就職や転職、結婚や出産などの人生の節目のタイミングで、家に求める要素が変わり、住居の見直しを考える人も多いのではないでしょうか。こうした中、個別の需要に柔軟に対応できる選択肢として、注文住宅は人気があります。
しかし、注文住宅を建てるには具体的にどれくらいの期間がかかるのでしょうか。入居したい時期が決まっている場合、全体のスケジュールを把握することは非常に重要です。
本記事では、注文住宅の着工から完成までの平均的な期間から注文住宅や建築会社の種類についての基本的な解説、最短での完成を目指すための工夫について解説します。これから注文住宅の建設を考えている方や、具体的なスケジュールを知りたい方は、ぜひ参考にしてください。
IECOCORO編集部
群馬・栃木・宮城・山形で注文住宅の情報誌「IECOCORO(イエココロ)」を発行する編集部。WEBサイト「自慢の注文住宅集めました。」では、地域の工務店情報のほか、多数の建築実例とイベント情報を紹介しています。
注文住宅のスケジュール表と完成までの平均期間
注文住宅の基本的なスケジュール
フルオーダーの注文住宅の場合、基本的なスケジュールと期間は以下の通りです。
スケジュール | 含まれる工程 | かかる期間 |
計画 段階 | ①予算計画・希望整理 | 2~3 ヵ月 |
②建築会社・土地の選定 | ||
③土地の購入・建築計画の仮決定 | ||
契約 段階 | ④工事請負契約 | 3~4 ヵ月 |
⑤建築計画の本決定 | ||
建設 段階 | ⑥着工 | 4~6 ヵ月 |
⑦竣工・引き渡し |
全体として、フルオーダー注文住宅の建築には9ヵ月~12ヵ月あまりかかることが一般的です。
ただし、これはすべての工程を一から自分たちで計画した場合のスケジュールです。建てる注文住宅の種類によってはいくつかの工程を短縮して進めることが可能で、短縮した分だけ引き渡しまでの時間は短くなります。一方で、注文住宅の最大の特徴である自由度が低くなってしまうことは留意しておきましょう。
注文住宅の家づくりの流れと着工から完成までにかかる期間
注文住宅の家づくりの流れと着工から完成までにかかる期間
注文住宅の計画から完成までにかかる期間は大きく計画段階・契約段階・建設段階の3つに分けられます。
構想と土地や建築会社の仮決定までが計画段階で2~3カ月程度、本格的な契約と計画の本決定が契約段階で3~4カ月程度、着工から完成・引き渡しまでが建設段階で4~6か月程度になります。
以下で注文住宅の家づくりの流れと各段階にかかる期間、それぞれの内容について詳しく紹介します。
計画段階(2~3カ月程度)
計画段階では①予算計画・希望整理、 ②建築会社・土地の選定 、③土地の購入・建築計画の仮決定までを行います。個々のケースによりますが、全体にかかる期間はおおよそ2~3カ月程度です。
ただし、希望が家族間でまとまらない、理想の土地が見つからないなどの理由でこの段階が必要以上に長くなってしまうこともあります。特に、土地探しが難航してしまうと長引くことが多いので、ある程度の所で折り合いをつけることも必要になるでしょう。
- 予算計画を立てる
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注文住宅は金額の大きな買い物ですから、多くの人は住宅ローンを利用します。
まず第一に注文住宅にどれくらいの費用をかけられるのか、住宅ローンでどのくらいの金額が借りられるのかを把握して予算を決め、資金計画を立てましょう。
2人の年収を合わせて、住宅ローンでこれくらいの金額が借りられそう。
貯金を頭金にしたら、もう少し借りる金額は少なくして良さそうだよ。
貯金もある程度残しておきたいから、バランスを考えないとね。
- 注文住宅への希望を整理する
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注文住宅に何を求めているかを具体的に考えます。
家族で意見を出し合ったり、本や雑誌・インターネットで情報を調べたりして注文住宅に対する希望を整理し、イメージを固めましょう。
SNSで見かけた内装を取り入れたいな。
家庭菜園をしたいから、庭が広いと嬉しい。
全部の希望を叶えるのは難しいから、優先順位を付けよう。
- 土地を探す
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土地を持っていない場合、予算と建てたい家のイメージが固まったら、土地を探します。
土地を探す方法は、不動産仲介会社に依頼するのが一般的な手段ですが、先に建築会社を決めてからその会社に相談して土地を探してもらう方法もあります。
この土地は駅が近いし大きさもちょうど良さそうだよ。
近くにスーパーがないのはちょっと不便かもしれないね。
隣の市にも良い土地がないか探してみようか。
- 建築会社を探す
