ローコスト住宅は、比較的手頃な価格でマイホームの夢を実現できるため、注文住宅を建てたいけれど潤沢な予算を確保できないという方にとって、大変魅力的なプランです。
しかし、低価格ゆえに「なぜ安い価格で住宅を提案できるのか」「実際に暮らしてみて、後悔や不便に思うことはないか」「長く住み続けることはできるのか」など、不安を感じる方もいるのではないでしょうか。
本記事では、低価格で建てられる理由、実際に建てた人の後悔や失敗例、ローコストでも安全で住みやすい住宅を建てる方法などを解説します。
IECOCORO編集部
群馬・栃木・宮城・山形で注文住宅の情報誌「IECOCORO(イエココロ)」を発行する編集部。WEBサイト「自慢の注文住宅集めました。」では、地域の工務店情報のほか、多数の建築実例とイベント情報を紹介しています。
ローコスト住宅って恥ずかしい?低価格な理由やデメリットについて
本章では、ローコスト住宅がどういったものなのか、そのローコスト住宅が安い理由とは何か、低価格であることによるデメリットについて解説します。
そもそもローコスト住宅とは何なのか
ローコスト住宅とは、名前の通り一般的な注文住宅よりも安い価格で建築できる、コストパフォーマンスの高い住宅のことです。
一般的な注文住宅の建物本体の価格は坪単価70万円~80万円程度が相場ですが、ローコスト住宅の建物本体の価格は坪単価30万円〜50万円程度、総額1,000万円台が目安と言われています。中には、坪単価が30万円程度で総額1,000万円以下の超ローコスト住宅も存在しており、坪単価が30万円ならば延床面積が30坪でも総額900万円で注文住宅の建築が可能となります。
土地代や諸費用などを含めると、平均的には1,000万円以上2,000万円弱になりますが、 予算が限られている人にとっては、経済的な負担を減らしつつマイホームを持つための重要な選択肢といえるでしょう。
ローコスト住宅が安い理由、メリットとデメリットのバランスを理解し、理想の家づくりを目指しましょう。
ローコスト住宅が安いな理由
本項ではローコスト住宅が安い理由ついて解説します。主な要因は以下の3点となります。
規格化・マニュアル化などの効率化によるコストダウン
ローコスト住宅が安い理由の1つ目は、間取りやデザインをある程度限定することで、施工を規格化・マニュアル化しているからです。
具体的な例をあげると、以下のようなものがあります。
- 共通の設計図を使うことで設計にかかる時間と労力を削減する
- 統一規格の資材を大量発注することで仕入れ価格を抑える
- 資材は工場で加工してから現場で組み立てるプレカット工法を導入して現場での作業時間を短縮する
- イレギュラー対応をしないことで各種作業をマニュアル化する
- 作業をマニュアル化することによって施工するスタッフの技術に左右されにくくする
以上のような努力を行うことで、建材や人件費を抑えてコストダウンにつなげているのです。
住宅の仕様を規格化・マニュアル化すると、作業の効率が向上します。その場で考えなければいけないことも減り、現場監督や職人が品質を損なわずに、複数の作業を一度に進めやすくなります。ただし、人件費の削減は、方法によっては住宅の品質や精度に影響が出る場合もあるので、注意が必要な点です。
資材や設備のグレードを抑えることによるコストダウン
ローコスト住宅が安い理由の2つ目は、資材や設備のグレードを抑えているからです。
具体的な例をあげると、以下のようなものがあります。
- 高価な天然木材の代わりに合成木材や人工素材を使用する
- 建材や仕上げ材などを安価な材料や代替材にする
- 安価な資材を大量発注することで仕入れ価格を抑える
- 水回りや断熱材などの設備・建材のグレードを最低限に抑える
以上のように、各種資材や設備のグレードやクローゼットの設置数などを必要最低限に抑えることで、コストダウンにつなげているのです。ただし、安価な設備や建材は、品質や耐久性のグレードが低い場合もあるため、注意が必要です。
施工業者によって資材や設備に関する考え方は違うため、検討している施工業者がどう考えているか、しっかり確認することをおすすめします。
広告費を抑えることによるコストダウン
