「注文住宅って、どういう流れで建つの?どれくらいの期間が必要なの?」
そんな疑問を持っている人は多いのではないでしょうか。 この記事では、注文住宅を検討している人へ向けて、建つまでの流れや期間を9つのステップに分けて解説します。
さらに、支払いのタイミングも紹介しますので、「急な支払いでお金が用意できない」なんてことを回避できます。 スムーズな家づくりを実現するために、ぜひ参考にしてください。
IECOCORO編集部
群馬・栃木・宮城・山形で注文住宅の情報誌「IECOCORO(イエココロ)」を発行する編集部。WEBサイト「自慢の注文住宅集めました。」では、地域の工務店情報のほか、多数の建築実例とイベント情報を紹介しています。
注文住宅が建つまでの流れと期間は?
注文住宅は、考え始めてから引き渡しまでには9つのステップがあり、一般的に9ヶ月~1年ほどかかります。ただし、土地や建築会社を探すのに時間がかかったり、打ち合わせ回数が増えたりすると期間が長引くこともあります。個人差があるため、あくまで目安として参考にしましょう。
「子どもの入園や入学に合わせて建てたい」など、希望の時期がある場合には逆算して早めに動くことをお勧めします。
家づくりをするタイミングはいつがいい?
家を建てる時期を決める基準の1つは「子どもの成長」です。なかでも、「子どもが小学校に入学する前」に建てる人が多いそうです。その理由として、学区を気にせずに土地を探せるほか、教育費などの支出もあまり多くないため、費用を準備しやすいことが挙げられます。
また、住宅ローンを組むことを考えると、年齢的には「30代前半」が良いタイミングです。ローンの審査では返済を終える年齢も重視され、多くの金融機関が70~80歳を基準としています。一般的に返済期間は35年のため、余裕のある返済計画を立てるには最適な年齢と言えるでしょう。
注文住宅の流れ 9ステップ
全体の流れを把握したところで、次に各ステップごとにやるべきことや注意点を解説していきます。
家のイメージづくり、希望の整理
まずは、家族それぞれの考えを整理することから始めます。「自分の部屋がほしい」「リビングは吹き抜けにしたい」など、はじめは予算や条件などは深く考えず、楽しみながら自由に話し合うことをおすすめします。なかなか思いつかない場合は、今の住まいに対する不満点を挙げてみると、必要なスペースや設備が見えてくるかもしれません。
話し合いが終わったら、意見をまとめた「家づくりノート」を作りましょう。
家づくりノートの作り方、活用方法
「打ち合わせ中に家族の意見が食い違い、必要なものが増えて見積もりの金額が高くなった」というケースは珍しくありません。そこで活躍するのが「家づくりノート」です。このノートがあれば、担当者に希望を具体的に伝えられるため、スムーズに話を進めることができます。
- できるだけたくさんの考えや要望を書き出す
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家族の行動パターンや家での過ごし方、趣味や興味のあることまで、家に対する考えや希望をできるだけ書き出します。全て書き出したら、実現したい順に優先度を決めておきましょう。
- デザインの要望はビジュアル化する
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雑誌を切り取ったり、インターネットやSNSで見つけた画像をプリントしたりして、ノートに貼りましょう。スマートフォンに保存するのでも構いません。「いつでも見せられる状態」にしておくと、打ち合わせで担当者とイメージの共有がすぐにできます。
- モデルハウスの感想を書いておく
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リビングの広さや水回りの動線、間取りの工夫など、モデルハウスを見学した感想を書き留めておきましょう。真似したい部分などを書いておくと、間取りを考える際の参考になります。
- 打ち合わせを記録する
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打ち合わせで話したことやアドバイスを記録しましょう。そうすることでよく起こりがちな「言った・言わない」のトラブルを回避できます。気になった点や確認したいことも書いておけば、次回の打ち合わせに活かせます。
家づくりノートは、家のイメージを「目に見える形にする」ためのツールです。打ち合わせでもらった間取り図やイラストなども一緒に保管すれば、家を建てた後には思い出にもなるでしょう。
ここがポイント!
