「そろそろ家を持ちたい」と考えはじめたとき、「建売住宅」と「注文住宅」で迷う人は多いはずです。どんな違いがあるかわからないという人もいるのではないでしょうか。
この記事では、両者の価格差を皮切りに、住まい選びを左右する5つの項目を比較し、どちらが自分に向いているのかを解説していきます。これから一戸建ての購入を検討している人は、ぜひご覧ください。

IECOCORO編集部
群馬・栃木・宮城・山形で注文住宅の情報誌「IECOCORO(イエココロ)」を発行する編集部。WEBサイト「自慢の注文住宅集めました。」では、地域の工務店情報のほか、多数の建築実例とイベント情報を紹介しています。
建売住宅と注文住宅の価格差はどれくらい?

家を購入する際に最も気になるのは、やはりお金のことでしょう。建売住宅と注文住宅では、購入費用にどれくらいの違いがあるのでしょうか。
全国的に見ると約1,400万円(中央値)の差がある
住宅金融支援機構が行った調査から、地域別に住宅の取得にかかった費用の差を見てみましょう。
| 地域 | 土地付き注文住宅 (万円) | 建売住宅 (万円) | 差額 (万円) |
|---|---|---|---|
| 北海道 | 4,933 | 4,016 | 917 |
| 東北 | 4,266 | 2,845 | 1,421 |
| 北関東信越 | 4,519 | 2,838 | 1,681 |
| 首都圏 (東京都を除く) | 5,405 | 3,920 | 1,485 |
| 東京都 | 7,308 | 5,458 | 1,850 |
| 東海 | 4,975 | 3,249 | 1,726 |
| 北陸 | 4,066 | 2,943 | 1,123 |
| 近畿 | 5,193 | 3,827 | 1,366 |
| 中国 | 4,755 | 3,229 | 1,526 |
| 四国 | 4,270 | 3,182 | 1,088 |
| 北部九州 | 4,863 | 3,509 | 1,354 |
| 南九州 | 4,362 | 3,266 | 1,096 |
都道府県の分類について(北海道・東京を除く)
- 東北:青森県、岩手県、宮城県、秋田県、山形県、福島県
- 北関東信越:茨城県、栃木県、群馬県、新潟県、長野県、山梨県
- 首都圏(東京都を除く):千葉県、埼玉県、神奈川県
- 東海:静岡県、岐阜県、愛知県、三重県
- 北陸:富山県、石川県、福井県
- 近畿:滋賀県、京都府、大阪府、兵庫県、奈良県、和歌山県
- 中国:鳥取県、島根県、岡山県、広島県、山口県
- 四国:香川県、徳島県、愛媛県、高知県
- 北部九州:福岡県、佐賀県、長崎県
- 南九州:大分県、熊本県、宮崎県、鹿児島県、沖縄県
建売住宅の方が安いことが見て取れますが、差額は地域によって大きく異なります。少ないところで約900万円、多いところでは約1,800万円の違いがあります。
面積を考慮すると価格差は小さくなる
ただし、上記はあくまで購入費用の比較に過ぎず、より正確な違いを知るためには面積も考慮する必要があります。そこで、全国平均における住宅・敷地面積の違いについても見てみましょう。
| 土地付き注文住宅 (㎡) | 建売住宅 (㎡) | 面積の差 (㎡) | |
|---|---|---|---|
| 住宅面積 | 111.1 | 100.7 | 10.4 |
| 敷地面積 | 251.2 | 145.5 | 105.7 |
どちらの面積でも注文住宅の方が大きく、特に敷地面積では100㎡以上の差があります。広い土地にゆとりをもって家を建てたいと考える人が多く、結果として価格差が大きくなっていると見受けられます。同じくらいの敷地面積で家を購入すると考えた場合、費用の差は縮まるため、一概に建売住宅の方が大きくコストパフォーマンスに優れているとは言えないでしょう。
1,400万円の違いは35年返済の場合で考えてみると、年間で40万円程度の負担増となります。この金額の差を判断基準の一つとしてみても良いでしょう。
建売住宅と注文住宅はどっちがいい?住まい選びの主要5項目を徹底比較