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土地を探すのと並行して、建築会社もどこに依頼するか検討します。有名な会社だけではなく、いろいろな会社を比較した方が良いでしょう。モデルハウスを実際に見ることができる総合住宅展示場を巡るのも参考になります。
しかし1日で2~3社程度しか見学できないこともあるため、資料請求やインターネットでの情報収集を通じて目星をつけてから見学するのが良いでしょう。
有名な会社の住宅展示場が近くにあるみたいだよ。
会社の同僚が建てた工務店でも話を聞いてみたいな。
資料請求でカタログを貰っていろいろ比較してみよう。
- 建築会社の担当者との打ち合わせ・建築計画の仮決定
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建築会社の担当者と打ち合わせをし、建築計画を仮決定します。
要望を正確に伝えないと後で予想外の追加費用が発生する可能性があるため、間取りや設備の希望を一覧にして円滑な話し合いを進める準備をしましょう。
複数の会社を比較する際には、間取りの提案力・デザイン性・耐震性・断熱性・遮音性などに注意して検討し、希望に合ったポイントを実現できる会社を選びましょう。
絶対に譲れない条件などはありますか?
希望に漏れがないように、リストに一覧にして持ってきました。
助かります!この内容なら、こちらのプランはどうですか?
- 建築会社からの見積もりの提示
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建築会社から、仮決定した建築計画に基づいた見積もりを出してもらいます。複数の建築会社に見積もりを依頼して検討することも可能です。
見積もりは決まった形式があるわけではなく建築会社によって書式が異なるため、含まれる費用の内訳をしっかりと確認しましょう。
A社とB社に見積もりを貰ったけど、金額の違いは何だろう?
A社では本体価格に入っている内容が、B社だとオプション扱いだよ。
金額だけじゃなく、内容もきちんとチェックしないといけないね。
- 土地の購入(土地のローン審査・契約)
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土地を持っていない場合はこの段階で土地を購入します。
選定した土地に建てたい住宅が建築可能かどうか、建築会社の担当者によく確認してから正式に購入しましょう。土地も含めて住宅ローンを組む場合は、この時にローン審査を申し込みます。
建築会社に確認して大丈夫そうだったから、土地を正式に購入しよう。
家を建てる前提なら、土地の購入にも住宅ローンが利用できるんだね。
住宅ローンの組み方によって、融資の開始時期が変わるみたいだよ。
契約段階(3~4カ月程度)
契約段階では④工事請負契約、 ⑤建築計画の本決定を行います。個々のケースによりますが、かかる期間はおおよそ3~4カ月程度です。
建築計画の詳細な打ち合わせが含まれるため、打ち合わせがスムーズに進むかどうかによって期間は変動します。
建築計画の内容や見積もりから依頼する建築会社を決定し、工事請負契約を締結します。
後々の追加費用を避けるためにも、希望する仕様や設備が契約に含まれていることを必ず確認しましょう。また、この時に手付金として建築費の最大10%の申込金を支払う必要がある場合もありますので、キャンセル時の申込金の扱いや対処方法についても担当者に確認しておくとトラブル防止につながります。
正式に契約したいのですが、何点か確認したいことがあります。
ありがとうございます!わからないことは何でも聞いてください。
見積もりのここの内容なんですが……。
- 建築計画の本決定
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工事請負契約を結んだら、打ち合わせを進めて建築計画の詳細を確定させ本決定します。
合わせて簡易的な地盤調査を行い、必要であれば地盤改良工事の見積もりを取得しましょう。いよいよ詳細が決まったら、市町村に建築確認申請をします。
本日は内装の打ち合わせですが、大きく変更したい点などありますか?
実は、キッチンをこちらのメーカーの物に変えたいと考えていて……。
予算を超えてしまいますね。他の設備を安いものにして調整しましょうか。
- 建築確認申請
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計画した住宅が法令に適合しているかを確認する「建築確認」を市区町村に申請します。
住宅工事を始める前には必ず行わなければならない手続きで、この申請が承認されないと住宅ローンの申し込みや工事の着工に進むことができません。
建築確認申請って、自分たちでやらないといけないのかな?