「住みたい家」のイメージを、どれだけ具体的に伝えるかがポイントです。注文住宅を建てて実現したいことを、とことん追求しましょう。ただし、全てを叶えるには相応のお金が必要です。希望は「譲れないこと」と「妥協できること」に分け、優先順位をつけておきましょう。
予算計画を立てる
家のイメージが固まったら、次に予算を決めます。イメージづくりと並行して行うのも良いでしょう。
予算を考えるときには、金額はもちろん、「何にお金が必要か」「どうやって用意するか」を検討することが大切です。まずは注文住宅を建てる費用の目安と内訳を見てみましょう。
費用の目安
住宅金融支援機構の「フラット35利用者調査(2022年)」によると、注文住宅を建てる費用の全国平均は、土地を購入して建てるケースでは4,694.1万円、所有する土地に建てるケースでは3,716.7万円でした。
そのうち、土地代は1,499.5万円ですが、土地の価格は地域によって大きく異なります。なかでも、東京や都市部は高い傾向があるため注意が必要です。
費用の内訳
注文住宅の費用は、土地と建物にかかる費用だけではありません。手続きの手数料や新居への引っ越し費用などの「諸費用」も必要です。
費用内訳 | 内容 | |
---|---|---|
土地代 | 土地の購入費用 | |
建築費用 | 本体工事費 | 建物本体の工事にかかる費用 |
付帯工事費 | 庭や駐車場など、建物以外の工事にかかる費用 | |
諸費用 | 引っ越し費用など、建築工事以外にかかる費用 |
このなかで、工事費と諸費用の割合は「本体工事費 約70%」「付帯工事費 約20%」「諸費用 約10%」 が目安と言われています。
「本体工事費 2,100万円」「付帯工事費 600万円」「諸費用 300万円」が各費用の目安です。
予算を配分することで、注文住宅を建てるときに「何にいくら必要か」がわかります。予算オーバーを防ぐためにも、予算計画は内訳まで具体的に考えることが大切です。
ここがポイント!
予算を配分すると、「何にいくら必要か」が明確になります。事前に把握してから予算計画を立てるようにしましょう。特に「諸費用」は見落としがちです。また、基本的に現金で支払うことが多いため、予め用意しておきましょう。
また、費用については別の記事で詳しく解説しています。ぜひ、併せてご覧ください。
土地探し、建築会社選び
予算を決めたら、次に土地や依頼先の建築会社を探します。WebサイトやSNSを参考にする人は多いでしょう。しかし、画像を見るだけではわからないこともたくさんあります。気になる土地やモデルハウスには足を運ぶなど、行動を起こすことが、自分に合う土地や会社を見つける近道です。
すでに土地を持っている人は、建築会社を探しましょう。依頼したい会社が見つかったら「STEP5.プラン・見積もり比較、建築会社決定」へ進んでください。
土地探し
土地の購入から始める場合は、不動産情報サイトで相場を見て、予算と希望に合う土地を探していきます。不動産会社に条件を伝えて、良い土地が出たら連絡をもらえるようにするのも良いでしょう。
気になる土地が見つかったら、実際にその場所へ行ってみましょう。通勤・通学、買い物の利便性、交通量や騒音などの周辺環境は画像を見るだけではわかりません。必ず自分の五感でチェックしましょう。
また、ハウスメーカーや工務店のなかには、土地探しをサポートしてくれる会社もあるため、そちらを活用する方法もおすすめです。自社で扱っている「建築条件付き土地」を紹介してもらえたり、希望に合う土地を探してくれたりします。そのため、土地探しと建築会社選びは同時に進めると良いでしょう。
建築条件付き土地とは
家を建てるときのハウスメーカーや工務店が指定されている土地のことです。工事を請け負う会社が保有する土地に多く見られます。土地と依頼先を別々に探す手間が省けるうえ、土地の価格も比較的安い傾向があるため、「少ない手間でお得に建てたい」と考える人にはおすすめです。
建築会社選び
建築会社には、全国展開する「ハウスメーカー」、地域密着型の「工務店」のほか、設計を担う「設計事務所」があります。それぞれの特徴を知り、自分に合う建築会社がどこなのか考えてみましょう。
すべてがシステム化された 安心の家づくり
インターネットやテレビ、住宅展示場などで幅広く広告活動を行い、全国に営業展開しています。部材の生産から設計・施工に至るまでシステム化されており、どこで建てても安定した品質と性能の「規格型住宅」が得意です。
- 担当者
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営業担当、設計者、現場管理と移り変わる。それぞれの担当者に、要望がきちんと伝わるように気を付けたい。