ローコスト住宅が安い理由の3つ目は、広告宣伝費を抑えているからです。
具体的な例をあげると、以下のようなものがあります。
- 住宅展示場などにモデルハウスを建築しない
- テレビCMの配信をせずWEBやSNS経由の広告や自社発信にとどめる
- 口コミや紹介による顧客獲得に注力する
住宅展示場に出展する場合、一般的には1棟あたり年間で数千万円、高い場合は1億円以上かかると言われています。出展費用の他、建築費はもちろんモデルハウスの維持費も必要になるため、かなりのコストがかかります。通常このコストは建築費に上乗せされるため総額が高くなるのです。
また、テレビCMは配信範囲が広く信頼性があり多くの人に視聴してもらいやすい分高いコストがかかってしまうため、ローコスト住宅の宣伝においてはテレビCM以外の方法をとることがほとんどです。
建築には、「資材」「人件費」「諸経費」「広告費」などが必要になりますが、これらのコストを可能な限り削減することで低価格を実現しているのです。
ただし、注意しなければならない点が多いことも事実です。
ローコスト住宅のデメリット
前項でローコスト住宅が安い理由を説明しましたが、コストダウンしたことによるデメリットももちろんあります。
人によって受け取り方が違う場合もありますが、施工業者を決める際や契約を決める前に意識してしっかり確認することをおすすめします。
間取りとデザインの自由度の低さ
ローコスト住宅は無駄のないコンパクトなデザイン・間取りを採用することが一般的です。
施工のマニュアル化という観点からも、個性的なデザインやレイアウトには対応できないことが多いです。そのため内装や外装のデザイン、間取りのパターンなどの選択肢が限られることにもなり、特に仕様にこだわらない方でも物足りなさを感じることがあります。
その結果、建材や建具、設計費などを削減するために部屋数が少なく、凹凸(おうとつ)の少ないつるっとした外観になりやすいのです。周囲の住宅との兼ね合いもありますが、使用可能な外壁材の見た目から「あの家はローコスト住宅だ」とわかってしまう場合もあるかもしれません。
その土地、その家での暮らしをイメージしないままに進めてしまうと、実際に建てた後で生活に不便や不満を感じることもあるでしょう。
無理なコストダウンをしている可能性がある
コストダウンをするために、必要なものまで削りすぎている場合もあります。
中には、コストダウンのためにオプションを付けることを前提にしたような必要最低限以下の設備や資材を提供する施工業者や、人件費を削減しすぎて施工そのものの品質が危うい施工業者がないわけではありません。
特に断熱材を含めた建築部材のグレードを下げることでコストダウンを図っている会社だと、住宅性能があまり芳しくないということもあり得ます。断熱材の量を減らしたり質を下げることでコスト削減を図った場合、家の断熱性能が低下し、結果として冷暖房などの光熱費が高くなる可能性があるため注意が必要です。
どんな資材が使われているのか、設備が適切かどうかを調べるなら、いずれかの段階で明細見積書を取って、建築資材や設備のメーカー名、型番や品番などの詳細な情報を確認・検索してみるとよいでしょう。
トータルコストが余計にかかる可能性がある
イニシャルコスト(建築にかかる初期費用)を優先した結果、ランニングコスト(光熱費や修繕費)がかさみ、トータルコスト(将来的な総費用)が余計にかかる場合もあります。
ローコスト住宅では、建築費用を抑えた安価な家づくりの実現が可能となる一方で、耐久性や住み心地の観点で後悔することも多々あります。劣化が早く修繕の頻度が増えたり、小規模から大規模まで様々なリフォームが必要となったり、設備の品質不足で光熱費が余計にかかってしまったり、結果的に高額なランニングコストがかかってしまうこともあります。
買うときは安かったけれど長期的に見ると高くついてしまった、とならないように、資材や設備の性能や耐久年数なども気にするとよいでしょう。
【経験者に聞いた!】住んでみてわかったローコスト住宅の失敗・後悔事例8選