専門的な内容が多いので、設計者が代行することがほとんどですよ。
委任状と手数料が必要みたいだね。
- 建物のローン審査・契約
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土地のローンは組まない場合、建築計画が本決定した段階で建物に対する住宅ローンの申し込みを進めます。
まず金融機関を選んで仮審査を受け、建築確認が承認されたら本審査に進んで正式な住宅ローン契約を結びましょう。
住宅ローンもいろいろ種類があって選ぶのが大変だね。
最近は金利の低いネット銀行のものも人気があるみたいだよ。
魅力的なオプションもあるけど、本当に必要か考えないといけないな。
建築確認の申請が承認された後に建築計画に変更が生じてしまった場合は、変更契約の締結が必要になります。
窓の位置や大きさを変更する場合には再び建築確認を申請する必要があり、費用や工期が増加する可能性が高いです。また初回の建築確認申請後には変更できない部分もあるため、変更可能範囲を事前に担当者に確認しておきましょう。
建設段階(4~6カ月程度)
建設段階では⑥着工、 ⑦竣工・引き渡しまでが行われます。個々のケースによりますが、かかる期間はおおよそ4~6カ月程度です。
実際に始まってみないとわからないことですが、天候不良や情勢による資材不足などがあると工事が遅延してしまう可能性があります。入居したい日が決まっている場合は、なるべく余裕を持ったスケジュールを組めるように計画しましょう。
建築確認申請が承認されたら、新築工事の着工が行われます。
着工前には安全祈願として地鎮祭を行ったり、骨組み完成後に上棟式を行ったりすることもありますが、これらの行事を行うかどうかは家を建てる人である施主の希望によります。
工事中は、建築現場に足を運んで進捗状況を確認することもできます。ただし、工事の進行に影響を及ぼさないように注意して行動しましょう。
最近は地鎮祭や上棟式をやらない人もいるみたいだよ。
近所の人や大工さんと交流できる良い機会だし、やった方が安心かな。
地域によっていろいろ違うこともあるから、調べてみよう。
建物が完成(竣工)したら、市区町村による完了検査を受けます。この検査では、建築確認申請に基づいて建物が適切に建てられているか確認され、検査済証が発行されます。
建物の引き渡し前には、施主が立ち会って最終的なチェックが行われ、設備の不具合や傷などがないかを確認します。気になる点があれば、修正や調整を依頼し、施主が満足する状態になるようにしましょう。
最終的な修正や調整が行われたら正式に引き渡しとなり、建物の所有権が施主に移って入居できる状態となります。
最終的な確認で問題がなければ、正式な引き渡しになります。
細かい所も見たいから、動きやすくて汚れてもいい服装で行こう。
後から問題が見つかると大変だから、念入りにチェックしないとね。
注文住宅の代金を支払うタイミング
注文住宅にかかる費用は全てを一度に支払う訳ではなく、用途によってそれぞれ支払うタイミングがあります。
土地を購入する場合、手元に資金がある場合は一括で支払うことが可能ですが、ローンで借り入れをする場合は初めに手付金として売買代金の5~10%程度の金額を支払っておき、ローンの審査が通って融資が受けられるようになったら残金を支払います。
建物の建築費用は、3~4回に分割して支払うのが一般的です。支払い条件は建築会社によって異なりますが、以下に一例をあげます。
工事請負 契約時 | 申込金 (手付金) | 建築費用の約10% |
着工時 | 中間金 | 建築費用の約30% |
上棟時 | 建築費用の約30% | |
竣工時 | 残代金 | 建築費用の約30% |
上記の例では、仮に住宅の建築費用が3000万円の場合、工事請負契約時にまず300万円を支払い、着工・上棟・竣工時の各タイミングでそれぞれ900万円を支払うことになります。
住宅ローンを利用して支払いを行う場合、原則として完成した建物の引き渡し時に融資が開始されます。工事請負契約時~上棟時の建築費を建築会社に支払う時点では建物は完成していませんので、この段階では住宅ローンからの融資は受けられないということになります。
この期間分の支払いを自己資金で用意できない場合には、住宅ローンとは別に、融資が開始されるまで一時的に資金を融資してもらう「つなぎ融資」を契約するか、住宅ローンの融資が一括ではなく分割になる「分割融資」を利用することになります。
国土交通省の令和5年度住宅市場動向調査によると、注文住宅の住宅建築資金の土地を除いた平均金額は4,319万円、土地購入資金の平均金額は1,929万円です。