- 契約方法
-
設計・施工を一括して「建築工事請負契約」をかわす。設計については「重要事項説明」を受け、設計・監理契約を別にかわすこともある。
- 工期
-
部材の工場生産により短期化されている。一般的工期は3~6ヶ月ほど。
- 設計
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品質面は安定しており、性能面も信頼できる。ただし、コストダウンのアイデアがあまりない。
- コスト
-
「標準仕様+オプション」というシステムが多く、個性的な家を目指すとコストは高くなる。
- 保証
-
瑕疵(かし)保証や定期点検など一般的な保証はクリアしている。また、独自のメンテナンスやサービスを展開していることも。
瑕疵(かし)とは
きずや欠陥のことです。注文住宅の場合は「建てたばかりの家なのに、壁にひびがある」「住み始めたばかりなのに雨漏りがする」など、「住宅として備わっているべき性質(品質)が欠けていること」を指します。
瑕疵保証とは、そのような欠陥が見つかった場合に、施工した業者が建てた人に対して修繕費用を保証することを言います。
依頼先を探すときには、知っているハウスメーカー以外にも様々な会社を比較することが大切です。デザインや性能など、自分の求める条件に合う会社をいろいろ見てみましょう。いくつか候補を絞ったら、ホームページを見るだけではなく、資料請求をしたり、モデルハウスへ訪れたりして情報を集めましょう。
モデルハウスの見学、イベントへの参加がおすすめ
気になる会社を見つけたら、モデルハウスやイベントへ足を運びましょう。
特に、夏や冬のモデルハウス見学がおすすめです。暑い日や寒い日はエアコンの効果を確認するのに最適で、その会社の性能への取り組みがチェックできます。断熱性や気密性のことはよくわからなくても、実際に肌で感じてわかることもあるでしょう。
さらに、入居前の家を見学できる「完成見学会」や家づくりの悩みを話せる「相談会」などのイベントには、積極的に参加しましょう。実際に建てた人の「生の声」や専門家の意見は、きっと役に立つはずです。
会場では、会社のスタッフと話す機会もあると思います。もし、相談してみて無料の見積もりや間取りの作成に対応してくれる場合には、依頼してみるのも良いでしょう。
ここがポイント!
土地探しと建築会社探しは並行して行うことをおすすめします。特に土地が見つからない場合には、ハウスメーカーや工務店に相談してみましょう。扱っている土地の紹介が受けられたり、希望の条件に合った土地を探してくれたりすることがあります。また、WEBサイトやSNSを見ているだけではわからないことがたくさんあります。自分に合う土地や会社を見つけるためには、行動を起こすことが大切です。
土地の売買契約
購入する土地を見つけたら、売買契約をかわします。一般的には、この契約時に土地代の5~10%ほどの手付金を支払います。そのほか、仲介手数料や印紙代などの諸費用がかかります。また、手付金を除いた土地の残金は土地の引き渡し時に支払うため、必要なお金と支払いのタイミングを確認しておきましょう。
ここで覚えておきたいのが、土地の購入には住宅ローンを利用できないということです。住宅ローンは、「完成した家」を担保にしてお金を借りるため、完成しないと融資が始まりません。土地代を自己資金で払えない場合は、「つなぎ融資」の利用を検討しましょう。
「つなぎ融資」については、支払いや住宅ローン審査のタイミングで解説しますので、ぜひご覧ください。
ここがポイント!
土地の売買契約時には、5~10%ほどの手付金を支払います。ほかにも、印紙代や不動産会社を通じて購入する場合は仲介手数料などの諸費用が必要です。また、「土地の購入」には住宅ローンが利用できないため、注意してください。
プラン・見積もり比較、建築会社決定
ここまで進むと、モデルハウスなどの見学を通じて、依頼先は大体決まっている頃でしょう。もし気になる会社がたくさんある場合は、数社に絞ります。そして候補の会社にSTEP1でつくった家のイメージを伝え、「簡単な間取り図」「概算の見積もり」「資金計画書」の作成を依頼してください。
ただし、1社ではなく、いくつかの会社に依頼する場合は、必ず「他の会社も検討していること」を伝えましょう。複数の会社に見積もりを出してもらうことを「相見積もり」と言いますが、会社によっては作成を断られる可能性があります。
また、最終的には依頼先を1社に決めなければなりません。建築を断る会社には、早めに連絡するようにしましょう。
ここがポイント!