ローコスト住宅を上手に活用、安価である利点を最大限活かすためには、デメリットを理解した上で、それをどう回避するかを考えることが必要です。そのためには、ローコスト住宅を建てた先達の失敗・後悔事例が役に立つことでしょう。
本章では、ローコスト住宅の失敗・後悔事例を8つ、細かい事例を含めて紹介します。
1. 間取りの制限
価格を抑えるため、規格化されたプランを採用している施工業者が多い傾向があります。そのため、間取りの自由度が低く、ライフスタイルの変化に対応できない場合があります。
細かい事例を集めてみましたので参考にしていただければと思います。
間取りの制限に関する具体例 |
頼んだ施工業者は部屋数や配置がいじれないプランだったのでキッチンの配置変更や予備の部屋を作るなどができなかった。 |
在宅勤務やリモートワークを想定していなかったので、いざそうなったときに専用のスペースを確保できなかった。 |
(仕切りがほとんどないレイアウトのプラン)一部仕切りを入れたかったが対応できないと言われた。 延べ床面積のわりに広々としているのは確かだが、プライバシーがない点は気になる。 |
レイアウトの融通は利いたのだが、延べ床面積に余裕がなく予備の部屋を作れなかった。親族や友人が遊びに来ても泊まる場所がなく、どうしてもの場合はリビングの床に布団を敷いている。 |
変形地には建てられない、という施工業者が多かった。 |
今のご時世、リモートワークのスペースを確保できるかどうかも、判断の基準になりそうですね。ただ、パーテーションやカーテンで仕切ればいい、とか、自分でDIYする、という方であれば気にならないかもしれません。
間取りの変更はほぼできないと思っていても、いざ話を聞いて実物を見てみるとやっぱりここの間取りを変更したい、ということもありますからね。そういう場合は施工業者さんを選ぶことで対応しましょう。
規格がかっちり決まっていて部屋数や配置を変更できないプランを提供する施工業者もあれば、予算を抑えつつある程度自由に設計できる施工業者もあるので、自身の希望をしっかり考えた上で、それを叶えてくれる施工業者を選ぶことが大切です。まずは、絶対に必要になりそうな部屋、自分や家族のライフスタイル上必要になりそうな部屋をリストアップすることからはじめてみましょう。
2. 性能の低下
断熱材や設備など、コストを抑えるために性能が低いものを採用すると、単純に住みづらかったり、寒暖差に弱く光熱費が高くなったり、快適性が損なわれる場合があります。
細かい事例を集めてみましたので参考にしていただければと思います。
性能の低下に関する具体例 |
断熱材のグレードが低いことに気づけなかったため、冬場は寒くて暖房費が、夏場は暑くて冷房費がかさんでしまった。断熱材の入れ替えリフォームをするか本気で悩んでいる。 |
選んだ壁材が良くなかったのか雨風での劣化が早く、修繕のタイミングが想定より早くきてしまった。 |
シーリング剤が悪かったのか施工が悪かったのか、窓際から浸水してきた。 |
他で増えたコストを減らすために可能な限り窓の数を減らした結果なのか、通気性が悪く湿気がたまり壁がかびてしまった。 |
水回りの配管の処理が悪かったようで漏水していた。 |
気密性や断熱性をおろそかにした結果光熱費がかさんでしまう、というのはローコスト住宅に限らず、注文住宅のよくある失敗事例ですので、一時の安さより長期的なコストを考えましょう。
耐震性や防火性に関しても事前に確認しておくことをおすすめします。
住宅の性能に関しては、長く快適に住み続けるために必要不可欠な部分なので、妥協はおすすめしません。
デメリットの項目でも触れましたが、明細見積書を取って、資材や設備の詳細を確認してみるとよいでしょう。
また、性能に関しては、資材や設備の問題に限らず、シーリングや配管に関しては施工の問題も関係してきますので、施工業者をしっかり選ぶことも重要です。施工業者によっては、建築中の住宅を見ることができる構造見学会を開催しているところもあります。施工が丁寧かどうか確認できる機会ですので、検討している施工業者が開催していたらぜひ参加してみてください。
3. 安っぽい仕上がり
コンパクトかつシンプルな内装・外観であったり、安価な素材や設備ゆえに安っぽい仕上がりに見えてしまうことがあります。
