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第12回 常識をぶっこわせ6『妄想と現実』

前回「男女の既成概念」という深淵なテーマについて書き始めてしまいました。
それから4ヶ月が経ち、この謎について〈イルミネーション及び夜景の考察〉※1以外にも色々と考察を重ね、観察もしてみました。が、結論は出せないまま今に至っております。
にもかかわらず、続きを書くと編集部と約束してしまったうえに、これを「家」というテーマと繋げろと突かれております。笑点のお題より難しい構成に頭を抱える日々が続きました。
しかし、過激なタイトルのコラムを書いている割に自分自身で「こんな常識人で良いのか?」と日々問いかけ続ける著者※2にひとつの結論らしきものがみえてきました。

前回、世のイメージに反して「男性の方がロマンティストである」ということを問題提起させていただきました。
ロマンティストということは「夢見がち」ということと同じニュアンスを含みます。そしてロマンティックということは「妄想」というワードに置き換えられるでしょう。
すなわち数学的帰納法※3で言うならば、男性=妄想癖と言えなくもありません。逆説的に考えれば、女性=現実主義者ということも言えるのではないでしょうか。
これを家づくりという軸で見てみると、男性の皆さん、思い当たる節はありませんか?

「男性の妄想癖」をよく理解していただくため、或る男性に理想の住まいについてインタビューしたと想定してお読みください※4。

【希望の土地の広さは?】 
うーん、ガーデニングができて、週末にはBBQしたいから広いウッドデッキがあって、車は3台ガレージに入れたいなぁ。やっぱり最低で100坪くらいは欲しいよね。 

【希望の環境は?】 
やっぱり、子育てには自然が必要だよね。庭からは緑が見えるのがベスト。あと学校は近い方がいいよね。できれば、買い物にも便利な場所がいいかなぁ。あ、職場には車で20分以内は絶対条件ね。 
【住まいへの希望は?】 
自分の書斎は絶対欲しいよね!8帖くらいが希望だけど、そんなにわがままも言えないから6帖で我慢するよ。 子どもの頃の夢だった屋根裏部屋も欲しいな。
リビングは吹き抜けで、梁がドカーンと見えているやつがいいかなぁ。広々した土間も必要だね、バイクが入れられるくらいの。 
あ、暖炉も夢だったんだよなぁ。暖炉が無理なら今流行りの薪ストーブでもいいんだけど。 

いかがですか?
きっと全部叶ったらさぞ素敵な家になるでしょうね。
しかし、ここで厳しい一言を。この希望の家を建てるのにいくらかかるかわかりますか? 
「一生に一度の買い物でしょ!希望に近い家を建てたいじゃん!」 
そんな声が聞こえてきそうです。確かにおっしゃる通りです。

しかし! 
これを「妄想」と言わずしてなんと言えばいいのでしょう。 
旦那様。自己資金はどのくらいお持ちですか? 
旦那様。年収に応じて最大いくら住宅ローンが借りられるか知っていますか? 
旦那様。自分の希望ばかりじゃなくて、ご家族のことも考えていますか? 

今まで、様々な家族の家づくりを見たり話を聞いたりしてきた筆者でありますが、家を建てるディレクターとしての才能があるのは間違いなく女性の方だと思います。
現実に即した考えのなか、自分たちの家に必要な優先順位をしっかりとつけられ、住宅ローンの支払いまできちんと考えられる。
間違っても「どうにかなるんじゃない」的な発想で家づくりはしません。
女性たちは3台もの車をガレージに入れる必要性が低いことも、書斎で旦那様が読書や仕事をすることがないことも、屋根裏部屋が利用されなくなることも、広い土間が単なる物置になってしまうこともわかっているのです※5。
そう、家づくりに必要なのは「夢」や「妄想」でないことを、女性はちゃんとわかっています。

「何を言っているんだ!私は家を建てたら広い書斎でバリバリ仕事をして、屋根裏と土間を有効に利用する男になるのだ!」という反論もあるでしょう。
では、さきほどの希望を叶えるためにいくら必要か試算したことはありますか?
その資金を用意するために何をしたらいいか考えたことはありますか?
そして、それを実行に移しきちんと成果を出すことができていますか? 
夢はみているだけではダメなのです。実現するためには現実を見て、何かアクションを起こさなければ。

人生最大級のイベントである「家づくり」※6。
家は〈妄想〉で建てることはできません。ぎりぎりまで〈現実〉と向き合っていくことが大切です。
それは「諦め」とは全く意味が違います。妄想が現実にならなくても「諦め」とは言いません。 
そこに男性が気付き、女性に託すことができたときに素敵な家づくりの一歩が踏み出せると著者は考えています。 

最後にお伝えしたいことがあります。
今回の男性に向けた内容。具体的なモデルがないと、なかなか書けるものではありません。しかし気付けば素晴らしい対象がすぐ近くにいたのです。 

自分、という。


※1 「女性はロマンティストだ」と男性は思い込み、夜景やイルミネーションに連れまわしますが、実際にロマンティストだったのは世の男性のほうではないかという考察。前回のメインテーマとなっております。
※2 「ここに注釈が入るだろうな」という著者の想いが伝わりましたので、期待に応えてひと言。「普通の人」は自分自身が常識人であることを問い続けたりはしないのでしょうか…
※3 帰納法とは、このカラスは黒い(事例①)そのカラスも黒い(事例②)どこのカラスも黒い(事例③)事例①~③ゆえに、すべてのカラスは黒いという法則を導き出す推論法。しかし一羽でも白いカラスが見つかると、積み上げてきた理論が誤りであるとされる可能性も。(実際に白変種のカラスは存在するようです)
※4 このインタビュー自体が妄想となっていることが先程の「男性=妄想癖」の証拠になっているのかもしれません。
※5 子どもの頃「ずっと大事にするから!」と親にねだって買ってもらったスケートボードのことをふと思い出しました。
※6 住宅購入は「人生の三大出費」と言われることもあります。他の二つは「教育費・老後資金」だそうです。


山﨑かずお

著者プロフィール

多摩美術大学建築科卒。都内設計事務所勤務を経て、フリーランスの商業建築設計及びグラフィックデザイナーとして活躍。現在は「サラリーマン道」を究めるため、某住宅メーカーに在籍中。

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