依頼先を決めるのはなかなか難しいものです。複数の会社で悩む場合には、同じ条件で「間取り図」や「見積もり」を依頼して比較しましょう。ただし、その際は他社も検討していることを伝えて了承を得ることをおすすめします。最終的に断ると判断したら、早めの連絡を心がけましょう。
工事請負契約
依頼先が決まったら、建築会社と工事請負契約をかわします。工事請負契約は、「施工する会社が家の完成を約束し、依頼人が完成した家に対して報酬を支払うことを約束する」ものです。契約をかわす際には「希望の仕様・設備が揃っているか」「何にいくら費用がかかっているか」「キャンセルや変更はいつまで可能か」など、疑問がなくなるまで、内容をしっかり確認しましょう。
また、この時点で手付金(建築費用の10%ほど)を支払うこともあります。キャンセル時の手付金の扱いなどについても、担当者に確認すると良いでしょう。
ここがポイント!
工事請負契約をかわせば、本格的に家づくりが始まります。そのため、詳細を明示せずに契約を急かすような会社は避けた方が賢明です。契約内容は、仕様や設備、費用などをはじめ、キャンセルや変更時の対応まで、見落としがないようにしっかり確認しましょう。
詳細の打ち合わせ、プラン決定
工事請負契約をかわした後は、より詳細な打ち合わせをして、間取りや工期などの建築プランを決定します。
- 間取りの詳細
- 建材・建具・住宅設備、内装・外観デザインなどの決定
- 着工日や地鎮祭などの日取り
- 住宅ローン本審査などの確認
プランが決定したら、着工前に建築会社は「建築確認申請」を進めます。自治体から「建築確認済証」が交付されれば、着工可能になります。
建築確認が済んだ後にプランが変わる場合は、変更契約が必要になります。よくある変更として、住宅設備の追加やグレード変更などがあります。また、間取りや面積、窓の高さや位置などが変わった場合には、建築確認の再申請が必要なケースもあります。追加の費用がかかるうえ、工期が長くなることがあるため注意が必要です。何をいつまで変更できるのか、確認しておくと良いでしょう。
ここがポイント!
最終プランは必要なものがすべて揃っているか、間違いがないか、念入りに確認しましょう。建築確認申請後には変更できないこともあります。また、再申請になった場合、費用も時間も余計にかかります。万が一に備え、変更可能な内容と期限を確認しておきましょう。
着工
いよいよ着工です。「あとは家が完成するのを待つだけ!」と言いたいところですが、着工前後にもやることがあります。
- 着工前にやること
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- 近隣へのあいさつ回り
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工事が始まると、重機の通過による通行止めや騒音により、近隣住民へ迷惑をかける可能性があります。住み始めてからの付き合いも見据え、良好な関係を築くためにも必ず行いましょう。あいさつ回りは地鎮祭当日が良いタイミングと言われています。地鎮祭を実施しない場合は、工事日程を確認して、工事が始まる前に予定を組みましょう。
- 地鎮祭
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工事が無事に終わるように、神主を招いて安全を祈願する儀式です。実施するかどうかは依頼主の希望次第です。
- 着工後にやること
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- 上棟式
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木造で家を建てる場合、柱や梁を組み立てた後、屋根の一番高い位置に棟木(むなぎ)という横架材が取り付けられることを上棟や棟上げといいます。その上棟が無事に済んだことをお祝いするとともに、最後まで安全に工事が終えられるように祈願する儀式です。地鎮祭と同じく、実施は依頼主の希望次第です。
- 工事の進捗状況の確認
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着工後は、積極的に現場へ足を運びましょう。日に日に家が建っていく様子を見るのは楽しいですし、進捗状況も確認できます。また、現場の人と良好な関係を気づくことも大切です。時には差し入れなどをして、感謝の気持ちを伝えることも心がけると良いでしょう。
- 現場での打ち合わせ
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建築会社によっては、現場での打ち合わせをすることがあります。図面ではわかりにくい棚や手すりの高さ、コンセントやスイッチの位置など細かい部分の擦り合わせが主な内容です。毎日使うものの使いやすさは、暮らしやすさに繋がります。しっかりと確認しましょう。
着工してからは新居での生活の準備はもちろん、工事が予定通り進んでいるか、状況を確認することも大切です。また、工事内容と図面に違いがないか確認することも重要です。特に、現場での打ち合わせがない場合には、コンセントの位置や窓の高さなどの細かい点について確認すると、後のトラブルを回避できるでしょう。
ここがポイント!