本章では、住まい選びに重要な「費用・設計の自由度・土地の条件・性能・入居までの期間」の5つの要素について、両者を徹底的に比較していきます。これらのポイントを具体的に見ていくことで、どちらの住宅が自分に適しているのか、より明確にイメージできるようになるでしょう。
費用は建売住宅が有利
建売住宅は注文住宅に比べ、購入費用を抑えられる傾向にあります。複数の住宅を同じ建材や工法により建設することで、経費を削減できるためです。また、土地と建物を合わせた総額を一目で把握できる、価格のわかりやすさも魅力と言えます。
注文住宅はデザインや仕様を選べる分、費用が高くなりがちです。また、土地探しから始める場合、希望する場所や条件によっては、予算を見直す必要が出てくることもあります。
設計の自由度は注文住宅が有利
建売住宅はほとんどの場合、完成した状態で販売されます。契約後に着工する場合でも、設計や規格が統一されているため、変更できるのは壁紙や建具といった内装の一部に限られ、基本的に間取りや外観、設備などを自由に選ぶことはできません。そのため、希望する条件によっては、物件探しに時間がかかることがあります。
一方で、注文住宅はデザインや間取りだけでなく、使用する建材や工法なども自由にカスタマイズできます。趣味に特化した空間を取り入れたり、生活を快適にする設備を導入したりするなど、理想の家づくりが可能です。ただし、施工会社によっては設備や仕様に標準プランを設けている場合があり、変更する際に追加費用が発生することもあるため、事前によく確認しておくことが大切です。
土地の条件は一長一短
建売住宅は好立地であることが多いです。不動産会社が専門的な視点で、周辺環境や将来の資産価値の面で優れた土地を選定し、購入しているためです。しかし、効率的な分譲を目的として、限られた土地にできるだけ大きな家を建てる傾向にあり、敷地面積に余裕のないケースも多く見られます。
注文住宅は場所や広さを選べることが利点です。通勤・通学の距離や居住環境のほか、庭や駐車場を設けるために敷地の広さを優先するなど、条件に合わせた土地選びができます。一方で、好立地な土地は建売住宅用に押さえられてしまっていることも多く、希望するエリアで理想の土地を見つけるのが難しい場合もあります。
性能は注文住宅が有利
建売住宅は間取りなどと同様に、住宅性能を左右する構造部分や設備もあらかじめ決められていることがほとんどで、自由に選べません。建築基準法により一定の水準は担保されますが、機能性よりもコストが優先される傾向にあるため、性能面では注文住宅に及ばないことがあります。
注文住宅は希望に応じて仕様を決められる点が魅力です。断熱性や気密性の高い構造や耐震性に優れた工法、光熱費を節約できる省エネ設備など、住む場所やライフスタイルに合わせた住宅を実現できます。高性能住宅に特化した施工会社もあり、より快適に安心して暮らせる住まいを求めるのなら、注文住宅がおすすめです。
入居までの期間は建売住宅が有利
建売住宅は土地と建物をまとめて購入するため、手続きが少なく、短い期間で入居できます。建物が完成済みなら、売買契約や住宅ローンの決済を経て、最短で1ヶ月ほどで引き渡しが可能です。契約後に着工するケースでも、規格通りに建てるため完成が早く、4ヶ月ほどで入居できるでしょう。
注文住宅を建てる場合、情報収集・予算計画・土地を探す、という流れは建売住宅とおおよそ同じです。しかし、そこからさらに家を建てるための建築会社を探し、打ち合わせを重ねて、ようやく着工に至ります。このように多くの時間と手間を要し、建築期間も含めて入居までに1年ほどかかるのが一般的です。各工程が長引けば、それ以上の時間が必要になることもあります。
建売住宅と注文住宅のメリット・デメリット【特徴一覧】
ここまで解説してきた内容に「建築工程のチェック」と「完成イメージ」を加え、建売住宅と注文住宅の特徴を10項目で一覧にまとめました。