細かい事例を集めてみましたので参考にしていただければと思います。
安っぽい仕上がりに関する具体例 |
外観のデザインを犠牲に価格を追求したが、建ったあとに他の家と見比べた際に「安そう……」となって後悔した。 ・凹凸(おうとつ)がないつるっとした外観 ・窓の数が少なく、場所や大きさが一定 ・植栽のないコンクリートオンリー外構 最初はシンプルでかっこいいと思っていたし今でもそう思うが、周囲の家と比べると落差がすごかった。 |
水回りの設備のグレードを下げた。こだわっていなかった部分なので機能的は問題ないと感じているが、デザイン性はないな、と少しテンションが下がった。 |
外壁の塗装ムラがあった。交渉して塗りなおしてもらったが気づかなかったらどうなっていたのか……。 |
凹凸のないつるっとした外観はシンプルでスタイリッシュに見える反面、周囲の家によってはシンプルゆえに安っぽく見えてしまう、というのも場合によってはありますね。
他のスタッフいわく、建てた後にどうにかしたいなら外構や植栽を派手にすると誤魔化しがきく、そうです。
家を建てる予定地の周囲にどのような住宅があるか、事前に把握しておくことが大切です。また、外観を気にするなら、初めから外観に凝っているプランを選んだり、ある程度融通が利くプランを提供している施工業者を選んだりしましょう。ホームページに掲載されている施工事例の確認やオープンハウス見学などはもちろん、施工業者主催の内覧会や交流会に参加してみるのもよいでしょう。
4. オプションの費用
最低限のグレードだと心許ないのでもう少し、とあれもこれもとオプションをつけていくと、予算をオーバーしてしまう可能性があるので注意が必要です。
細かい事例を集めてみましたので参考にしていただければと思います。
オプションの費用に関する具体例 |
料理が好きなのでキッチンや給排水関連の設備はしっかりしないと!と妥協しなかった結果、思っていたほど安くならなかった。 |
あれも不安これも不安と相談した結果、ちゃんとしたものは選べたが、費用はしっかりかかってしまった。施工業者は丁寧に説明・対応してくれたのでその点不満はないが、ローコスト住宅を選んだ意味はあまりなかったかもしれない。 |
ぱっと見の金額が安くていいなと思ったが、資材や設備のグレードが一番下でオプションで標準クラスにもっていくだけですごい金額になりそうだったので業者を変えた。 |
お金がかかるので設備はそのままにしたが、実際に住んでみたら給湯器の性能に耐えられなかったので入れ替えた。 |
料理を一切しない、シャワーのみで湯舟はほとんど使わない、などのわかりやすい傾向があれば取捨選択しやすくなりますが、どれも平均的に、と考えると結局いろいろなオプション付けてしまいがちなんですよね……。
設備に関しては、高くても最初から省エネのものを選んでおく方が、長い目で見ると光熱費の削減になる傾向があります。とはいえ、あれもこれもと付けるとオプション費用がかさんでいきますので、事前に絶対にここは譲れない、というラインを決めておくとよいかもしれません。
5. 後悔ポイントの見逃し
契約前に詳細な確認ができなかったり、着工前に住み心地に関する項目を見落としてしまう可能性があります。建てた後に後悔ポイントに気づいても、変更が難しいケースが多いです。
細かい事例を集めてみましたので参考にしていただければと思います。
後悔ポイントの見逃しに関する具体例 |
断熱性能については考えていたが、建てた後に耐震性や防炎性能について何も話していなかったことに気づいて不安になった。 |
もうそろそろ着工するぞ、というタイミングで同じ価格帯でもっと融通の利く施工業者を見つけてしまった。悔しくてそれ以上調べなかったが、もっと時間をかけて広い範囲で調べておけばと思った。 |
事前にいろいろ考えていたはずなのだが、リスト化していなかったせいか抜けが多くなってしまった。 |
建てた後に気づいて後悔しても手遅れになることがほとんどです。ただ、細かいことであればDIYや軽いリフォームで対応できる場合もあります。
もしも、気づいたのがそこまで話が進んでいないタイミングなら、しっかり伝えること、対応してもらえないならキャンセルを検討することも大切ですよ!