「ご近所とのお付き合い」と聞くと、どこか古臭さを感じる人もいるかもしれません。しかし、住み始めてから何かに困ったときのためにも、良い人間関係を築いておいて損はありません。また、着工後はたびたび工事現場に通い、工事内容や進捗の確認をするようにしましょう。
竣工、引き渡し
工事が完了することを竣工(しゅんこう)と言います。竣工後は、自治体への申請通りに建てられているかどうかをチェックする「完了検査」を受け、問題がなければ「検査済証」が発行されます。
また、引き渡しの前には図面通りに建てられているか、設備の不具合やキズがないかなどを、施主が立ち会ってチェックします。気になる箇所があれば、この時点で直してもらいましょう。引き渡しが済んでから指摘した場合、追加で工事費用が発生することがあります。
引き渡し日に住宅ローンが実行され、建物の残金を支払います。入居が可能になった後、引っ越しを済ませれば新居での生活がスタートします。
ここがポイント!
引き渡し前の立ち合いでは、キズや汚れ・設備の動作・ドアなどの建具の動きや向き・コンセントの数や位置など、隅々までチェックしてください。気になることはその場で質問や確認をして、直してほしい箇所ははっきりと伝えるようにしましょう。
支払いや住宅ローン審査のタイミング
注文住宅を建てるときには、複数のタイミングで費用の支払いが発生します。 主な支払い内容と金額の目安を把握しておき、お金の準備をしておきましょう。
タイミング | 支払い内容 | 金額の目安 | 利用できるローン |
---|---|---|---|
土地の売買契約時 | 手付金 | 土地価格の5~10% | つなぎ融資 |
土地の引き渡し時 | 土地の残金 | ― | |
工事請負契約時 | 手付金 | 建築費用の約10%(最高10%) | |
着工時 | 中間金 | 建築費用の約30% | |
着工中 | |||
竣工時 | 建物の残金 | 住宅ローン |
「STEP4.土地の売買契約」でも書きましたが、土地の購入に住宅ローンは利用できないことを理解しておきましょう。そのため、土地を自己資金で購入できない場合には、つなぎ融資を利用して支払うことが多いです。予算を計画するときに、「どうやってお金を用意するか」について考えておくと良いでしょう。
つなぎ融資は、土地の手付金や購入費、着工金・中間金などを自己資金で賄えない場合に利用する融資のことです。引き渡し後、住宅ローンの本融資が実行された際に一括で返済し、一本化します。住宅ローンの本審査に通っていれば無担保で借りられるため、自己資金が少なくても安心して家を建てられるのがメリットです。しかし、注意点があります。
- 無担保融資のため、一般的に金利は高め
- 住宅ローンとは別に契約するため、「印紙代」や「事務手数料」などの諸費用がかかる
- 工期の延長などで利用期間が長くなると、利息分の負担が増える
- すべての金融機関で取り扱っているわけではない
つなぎ融資は、住宅ローンとセットで利用するのが一般的です。利用を検討する場合は、金融機関が対応しているかどうか、対応していない場合に別の制度があるかを確認しておきましょう。
住宅ローンの「つなぎ融資」については、一般財団法人 住宅金融普及協会の「代表的な住宅ローン(つなぎ融資)」でわかりやすく説明されています。利用したい場合は、一度確認することをお勧めします。
住宅ローンの審査をいつするか
住宅ローンを受けるには「事前審査」と「本審査」に通らなければなりません。それぞれどんな審査なのか、そして必要な書類や審査を受けるタイミングについて解説します。
事前審査
住宅ローンを正式に申し込む前に、返済能力などを判断する審査です。具体的に何を審査されるのか見ていきましょう。国土交通省の調査結果から、9割以上の金融機関が審査項目として挙げているものをまとめました。
グラフから、完済時年齢や健康状態、借入時の年齢などがチェックされていることがわかります。つまり、「安定して返済を続けられるか」という返済能力が重視されていると言えます。
そのため、信用情報に傷がある場合や、住宅ローン以外の借り入れがあると審査に落ちることがあります。クレジットカードの支払いを遅れずにすることはもちろん、注文住宅を建てる前には車などの高価な買い物は控えると良いでしょう。