本章では、両社の特徴をメリット・デメリットの形に整理し、それぞれの住宅の強みや注意点を解説していきます。ぜひ選ぶ際の判断材料として活用してください。
建売住宅の特徴
建売住宅の利点は、費用を抑えやすく、利便性の高い立地に、少ない時間と手間で新居を構えられることです。また、購入前に実際の完成物件やモデルハウスの間取りや全体の雰囲気を自分の目で確認し、納得したうえで選ぶことができます。
一方で、画一的で似たようなつくりの家が多いため、満足のいく住まいを見つけるのに時間がかかることがあります。また、完成前の物件であっても変更可能なのは内装や設備の一部に限られ、ほとんど選ぶことができません。
| メリット | 注文住宅よりも安価で買えることが多い 土地と建物を合わせた価格が明確で、予算計画が立てやすい 利便性の高いエリアの土地が手に入りやすい 住宅を取得するまでの手間が少ない 手続きが終わり次第、すぐに入居できる 購入前に内観などの仕様を確認できる |
| デメリット | 間取りやデザインの自由度が低い 敷地面積に余裕がなく、広い庭や駐車場を確保しにくい 似たような家が多く、個性を出しにくい 一定の性能は保証されているが、高性能住宅は少ない 工事の過程が見られないため、構造や土地など見えない部分は確認できない |
注文住宅の特徴
注文住宅のメリットは何といっても自由度の高さです。建築場所や依頼する会社、間取りやデザインなど、あらゆる面で自分の希望を反映させることができます。また、基礎や構造といった完成後には見えなくなる重要な部分を、建築途中にチェックできるため、安心して家づくりを進められる点も利点と言えるでしょう。
デメリットとしては、こだわりを追求するほど費用や手間がかかることです。計画から完成までに時間がかかり、打ち合わせや決定事項が多いため、ある程度の労力と時間的な負担が伴うことを理解しておく必要があります。しかしその分だけ、完成した住まいに対する愛着や満足感は高くなるはずです。
| メリット | 費用の調整がしやすい 間取りやデザイン、建材、住宅設備まで自由に決められる 建てる場所・建築会社を好きに選べる 断熱・気密、耐震、省エネなどに優れた高性能住宅にすることもできる 建築過程を見られるため、基礎や構造部分を確認できる |
| デメリット | こだわりすぎると費用が高くなる 費用相場がわかりにくく、予算計画を立てにくい 土地や建築会社探し、打ち合わせなどがあり、手間と時間がかかる 完成するまで外観や内装の確認ができず、暮らしをイメージしにくい |
建売住宅と注文住宅のどちらが自分に向いている?

ここまで紹介してきた両者の特徴から、建売住宅と注文住宅のどちらがあなたに向いているかを示していきます。家に対して何を求めているのか、どんな暮らしを実現したいのかを深く考えてみることで、あなたにとって最適な住まいの形が見えてくるはずです。
建売住宅に向いている人
建売住宅は「手間をかけず理想に近い住まいを手に入れ、できるだけ早く新生活をスタートさせたい」という人におすすめです。
- コストを抑えたい
- すぐに入居したい
- 手間や時間をかけたくない
- 土地を探したり、建築会社を探したりすることが面倒に感じる
- 間取りやデザインが、ある程度決まっていた方が安心
注文住宅に向いている人
注文住宅は「細部までこだわり抜いた、自分だけの理想の家づくりをとことん楽しみたい」という人におすすめです。
- 間取りや設備だけでなく、住み心地や性能にも徹底的にこだわりたい
- 費用や手間がかかっても構わない
- 住みたい場所が決まっていて、土地を見つけている
- 家づくりを依頼したい建築会社が決まっている
建売住宅と注文住宅のどちらが適しているかは、家族それぞれの価値観やライフスタイルによって異なります。大きなポイントとしては、「手間と時間、そしてコストをかけられるか」「こだわりの家に住みたいか」の2つが挙げられます。判断に迷ったときは、「何を重視するか」を考えてみると良いでしょう。
建売住宅と注文住宅の購入割合と選択理由
この章では統計データをもとに、実際に住宅を購入した人の割合をはじめ、住宅を選ぶまでの経緯や最終的な決め手になったことを見ていきます。住宅需要や購買傾向はライフスタイルや価値観の多様化といったさまざまな要因により、少しずつ変化しつつあります。こうした変化を踏まえつつ、どのような人がどのような理由で住宅を選んでいるのかを知ることで、自分自身の優先順位の整理や判断の参考にもなるでしょう。
購入割合の推移