支払いのタイミングについてもしっかりと把握し、予想外の出費で計画の変更を余儀なくされるといったことがないようにしましょう。
注文住宅の住宅建築資金 (土地購入資金を除く) | 4,319万円 | 4,034万円(新築) |
5,745万円(建て替え) | ||
土地購入資金 | 1,929万円 | |
住宅建築資金と土地購入資金の総額 | 5,811万円 |
注文住宅の種類と建築会社による工期の違い
注文住宅は、間取りや設備、外観を自分好みに設定できる住宅です。
しかし注文住宅と一口に言っても、その種類は様々です。希望に合わせて完全にオーダーメイドで作る住宅もあれば、大枠が決まっているプランの中から選択して建てる住宅もあります。
また、建築を依頼する会社によっても、使用する素材や設計の自由度、アフターサービスの内容などが異なります。自分の理想の住まいを実現するためには、まずは自分の希望や条件に合った会社を見つけることが大切です。
以下で、注文住宅の種類と建築会社の違いについて、特に工期に注目して簡単に解説します。
注文住宅の種類
注文住宅には、大きく分けてフルオーダー住宅・セミオーダー住宅・企画型住宅の3つの種類があります。どの注文住宅を建てるかによって、完成までの時間のかかり方も変わってきます。
住宅の種類 | 特徴 | 工期 | 引き渡しまでの目安 |
フルオーダー住宅 | 全てを一からオーダーメイド | 長い | 9~12ヵ月程度 |
セミオーダー住宅 | 部分的にカスタマイズ | 中間 | 4~6ヵ月程度 |
企画型住宅 | 決められたプランの中から選択 | 短い | 3~4ヵ月程度 |
フルオーダー住宅
フルオーダー住宅は、間取りや設備、外観など家に関わる全てを自分たちの思う通りに設計できる住宅です。もちろん法律や条令、予算の許す限りになりますが、まさに理想の家を実現できる形態と言えます。
しかし、一から設計するわけですから当然時間と費用、労力が最もかかる形態でもあります。工期も3つの種類の中では一番長くなるでしょう。
さらに打ち合わせや素材・設備の取り寄せにも時間が必要なため、計画段階から竣工・引き渡しまで9~12ヵ月程度はかかると考えておきましょう。理想の家の形や建築を依頼する会社によってはもっと時間がかかる場合もあります。
セミオーダー住宅
セミオーダー住宅は、間取りや設備、外観などの一部の仕様を自分たちで選べる住宅です。自分たちで選べない部分もありますが、時間と費用、労力をある程度抑えつつカスタマイズを楽しむことができます。
フルオーダーをするほど時間や労力、費用はかけられないけれど、せっかく家を一から建てるにはある程度カスタマイズもしたいという需要を満たしてくれる形態です。工期はフルオーダー住宅と企画型住宅の中間位になるでしょう。
打ち合わせにかかる時間や建築会社にもよりますが、計画段階から竣工・引き渡しまでの目安は4~6ヵ月程度です。
企画型住宅
企画型住宅は、決まったいくつかのプランの中から選んで建てる住宅です。規格型住宅とも表記され、フルオーダー住宅やセミオーダー住宅と比較すると自由度はかなり低くなります。
しかしあらかじめ規格化され効率的に物事が進むように設定されたプランですから、打ち合わせにかかる労力は少ないです。また費用も安く済み、工期もフルオーダー住宅やセミオーダー住宅と比べて短くなります。
建築会社にもよりますが、計画段階から竣工・引き渡しまでは3~4ヵ月程度が目安になるでしょう。
建築会社による工期の違い
注文住宅を手掛ける建築会社は、主にハウスメーカー、工務店、設計事務所の3種類に分類されます。どの建築会社に依頼するかで完成までの時間のかかり方も違います。
建築会社の種類 | 特徴 | 工期 | 引き渡しまでの目安 |
ハウスメーカー | 規格化されている | 短い | 6~7カ月程度 |
工務店 | 地域の実情に詳しい | 中間 | 8~9カ月程度 |
設計事務所 | 自由度が高い | 長い | 12~14カ月程度 |
ハウスメーカー
ハウスメーカーは、全国規模の大規模な建築会社です。設備や工程が規格化されている為工期が短く、統一された対応と品質、充実したアフターサービスで安心感があります。カタログやホームページも整備されており、全国に展示場があるため情報にアクセスしやすいです。
一方で、広告・宣伝にお金をかけているため工務店よりは費用が高くなります。また、規格化されていることに強みがあるため、フルオーダー住宅の場合長所が生かしきれないかもしれません。