信用情報とは
クレジットやローンの契約や申し込みに関する情報のことで、客観的な取引事実を登録した個人の情報です。多重債務者の発生を予防し、消費者の信用力を判断する材料として活用されます。クレジットカードや分割払いの支払いが遅れたり、滞ったりすると情報がブラックリストに登録されることがあります。登録された場合、5~10年ほどの一定期間で消えますが、ローンの審査に影響するため注意しましょう。
参考:CIC(信用情報機関)「信用情報とは」
また、審査に必要な書類は以下の通りです。申し込みをスムーズに行うためにも、本人確認や収入に関する書類は早めに用意しておくことをおすすめします。
本人確認書類 | ・運転免許証またはパスポート ・健康保険証など |
物件資料 | ・建築費などが記載された見積書 ・建物の図面 ・土地の所在地がわかる資料 |
収入を証明する書類 | ・源泉徴収票 ・確定申告書の控え(個人事業主の場合) |
事前審査のタイミングは、土地の有無や自己資金の状況によって異なります。土地の支払いに「つなぎ融資」を利用する場合は「STEP4.土地の売買契約」の前に済ませておきましょう。土地の購入がない、または融資を受けない場合には、「STEP5.プラン・見積もり比較、建築会社決定」で依頼先を決めた後の申し込みでも問題ありません。
本審査
事前審査に通った後は本審査です。主に返済能力が重視された事前審査とは異なり、本審査では年収やこれから建てる家の担保価値、団体信用生命保険に加入できる健康状態かなど、より詳細にチェックされます。
また、本審査には「工事請負契約」や自治体から交付される「建築確認済証」の写し、最終的な設計プランの資料が必要です。「STEP7.詳細の打ち合わせ、プラン決定」後、速やかに審査の手続きを進めましょう。ただし、事前審査後に転職したり、他ローンの借り入れ状況に変化があったりすると、本審査を通らないこともあるので注意が必要です。
団体信用生命保険とは
住宅ローンの返済中に契約者が亡くなったり、重大な障害を負ったりして支払いができなくなった場合に、住宅ローンの残高を保険金で完済する制度のことです。住宅ローンの借り入れ、もしくは借り換えの際にのみ契約可能です。また、健康状態によっては加入できない場合があります。団信の加入が任意の住宅ローンもありますが、ほとんどの金融機関では加入が必須条件となるため、覚えておきましょう。
注文住宅で失敗しないために
ゆとりのある予算計画を立てよう
注文住宅を建てる費用は、土地と建物にかかるものだけではありません。何にいくらかかるか、費用の内訳をきちんと考えて、ゆとりのある予算計画を立ててましょう。また、注文住宅を建てるときには支払いのタイミングが複数回訪れます。支払いのタイミングと内容を把握して、「自己資金で支払う」か「つなぎ融資を利用する」か判断しながら計画をすると良いでしょう。
工事請負契約の前に内容をしっかり確認しよう
契約をかわすと簡単には変更できないこともあります。「希望・条件に合った間取りか」「見積もりが間違っていないか」など、細かい点までしっかりと確認してください。念のため、契約後にキャンセルする場合の条件なども確認しておくと良いでしょう。
また、打ち合わせの際、口頭だけで確認するとトラブルの元になります。家づくりノートを活用し、話し合いのなかで変わったこと、追加したことなどを書き留めておきましょう。そうすることで、契約内容にきちんと反映されているかチェックすることができます。
追加の費用や工期の延長に注意しよう
工事請負契約をかわした後に、間取りの変更や住宅設備のグレード変更、建具の追加などをする場合は変更契約を結ぶ必要があり、追加の費用がかかります。また、内容によっては建築確認の再申請が必要になれば、さらにお金がかかります。追加の費用を抑えたい場合は、契約前のチェックをきちんとすることが大切です。
また、天候不順や作業の遅れによって、工期が長くなることがあります。大きく予定が変わる場合、引っ越しの時期に影響が出ることもあります。そのほか、つなぎ融資を利用する場合には利息の負担が増えることがあります。着工前に、工期が延長した場合に受けられる補償を確認しておくと良いでしょう。また、着工後は現場に足を運んで、進捗をチェックするようにしましょう。