本記事のような後悔・失敗事例はもちろん、成功事例のなども事前に調べることをおすすめします。記事はもちろん、ブログやInstagram・X(旧Twitter)などで検索するとたくさんの事例が出てきますので、それらを参考に、自分だったらどうかを考えてリスト化しておくとよいでしょう。考えておくだけだけだと抜ける可能性もあるので、書き出すことが大切です。
念のため、キャンセルにかかる費用や可能なタイミングなども確認しておくとよいでしょう。
6. アフターサービスの不安
大手ハウスメーカーに比べてアフターサービスが充実していない場合があります。トラブルが発生した際に、対応が遅れたり、費用が高額になったりする可能性があるので、どのような対応をしてもらえるのか事前に確認しましょう。
細かい事例を集めてみましたので参考にしていただければと思います。
アフターサービスの不安に関する具体例 |
そういった専用の窓口がなかったので、メールの返信が遅かった。その後の依頼から施工までも時間がかかった。 |
保証期間は一般的に10年という認識だったが、設備や内装関連は3年しかなかったので、もっとちゃんと確認しておけばよかった。 |
建物本体と防水の保証しかなく、設備や内装関係の保証は何もなかった。 |
アフターサービスは当然あるだろうと思って確認しないでいると、実はほとんどなかった、なんてこともありますから、事前にしっかり確認することが大切です。
新築住宅は、住宅品質確保法という法律に基づき、引き渡しから10年は「瑕疵(かし)担保責任保証」という保証が付いています。これは、本来あるべき機能が備わっていないなど、住まいの基礎に不備があった、すなわち瑕疵があった場合、施工業者に修理などの対応を義務付けている保証です。ただし、注意したいのは、保証範囲が柱や梁といった基礎に限られているため、壁紙や設備といった内装や建具は含まれないことです。もちろん、住んでから壊してしまったり、傷付けてしまったりしたものについても保証外です。
ローコスト住宅では保証が最低限であったり、年数が少ないことが多いため、保証内容や対応窓口などについて事前に確認するようにしましょう。
参考:住宅の品質確保の促進等に関する法律 (第七章 瑕疵担保責任保証)
7. 騒音の問題
コストカットの影響で壁や床が薄いことが多く、隣家や外部からの騒音が聞こえる、外部に音が漏れるなどのトラブルになる場合があります。騒音ストレスに悩まされる可能性や近隣との騒音トラブルになる可能性があるので注意しましょう。
細かい事例を集めてみましたので参考にしていただければと思います。
騒音の問題に関する具体例 |
近所の家の子どもの声や歓声などの大きな声が響いて気になる。 |
壁が想像していた以上に薄く、エアコンの室外機の音がはっきり聞こえてうるさい。 |
話し声や水回りの音が隣に聞こえていないか心配。 |
まず事前に気にしておくべきは周囲の状況と隣家との距離でしょうか。壁と壁の距離が近ければ近いほど音を気にしないといけません。
遮音や防音についてどうなっているか施工業者に確認することも大切です。ローコスト住宅は壁が薄いことが多いので、なにかしらの対策がされているのかいないのか、まずは確認しましょう。
他人の声が聞こえてくるということは自分の声も聞かれている、ということになりますので、いらぬトラブルを買わぬためにも、ある程度の防音対策は考えた方がよいでしょう。
一般的な騒音対策としては、壁の内側に吸音材・防振材・遮音材を設置すること、窓を二重窓にすること、換気扇を防音効果のあるものにすることなどがあげられます。音漏れを防いで静かな環境を求めるなら、予算との兼ね合いで対策を検討してみるとよいでしょう。
建てた後にできる対策としては、DIYで吸音材と遮音シートを貼ることでしょう。その他、防音カーテンや防音カーペット、防音マットなどもありますし、壁際に壁から少し離して大きな家具を設置して振動を防ぐことも効果的です。
8. 住み心地の不満
他の項目で紹介してきたような問題が複合的に発生し、住み心地に不満を感じ、快適な暮らしを送れない可能性があります。
細かい事例を集めてみましたので参考にしていただければと思います。
住み心地の不満に関する具体例 |
こんな不満を抱えてこれからも済むのかと思うと憂鬱。 |
修繕やDIYで解決できる範囲ならまだいいけれど、部屋が足りないとかはもうどうしようもない。大規模なリフォームを考えて入るけど結局お金がかかることに……。 |