住宅金融支援機構の2024年度「フラット35利用者調査」に占める新築戸建住宅取得者のうち、建売住宅と土地付き注文住宅の割合はどちらも約50%でした。10年前の2014年度と比較すると、注文住宅が57%とやや優勢だったのに対し、近年は建売住宅の需要が増加していることがわかります。この背景には、物価や建築資材の高騰により住宅価格が上昇していることがあると考えられます。
選ぶまでの経緯と決め手になったこと
国土交通省の「令和6年度 住宅市場動向調査報告書」をもとに、実際に住居を取得した人の動きを見てみましょう。
建売住宅と注文住宅を取得した人が、比較検討した新築住宅と希望した順位は以下の通りです。

建売住宅を購入した人のうち、約半数は注文住宅も検討しており、4人に1人は分譲マンションも候補としていました。また、希望順位を見ると、検討を重ねた後も注文住宅を意識している人がいることから、最終的に建売住宅を選ぶまでさまざまな選択肢を考えているようです。
注文住宅の場合、検討段階から強い関心があり、希望する順位でもそれが大きく変わらないため、初めから一貫して「注文住宅で家を建てたい」という意志があることが見て取れます。
建売住宅は「現実的な選択肢の中で、理想に近い最適解を求める」層から、注文住宅は「こだわりを持って理想を追求する」層に支持されていると言えるでしょう
続いて、建売住宅と注文住宅を選択した理由を見てみましょう。

建売住宅では、「立地環境の良さ」や「価格が適切である」ことが上位ですが、「デザインや設備が良い」という項目がそれを上回っています。画一的で自由度は低いと紹介してきた建売住宅でも、実際には満足度が高い傾向にあるようです。
イエココロのWEBサイト「自慢の注文住宅集めました。」で紹介している注文住宅を専門とする建築会社の中にも、建売住宅を販売する会社が見られるようになってきています。建売住宅と注文住宅で悩んでいる人は、「工務店が手掛ける建売住宅」という選択肢があることを覚えておくと良いでしょう。
注文住宅では、信頼できる依頼先を見つけたことから家づくりをスタートさせた人が最も多くなっています。理想の注文住宅を叶えるには自分たちの希望をしっかりと理解し、共感してくれるパートナーを選ぶことが何より重要と言えるでしょう。
建売住宅と注文住宅のよくある質問
【まとめ】建売住宅と注文住宅 それぞれの特徴や違いを把握しよう
- 建売住宅と注文住宅の価格差は、設計自由度の差だけでなく、建物や敷地面積によって左右され、コストパフォーマンスにそれほど大きな隔たりはない
- 建売住宅は「できるだけ手間をかけずに、早く住まいを手に入れたい」という人に向いている
注文住宅は「予算の許す限り、自分の理想を追求した家づくりがしたい」という人に向いている - 建売住宅は費用や購入までの手間を抑えやすく、好立地なことが多い。
注文住宅は建築場所や設計などの自由度が高く、高性能な家を建てることもできる。 - 建売住宅は需要が高まりつつあり、自由度の高い注文住宅と比べても、性能やデザインの面で遜色のないものが増えている
建売住宅と注文住宅のどちらが適しているかは、家族の価値観などによって異なるため、一概に「こちらの方が良い」とは言えません。判断に迷ったときには、手間やコスト、こだわりなど「何を最も重視するか」を考えてみることで答えが見つかるでしょう。それぞれの特徴や違いを把握して、自分に合った住宅を選んでください。

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