているものです。LDKとの違いはリビングがあるかないかということになりますが、どの程度の広さがあればリビングとして扱われるのでしょうか。
不動産公正取引協議会連合会の定める「不動産の表示に関する公正競争規約」によれば、DKとLDKの定義はそれぞれ以下のようになっています。
- DK
-
台所と食堂の機能が1室に併存している部屋をいい、住宅の居室数に応じ、その用途に従って使用するために必要な広さ、形状及び機能を有するものをいう。
- LDK
-
居間と台所と食堂の機能が1室に併存する部屋をいい、住宅の居室数に応じ、その用途に従って使用するために必要な広さ、形状及び機能を有するものをいう。
この定義によれば、DK・LDK以外の居室の数によってDK・LDKと表記する場合に必要な広さが変わってくるということになります。
この居室数と広さの関係については「不動産の公正競争規約集」で言及があり、以下の様に定義されています。
| 居室数 | DK | LDK |
| 1部屋 | 4.5畳 | 8畳 |
| 2部屋以上 | 6畳以上 | 10畳以上 |
DK・LDK以外の居室が1部屋しかない場合は4.5~7畳までがDK、8畳以上の広さがLDKという表記になり、DK・LDK以外の居室が2部屋以上ある場合は6~9畳までがDK、10畳以上の広さはLDKということになります。DKに満たない広さの場合は単にK(キッチン)と表記します。
S・N・DEN・WICについて詳しく見る
間取りを調べていると、S・N・DEN・WICといった記号を目にすることがあります。これらはすべて略称で、Sはサービスルーム・Nは納戸・DENは書斎・WICはウォークインクローゼットです。共通しているのは「居室としての採光や換気の要件を満たしていない部屋」であるという点です。ウォークインクローゼットについては専用の構造をしていることが多いですが、サービスルーム・納戸・書斎については間取りに使われている場合ほぼ同義語のことが多いでしょう。
居室の要件に広さの定義はありませんので、場合によっては6畳あるサービスルームというものも存在します。
2LDKの成功例5選

夫婦2人で暮らす、回遊性と適材適所の収納にこだわった快適な住み心地の間取りです。立地は周囲を建物に囲まれた旗竿地ですが、プライバシーは守りつつ採光にも配慮した明るい家になっています。



- 延床面積
-
27.86坪
- 設計・施工
-
グリーンハウザー
3LDKの成功例5選

夫婦2人と子ども1人で暮らす、最短距離で家事が完結できるL字型の平屋の間取りです。広いリビングとモノトーンのデザインが流行に左右されない大人の雰囲気を演出しています。



- 延床面積
-
31.36坪
- 設計・施工
-
ケイセイホームズ
4LDKの成功例5選

夫婦2人と子供3人で暮らす、見せる収納と隠す収納のバランスを調整して空間をデザインした間取りです。内装や家具にもこだわり、自然素材を感じるカフェのような仕上がりになっています。



- 建築費(本体価格)
-
1,000〜1,500万円
- 延床面積
-
32.6坪
- 設計・施工
-
アットナチュレ
5LDKの間取りを見たい方は、以下の記事をご覧ください。

また、坪数を基準にしたい方には「30坪のおしゃれな間取り10選!」と「40坪の間取り成功実例」の記事がおすすめです。ぜひ、本記事とあわせて参考にしてください。
注文住宅で取り入れたい世帯別の間取り4選

自分たちにぴったりの注文住宅の間取りは、家族の人数だけでなく、世帯の形によっても変わってきます。以下で①子育て世帯②シニア世帯の2つの形に分けておすすめの間取りを紹介します。
①子育て世帯で取り入れたい間取り
子育て世帯には、子供の安全と親の利便性を両立できる空間があると便利です。親の目の届く範囲で子供が自由に遊べる専用エリアや、多目的に使える広めの共有スペースがあれば、年齢や状況に応じて柔軟に活用できます。
高橋 良彰子供の安全面を考えた、安心できる設計です。また、子供の成長に合わせて空間の用途を変更できるのは、注文住宅ならではの大きなメリットだと言えます。
高橋 良彰限られた面積を有効活用できる上、家族のコミュニケーションと絆を深める役割も期待できる空間です。
②シニア世帯で取り入れたい間取り
高齢になっても安心して暮らせる住まいには、バリアフリー設計が欠かせません。玄関の昇り降りを楽にする緩やかなスロープや、車椅子使用時や介助者が付き添える広さを確保したトイレは、日常生活の安全性と自立度を高めてくれるでしょう。
高橋 良彰スロープの勾配は建築基準法とバリアフリー法でそれぞれ基準が設けられています。バリアフリー法の方が車椅子利用者が自力で登れる限界の勾配を考慮した厳し目の基準です。
勾配が緩やかになるほど長いスロープが必要となり、設置場所の確保が重要になります。
高橋 良彰設置する場合は専門家に相談し、車椅子利用者の実際の利便性を考えた設計をすることが大切です。狭小住宅への設置は難易度が高まりますが、対応可能な範囲で工夫を重ねることはできます。

注文住宅の間取りの決め方で後悔しないためのQ&A【一級建築士監修】
注文住宅の成功例やアイデアを見て「これを取り入れよう」と考えても、実際に計画を始めると本当に自分たちに合った間取りなのか不安になる人もいるのではないでしょうか。
以下で、注文住宅の間取りで後悔しないためのポイントについて、一級建築士の高橋さんの監修のもとQ&A形式で紹介します。
注文住宅の間取りを決める時は成功例を参考にしっかり計画を立てよう
本記事では、注文住宅で理想の間取りを実現するための流れやコツから参考になる実際のアイデア、気になるポイントのQ&Aを紹介しました。 自由度の高い注文住宅だからこそ、失敗や後悔を避けるために事前にしっかりと計画することが重要です。
計画する時は、細かな設備や間取りを決める前に何を重視するかの指針を建てておきましょう。指針を決めずに漠然とした考えだけで建築会社を決めてしまうと、建てた後に後悔することになってしまうかもしれません。
建築会社の担当者にうまく要望を伝えられるか不安な場合は、インターネットや情報誌で参考写真を探してチェックしておいたり、事前に間取り作成アプリなどでシミュレーションしたりしてイメージを固めておき、それを一つにまとめておくと話がしやすくなります。
高橋 良彰建築計画を立てはじめ、どのような間取りにするか検討するにあたって、建築会社によっては事前にヒアリングシートや住宅調書を建て主さんに書いてもらうケースもあります。
そういったものを利用して、事前に一旦自分たちの要望をまとめて見直してみることも大切です。
要望を整理し、担当者としっかりコミュニケーションを取って、自分たちの生活様式に合った快適な住まいを実現してください。



IECOCORO編集部
群馬・栃木・宮城・山形で注文住宅の情報誌「IECOCORO(イエココロ)」を発行する編集部。WEBサイト「自慢の注文住宅集めました。」では、地域の工務店情報のほか、多数の建築実例とイベント情報を紹介しています。
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イエココロのWEBサイト「自慢の注文住宅集めました。」では、群馬・栃木・宮城・山形を中心とした工務店情報やモデルハウス情報のほか、多数の「建築実例」を紹介しています。お近くにお住まいの方は、ぜひチェックしてください。

















