一つ二つの小さなものならまだましだが、これ以上増えるなら本当にリフォームや売却などを考えないといけない。 |
マイホームの購入前後はもちろん住む直前や住んでから、様々な不安や後悔が原因で「気分が落ち込む」「不安が増す」「イライラが募る」など、精神的に不安定な状態になることを「新築ブルー・マイホームブルー」と呼びます。ひどい時にはノイローゼ気味になってしまうこともあるため、注意が必要です。
ローコスト住宅の場合、何かしらの妥協が必要になる部分が出てきますので「最初から100%満足する家は難しい」「この妥協ラインさえ保てていればOK」と想定しておくことや、「いざとなればどうとでもなる」と割り切ることも必要かもしれません。DIYでの修繕やリフォーム・リノベーションもできますし、売却して引っ越してもよいのです。
ローコスト住宅のメリットと失敗しないためにできること【成功事例紹介あり】
本章では、ローコスト住宅のメリットや魅力について、後悔・失敗しないためにできること、成功事例などを紹介します。
ローコスト住宅の魅力やメリットについて
今までデメリットや後悔・失敗事例についてばかり触れていましたが、もちろんローコスト住宅ならではの魅力やメリットもあります。
低価格でもこだわりたい部分にお金をかけられる
ローコスト住宅の一番のメリットは、予算を抑えてマイホームを建築できる点です。低価格であるため、まだ収入の少ない若い世代でも住宅を建てられることが魅力です。
また、今まで述べてきた通り、ローコスト住宅の標準仕様は、一般的な注文住宅よりも低い価格で建てることが可能となっています。そのため、家づくりの総合的なコストを抑えながら、重要な部分に重点的な予算の割り当てられるという点もメリットといえます。
大手ハウスメーカーの注文住宅は予算が合わないという方でも、コストをかけるべき箇所と削減できる箇所を明確にすることで、ローコストでも理想に近い家づくりが可能なのです。
工期が短いのですぐマイホームが手に入る
一般的な注文住宅の場合、建築には着工から完成・引き渡しまでには通常5~6ヶ月程度の時間がかかりますが、ローコスト住宅の工期は約3ヶ月程度と短くなる傾向にあります。
住宅のプランが規格化されて決まっていることが多いため、営業担当者や設計士との打合せにかかる時間も少なくなり、施工の工程もマニュアル化されているため、時間を短縮して建築できるのです。
工期が短いことによって、新築住宅が完成するまでの間にかかる賃貸や仮住まいの家賃を節約できることもメリットと言えるでしょう。
総額が少ないので住宅ローンが組みやすい
注文住宅を建てる際に、多くの方は住宅ローンを利用するのではないでしょうか。その際、必ず考慮しなければならないのが住宅ローンの返済額です。
住宅ローンの借り入れ金額は、購入する住宅の価格によって大きく変わります。ローコスト住宅であれば、住宅ローンの借り入れ金額を抑えて月々の返済額を少なくすることができます。借入金額を低く抑えることで月々の返済負担がぐっと減ります。住宅ローンの返済負担が軽くなれば、新しい生活を充実させたり、将来のため、子どもや老後のための貯蓄に回したりするなどの余裕が生まれてきます。
ローコスト住宅で後悔・失敗しないためにできること
ローコスト住宅に魅力を感じ検討している方は、ローコスト住宅で後悔・失敗しないためにどのような点に注意すればよいでしょうか。
情報収集をして、予算や希望を明確化しておく
家を建てた後に「こんな間取りにしたかった」「こんな設備があったのか」と後悔しても手遅れです。
そのためにも、どのような間取りがいいのか、優先順位をはっきりさせて妥協できない点と妥協してもよい点はなにか、などの希望を明確にしておきましょう。後悔・失敗事例の後悔ポイントの見逃しでも述べましたが、成功事例や後悔事例を紹介している記事やブログ、各種SNSなどで情報収集をして、リスト化しておくとよいでしょう。
希望が明確になったら、その希望が予算内で実現できるかどうか確認しましょう。予算内に収まらない場合は、予算の方を調整するか、希望をさらに明確化し取捨選択をすることが必要ができます。なお、予期せぬ追加費用の発生に備えて、予算は少し余裕をもっておくことをおすすめします。
日常生活にかかわる断熱・気密性は特に重視する