建築する住宅の種類によりますが、計画から引き渡しまでの目安は6~7カ月程度です。
工務店
工務店は、地域密着型の中規模な建築会社です。地域のことに詳しく、広告・宣伝費のかかるハウスメーカーや時間をかけてデザインする設計事務所と比較して費用が安く済むことが多いです。工期はハウスメーカーと設計事務所の中間位の長さになるでしょう。
ハウスメーカーよりも地域の実情に即した柔軟な対応をしてもらえる可能性が高いですが、どの工務店を選ぶかによって品質に差が出てきてしまうので、入念な事前の情報収集が必要です。
建築する住宅の種類によりますが、計画から引き渡しまでの目安は8~9カ月程度です。
設計事務所
設計事務所は設計や監理をする建築家がいる事務所です。設計やデザインの自由度が高く、狭小地や変形地であっても柔軟に対応してくれます。ただし、時間をかけて対応してもらえる分費用は高くなり、工期も長くなる傾向にあります。
設計事務所が行うのは設計のみなので、工事は別の会社が行います。この工事は設計事務所が第三者目線で監理してくれるため、建築途中の現場を見に行っても良くわからないという不安を抱く必要はなくなります。
建築する住宅の種類によりますが、計画から引き渡しまでの目安は12~14カ月程度です。
ハウスメーカーで企画型住宅を建てるのが最も早い
人によって注文住宅を建築する時に何を優先するかは変わってきます。計画から引き渡しまでの期間の短さを最重視する場合、最も短い期間で完成するのは企画型住宅です。
また、建築会社はそれぞれ得意とする注文住宅の分野が違います。ハウスメーカーは企画型住宅とセミオーダー住宅、工務店はセミオーダー住宅とフルオーダー住宅、設計事務所はフルオーダー住宅が得意です。
注文住宅の特徴と建築会社の得意分野の違いを考慮すると、ハウスメーカーで企画型住宅を建てるのが最短で注文住宅を入手する方法であると言えます。ただし、短い期間で入手できる分自由度は下がってしまいますから、自分が注文住宅に何を求めているのか十分に検討する必要があります。
着工から完成まで3ヶ月も可能?着工から引き渡しまでを最短にする工夫
理想の注文住宅を建てつつ、なるべく早く入居したいと考える場合、スケジュールの管理が非常に重要です。
以下で、入居したい日から逆算して計画する考え方と着工から引き渡しまでを最短にする工夫、よくあるスケジュール遅延の原因と対策を紹介します。
入居したい日から逆算して計画する
入居したい日が具体的に決まっている場合、希望する入居日から逆算して計画を立てる必要があります。理想的な入居時期を決めたら、そこから遡って各段階に必要な期間を考慮し、全体のスケジュールを組み立てましょう。
逆算する日時は、建てたい注文住宅の種類によっても変わります。例として、新天地での生活を始めるにあたり、3月を入居時期として設定した場合を考えてみましょう。
注文住宅の種類 | 引き渡しまでの期間 | 入居したい時期 | 計画を始めるべき時期 |
フルオーダー住宅 | 9~12ヵ月 | 3月 | 1年前の3月 |
セミオーダー住宅 | 4~6ヵ月 | 10月 | |
企画型住宅 | 3~4ヵ月 | 12月 |
フルオーダー住宅を建てたい場合、平均的に9~12ヵ月程度かかりますから、遅くとも1年前の3月には計画を立て始めなければいけません。セミオーダー住宅なら10月、企画型住宅でも12月には計画を立て始めなければ3月に入居することは難しいでしょう。
このように逆算してスケジュールを立てることで、建築計画の各段階に十分な時間を確保でき、焦ることなく着実に進行することができます。また、予期せぬ遅延が生じた場合にも余裕を持って対応できるため、最終的な入居日に影響が出にくくなるでしょう。
着工から引き渡しまでを最短にする工夫
注文住宅の着工から完成までにかかる期間は大きく計画段階・契約段階・建設段階の3つに分けられます。以下で各段階においてそれぞれの工程を最短にする工夫について解説します。
計画段階
注文住宅の建築計画において最も時間を短縮できる余地が大きいのは計画段階です。セミオーダー住宅や企画型住宅がフルオーダー住宅と比べて引き渡しまでの時間が短いのは、この段階を建築会社がある程度決めてから提供しているからであると考えるとわかりやすいでしょう。
計画段階には①予算計画・希望整理、 ②建築会社・土地の選定 、③土地の購入・建築計画の仮決定の3つの工程が含まれています。3つの工程を短縮するにあたって重要なのは、いかに具体的に理想の住宅像を思い描けるかという点です。