自分に合う建築会社を見つけよう
建築会社選びで紹介した3つの依頼先について、それぞれ「どんな人におすすめか」をご紹介します。
- ハウスメーカー
-
決められたプランで建てたい人、大手メーカーの安心感を重視する人に向いています。また、短期間で家づくりをしたい人にもおすすめです。
- 工務店
-
限られた予算内で、こだわりの家づくりをしたい人におすすめです。
- 設計事務所
-
多少の手間と費用は気にせず、他にはない個性的な家やこだわりの家が建てたい人には、ベストな選択肢です。
また、依頼先を決めるうえで、もう1つ大切なポイントがあります。
それは「会社の雰囲気や担当者との相性」です。
建築会社との関係は、家を建てたら終わりではなく、建てた後も何十年と続きます。そのため、コミュニケーションが取りにくいようでは、家づくりも上手く進められません。実際に足を運んで雰囲気をチェックするのはもちろん、「きちんと自分たちの希望が伝わっているか」「伝えた希望に対して、プロとしての意見や提案はあるか」も確認すると良いでしょう。
土地がある人が注文住宅を建てる前に知っておきたい注意点
土地を探す時間が省けるため、短い期間で建てることも可能です。しかし、土地があるからといって、すぐに家を建てられるわけではありません。所有する土地に家を建てる際に、確認したいことや注意したい点について解説します。
住宅の建築に適しているか、周辺環境を確認する
まずは、所有している土地が住宅の建築に適しているか、どんな住環境なのかを確認しましょう。そこでチェックしたいのが「用途地域」です。
用途地域とは、都市計画法に基づき、いろいろな用途の建物が混在しないよう、地域ごとに「用途や建てられる建物の大きさ・種類を定めたもの」です。大きく住居系・商業系・工業系の3つに分類され、さらに13種類に分かれます。
これにより、土地周辺がどのような環境なのか、今後どんな建物が建つ可能性があるかを知ることができます。ただし、用途地域は「市街化区域」以外では指定が義務付けられていないため、「無指定」の場合もあります。
- 住居系(8種類)
-
- 第一種低層住居専用地域
- 第二種低層住居専用地域
- 第一種中高層住居専用地域
- 第二種中高層住居専用地域
- 第一種住居地域
- 第二種住居地域
- 準住居地域
- 田園住居地域
- 商業系(2種類)
-
- 近隣商業地域
- 商業地域
- 工業系(3種類)
-
- 準工業地域
- 工業地域
- 工業専用地域(※住居の建築不可)
各用途地域の詳しい説明は、国土交通省「用途地域」を参照してください。
このなかで「工業専用地域」のみ住居を建てられませんが、それ以外の地域では家の建築が可能です。そのため、場所によっては住んでから近くに工場が建ったり、大きな商業施設ができたりすることがあります。持っている土地の用途地域を確認し、自分の望む住環境に合っているか判断すると良いでしょう。
自治体の窓口やホームページで調べることができます。「市区町村名 用途地域」で検索してみましょう。
都市計画法、市街化区域とは
- 都市計画法
-
都市計画に必要な事項を定めている法律です。都市の健全な発展と秩序ある整備を図ることを目的として、土地利用や都市施設の整備、市街地の開発などに関するルールが設けられています。無秩序な開発を抑え、商工業が発展しやすく、行政サービスが行き届いた「誰もが快適に暮らせる街」をつくるための決まり事です。
- 市街化区域
-
都市計画法では、「すでに市街地を形成している区域及びおおむね10年以内に優先的かつ計画的に市街化を図るべき区域」と定義されています。つまり、「現在、市街地として栄えている場所」や、「公共施設の整備などが10年以内に進められて市街化されていく予定の場所」を指します。
地盤調査は必ず行う
家を新しく建てるときには、「地盤調査」が必要です。「家の間取りが決定したタイミング」で行い、一般的な木造住宅を建てる場合の費用相場は5~10万円ほどです。なお、調査後に建物を1m以上動かした場合には再調査が必要になります。追加で費用がかかるうえ、データも変わるため注意しましょう。