住宅の性能は長く快適に住み続けるために必要不可欠な部分です。
特に断熱性や気密性に関してはしっかり対策を考える必要があります。この部分をおろそかにすると、外気温に影響され冷暖房を多用することになり、結果的に光熱費がかさんでしまいます。節約しようとして冷暖房を控えれば快適性が落ち、省エネ性能の高い冷暖房設備に入れ替えるにせよ金額がかかることになります。
施工業者によっては、販売価格のコストダウンに注力している分、メンテナンスやランニングコストをあまり考えられていないケースもあります。目先の安さだけにとらわれず、トータルコストでの家づくりを考えましょう。
性能重視のロングライフな家づくりを重視するなら、その他、耐震性や耐火性、腐食耐性や防水性なども気にしておくとよいでしょう。
施工業者の選定がとにかく大事
間取りや外観の融通が利くのか、設備や資材の融通が利くのか、アフターフォローがしっかりしているのかなど、気にしている部分に対応できる施工業者を選ぶことが何よりも大事になります。
まずは見積もりの検討からはじめ、わかりやすい金額やプランで話をしてくれているか、自由度はどれくらいあるのか、担当者がコミュニケーションが取りやすいか、話をちゃんと聞いて提案や見積もりをだしてくれているか、複数のハウスメーカーや工務店、建築士事務所を比較検討するようにしましょう。
施工業者のホームページに建築実例が紹介されているなら、希望の間取りや坪数の建築実績が豊富がどうかも判断基準になるでしょう。
ローコスト住宅(1,000万円台)の成功例
本体価格1,000万円~1,500万円のローコスト住宅の成功事例・施工業者を厳選して2つ紹介します。オーナーの声と施工業者の声もあわせて紹介するので、参考にしてみてください。
平屋/延べ床面積27.5坪/2人家族【1,332万円】
「1,000万円から始める自分スタイルの家づくり」をコンセプトにした施工業者が手掛けた平屋のローコスト住宅です。様々なスタイルの住宅の「いいとこどり」が可能なため、ローコスト住宅でも要望にあった住まいを建てることができます。
住まいの中心には薪ストーブを配置。間仕切りの少ない開放的な間取りでも、冬季にはやわらかなぬくもりが住まい全体を包み込んでくれる。
ミシン掛けなどが気軽にできるデスクを造り付けたアトリエ的な1室は、ドアがないつくり。お互いを近くに感じながら1人で集中もできる、2人暮らしには大事な空間。
外観デザインは、シンプルなデザインの規格プランから選択。しかし内装は他の規格プランとの組合せで、ほぼオーダーメイドとなった。
- 建築費(本体価格)
-
1,332万円
- 延床面積
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27.5坪
- 設計・施工
-
アットナチュレ
最初は規格型がきっかけでしたが、実際につくったのは完全にオーダーメイドの家です。打ち合わせでは、しっかりとイメージを共有できたので、全部がお気に入りです。間取りは私たちのライフスタイルに合わせて暮らしやすくなるようお願いしており、家具はインテリアは以前から愛用しているお気に入りのショップの家具がベースです。
多種多様なスタイルの住宅を扱っていますが、商品によっては敷地形状に収まらなかったり、ご家族構成やライフスタイルにマッチしないこともあります。プランのカスタマイズにも対応可能な弊社のスタジオマグでは、いくつかのスタイルの「いいとこ取り」をしたオーナー様のように、こだわりを詰め込こむことが可能です。
2階建て/延べ床面積36坪/3人家族【1,000万円~1,500万円】
「36坪1,000万円から」の住まいをコンセプトにした施工業者が手掛けた2階建てローコスト住宅です。
同社は、耐震性・耐久性のどちらも優れた2×4工法の輸入住宅を得意としており、トリプル樹脂サッシや高性能の断熱材・遮熱材、グランドスラブ基礎を採用しています。世界水準のデザイン・断熱・安全性と自由度の高い設計が両立しています。
爽やかなブルーを基調とした室内。
職人により丁寧に塗られたドライウォール仕上げの壁は、断熱性・遮音性を向上させ、耐火・防火性も高めている。
リビングに隣接したウッドデッキ。将来的にはバーベキューやプールなどアウトドアライフを楽しむ予定である。
トリプルガラスのLow-Eサッシが同社の標準仕様。「夏場エアコンをつけてなくても涼しく感じます」とオーナー家族も絶賛。