イメージが曖昧なままでは予算の設定や希望の整理もうまくいきませんし、土地や建築会社を決めるのにも指針がないため迷ってしまいます。建築計画を仮決定しても、後からやっぱりああすればよかった、こうすればよかったという点がいくつも出てきてしまうかもしれません。
一番初めの段階で、譲れない条件やどういう家にしたいのかといった希望を具体的に固めておくと、建築会社との話し合いもスムーズに済み、完成までの期間の短縮につながります。本格的に計画を始める前に、普段から日常会話の一環として家族と話し合っておくと意見の擦り合わせもしやすいでしょう。
また、初めから土地がある場合は問題ありませんが、土地がない場合は土地探しに難航してしまうケースも多いです。土地についても、どのような条件が譲れない点なのかしっかり確認しておきましょう。
契約段階
契約段階には④工事請負契約と⑤建築計画の本決定の工程が含まれています。
この2つの工程の短縮にも、前段におけるいかに具体的に理想の住宅像を思い描けるかという点が重要になってきます。正式に依頼する建築会社を決めるのにも、建築計画の詳細を詰めるのにも具体的な理想像は重要です。
その他、住宅ローンの仮審査はなるべく早めに受けておきましょう。住宅ローンを契約するには仮審査と本審査があり、仮審査は一般的に3日~1週間程度の時間がかかります。金融機関の繁忙期ではそれ以上の時間を要することもありますので、早め早めの行動が工程の短縮には重要です。
建設段階
建設段階では⑥着工、 ⑦竣工・引き渡しまでが行われます。
この段階において施主側で短縮できる工夫の余地は少ないですが、計画を立てる時になるべく規格品を使用し、基本的で工事が難しくない作りにしておくと、オーダーメイドの品を多く使った難しい設計よりも工事の時間は短縮されるでしょう。
その他、着工前に安全祈願として行う地鎮祭や、骨組み完成後の上棟式を執り行わない・規模を小さくするなどして工程を圧縮する考え方もあります。ただし、建築現場の作業員や地域住民とコミュニケーションできる良い機会ですから、行事自体はなるべく執り行った方が良いでしょう。
よくあるスケジュール遅延の原因と対策
入居したい時期から逆算して計画を立てたり、各工程をなるべく短くする工夫をしたりしても、不測の事態でスケジュールに遅れが出てしまうことはあり得ます。 主に遅れが出る原因は以下の3点です。
- 天候不良
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一番予測がつきにくく、対策も難しい遅延の原因です。特に基礎工事や外装工事は天候の影響を受けやすいため、余裕を持ったスケジュール設定が必要になります。
- 設計変更
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建築計画が本決定した後に設計を変更してしまうと、工事全体に影響が出てしまいます。よほどのことがない限りは本決定した計画からは変更することがないようにしましょう。
- 資材不足
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住宅を実際に建築する時の社会情勢によって、資材の調達に想定よりも時間がかかってしまう場合があります。場合によっては、資材価格の変動で予算を超えてしまったり、資材の種類を変更しなければならなくなったりすることもあるでしょう。
特に海外からの輸入資材などは社会情勢の影響を受けやすいので、不安材料があれば本決定する前に担当者に相談してみましょう。
注文住宅のスケジュールの流れを把握して余裕を持った計画を立てよう
注文住宅のスケジュールを把握し、計画的に進めることは、理想の家づくりをするために非常に重要です。 平均的な期間を理解し、急ぐ場合は最短で完成させるためのポイントを押さえることで、円滑な建築計画の進行が可能になります。
入居したい具体的な時期が決まっている場合は、そこから逆算した上で不測の事態に備えて余裕を持ったスケジューリングを行いましょう。いつ何が行われるのか把握しておけば、予測していないことが起きても慌てることなく対処することができます。
本記事を参考に、ぜひ理想の家づくりの計画をスタートさせてください。
- 国土交通省「令和5年度住宅市場動向調査」
イエココロのWEBサイト「自慢の注文住宅集めました。」では、群馬・栃木・宮城・山形を中心とした工務店情報やモデルハウス情報のほか、多数の「建築実例」を紹介しています。お近くにお住まいの方は、ぜひチェックしてください。