また、実家の建て替えや中古住宅を建て直す場合でも、地盤調査は必ず実施しましょう。調査しないと、着工できない可能性があります。
地盤調査とは
建物を建てる前に、「住宅が建てられる地盤かどうか」を確認するための調査です。地盤が弱い地域に住宅を建てると、地盤沈下や家が傾くなどの危険性があります。2000年の建築基準法改正や住宅の品質確保の促進等に関する法律(品確法)などにより、家を新築する場合は原則として地盤調査を行うことになっています。
調査で地盤が弱いと判明した場合は、「地盤改良工事」が必要です。改良工事には「表層改良」「柱状改良」「鋼管杭改良」の3種類があり、地盤の状態や建物の重さなど、条件に適した工事を行います。それぞれの特徴と費用の目安を見てみましょう。
工事の種類 | 工事の方法 | 地盤の状態 | 費用の相場 |
---|---|---|---|
表層改良 | 地盤の表層部分だけを補強する方法。地表から2メートル程度掘ったところに、セメント系の材料と土を混ぜ合わせたものを流し込んで、全体を固めることで地盤を強化する。 | 弱い地盤が比較的浅い部分にある場合。 | 30~50万円 |
柱状改良 | 基礎の下に数か所長い穴を掘り、セメント系の材料と土を混ぜ合わせたものを流し込んで太い柱状の杭を作る。その杭を強い地盤層まで打ち込み、基礎と連結させることで強度を得る。 | 表層改良ができない敷地や、弱い地盤が地表から2~8mの深いところにある場合。 | 50~80万円 |
鋼管杭改良 | 基礎の下に鋼管やコンクリート製の杭を打ち込む方法。硬い地盤まで深く杭を打つことで建物を支える。 | 強い地盤までかなりの深さがある場合や、敷地内で地盤の固さが均一でない場合。 | 100~180万円 |
このように、土地を持っていても、建築費以外にお金がかかる場合があります。費用相場を把握しておき、必要になった場合を想定して、予算計画に組み込みましょう。
古い建物を壊す場合は「解体費」が必要
土地にある建物を壊して建て替える場合には、古い建物を解体するための「解体費」が必要になります。建物の構造によって相場が異なるため、事前に確認しておくと良いでしょう。
建物の構造 | 解体費の相場 (万円) | 坪単価の相場 (万円) |
---|---|---|
木造 | 90~150 | 3~5 |
鉄骨造り | 150~210 | 5~7 |
RC(鉄筋コンクリート)造 | 180~240 | 6~8 |
また、使用している建材や広さ、立地によっても異なります。重機が入れなかったり、使える重機が限られたりする場所は人力で解体する部分が増えるため、その分費用が高くなります。
正確な費用を知りたい場合は、業者に現地を確認してもらい、見積もりを依頼しましょう。
「農地」には家が建てられない
「持っている畑や田んぼの土地が余っているから、そこに家を建てたい」と考える人もいるかもしれませんが、まず原則として「農地」に家を建てることはできません。
建てる場合には「農地転用」を行い、住宅を建てられるようにします。ただし、転用できる農地は限られているため、いくら申請を出しても許可が下りない場合もあります。「申請を出せば、どんな農地でも家を建てられる」というわけではないため、注意しましょう。
農地転用を検討している人は、自治体や依頼を考えている建築会社に相談してみましょう。
農地転用とは
「農地を農地以外の目的で使えるようにすること」です。自治体の農業委員会へ申請書を提出し、都道府県知事の許可を得ることが必要です。ただし、市街化区域内にある農地については許可が不要で、農業委員会に届出さえすれば転用が可能です。
参考:農林水産省「農地転用許可制度について」
注文住宅に関するよくある質問
これで完璧!注文住宅「やることリスト」
最後に、注文住宅の流れと各ステップでやるべきこと、注意点をまとめました。
手間と時間がかかる注文住宅ですが、ポイントを押さえておけばスムーズに進められるはずです。ぜひ、楽しみながら理想のマイホームを手に入れてください。
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