淡いグリーンカラーが印象的な北欧スタイルの外観。バイナルサイディングを採用した外壁は、色落ちがしにくく汚れた際にも手入れがしやすい。
- 建築費(本体価格)
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1,000万円〜1,500万円
- 延床面積
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36坪
- 設計・施工
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世界基準の家 フルハウス
フルハウスさんの魅力はとにかく驚くほど安心価格なことです。最初は「こんなに安くて大丈夫?」とは思っていましたが、担当者さんをはじめ、現場の職人さんが丁寧に作ってくれました。住み心地も快適で言うことなしのマイホームが実現しました。予算も思った以上に余り、外構にしっかりとお金をかけられたので本当に助かりました。
今回のご家族も当社の「36坪1,000万円から」の住まいをカタチにされた方です。モデルハウスへ足を運んでいただき、実際に体感されたことで「本当に実現するんだ」と感激していただきました。建築後には「“妥協”や“落としどころ”がない理想 の住まいができて家族全員とても満足しています」と嬉しいお言葉をいただいております。
Q&A
- ローコスト住宅が向いている人は?
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ローコスト住宅に向いているのは、「とにかく短期で家を建てたい人」「建売より自由度がある程度で満足できる人」「アパートの延長で満足できる人」でしょう。
ローコスト住宅の一番のメリットは、コストを安く抑えながらマイホームを建築できる点です。
規格化・マニュアル化のおかげで各工程がスムーズに進むので、家づくりの準備から施工完了までなるべく時間を割かずに建築したい方に向いています。さらに、マイホームのデザインや仕様へのこだわりが少ない場合は、ローコスト住宅の住宅プランで満足できることが多いでしょう。 - ローコスト住宅だとぱっと見わからないようにできる?
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以下のような方法が考えられます。
【外観の場合】
解決策としては、外壁の色でメリハリを出す、予算を割いて外観に凹凸をつける(道路に面している側だけでもOK)、外構をある程度作りこむなどがあげられます。【内装の場合】
解決策としては、玄関やLDKなどの来客者の目に留まるスペースの床や壁材のグレードや見栄えを良くするなどがあげられます。
まとめ
本記事では、低価格で建てられる理由、実際に建てた人の後悔や失敗例、ローコストでも安全で住みやすい住宅を建てる方法などを解説してきました。
記事の内容を簡単にまとめると以下のようになります。
- ローコスト住宅とは名前の通り一般的な注文住宅よりも安い価格で建築できる住宅のこと
- ローコスト住宅が安価な理由は企業努力によるコストカットの結果である
- デメリットは間取りの自由度の低さと性能不足の可能性があること
- ローコスト住宅の具体的な失敗・後悔事例の紹介
- メリットは工期が短く低価格でローンも組みやすいこと
- 失敗しないためには、事前調査と施工業者の選択が重要である
- ローコスト住宅の成功事例の紹介
ローコスト住宅が安価な理由は、たゆまぬ企業努力の結果であり、「ローコストだから恥ずかしい」とか「安いから危険」というわけではありません。ただし、注意しなければならない点・しっかり確認しておかなければならない点が多いことも事実です。
本記事の事例を参考に、デメリットとなる部分の確認と対策を考え、ご自身の優先順位の見直しをしてしっかり事前準備や下調べをして、後悔のない注文住宅づくりを目指していきましょう。
- 国土交通省:「住宅の品質確保の促進等に関する法律」
- e-Gov法令検索:「住宅の品質確保の促進等に関する法律(第七章 瑕疵担保責任保証)」
イエココロのWEBサイト「自慢の注文住宅集めました。」では、群馬・栃木・宮城・山形を中心とした工務店情報やモデルハウス情報のほか、多数の「建築実例」を紹介しています。お近くにお住まいの方は、ぜひチェックしてください。