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第3回 『灯り考3』

時の過ぎゆくのは早いもので、前回の寒い時期から、既に初夏が感じられる季節に移り変わってきました。名曲「時の過ぎゆくままに」※1のタイトルのように過ぎゆくままに過ごしていては、この原稿はいつまで経っても仕上がらないことを実感しつつ、部屋の窓を開け放ち昼下がりの心地よい5月の風を感じております。部屋では1994年リリースのMasters of funk※2のアルバムをターンテーブルに乗せ針をドロップして(実際はMacのiTunesを使用…)懐かしのビートに身を委ねながら締切日当日※3にキーボードに向かっている筆者です。

さて今回の「灯り考」のサブテーマは〝直接照明・間接照明〟ですが、私がこのコラム「Flip Side Design」の最初のテーマとして灯りを取上げたのは一言で言えば「生活に彩りを」ということに他なりません。

人生に一度の大きな買い物「家」をしかも注文住宅で建てたいと希望する皆様に、ささやかながらも「彩り」のアドバイスをできたらと思ってのことです。注文住宅の良さといえば建売住宅とは違い、施主様の希望に沿った家を設計し建てられるということにつきます。当然照明計画もオリジナルのものができるということになります。

現在の多くの家づくりでは光をメインテーマに考えた設計がされることは少ないと思います。設計者側の提案もそうでしょうが、施主側の希望としても光に対してかなり大雑把にとらえているところが無いでしょうか?

「リビングは南向きで大きな窓で明るくしたい」

せっかくの注文住宅でこれだけの希望ではとてももったいないとは思いませんか?

まず直接照明ですが、照明といっても天井からぶら下がるペンダントライト※4や直付されるシーリングライト※5だけが直接照明ではありません。この世界の最大の照明…それはなんといっても太陽です。この太陽の光をどう扱い、さらに演出できるかが注文住宅の最大の魅力と言っても過言ではありません。

私が大学で建築を学んでいた時、ほぼ全ての教授は「理科年表」※6なるものを持っていました。大学の教授といっても研究室で研究し教室で講義をするだけで良いという教授は少なく、実際に自分の設計事務所を持ち実務としての設計をしている教授が多くいる大学でした。

その教授は「理科年表」から季節ごとの日の出・日の入りの方向、南中高度等の情報を得るのです。そこから自分の設計している窓からの光の入り具合を計算していくわけです。

LDKに設置する掃き出し窓一つとっても、窓の幅や高さの違いで入る光の量やどこまで光が届くかが変化してきます。窓の位置も東西南北によって入る光の性格は異なってきます。南向きの窓であれば元気の良い温かい光、そしてその光は時間とともに表情を刻々と変えていきます。北側の窓であれば暖かさはないものの、一日中安定した優しい光が差し込みます。ちなみにデッサンを行うアトリエは北向きの部屋が通常ですが、これは一日デッサンをしてもオブジェクトの影が変化しないからなのです。

ここで1枚目のアルバムが終了。さて次は…「INFINITY 16 BEST」2010年リリース。そろそろ夏を感じさせるこの季節、レゲエでテンション上げていきます!
家づくりにあたって、「理科年表」的なことを考えながら設計するのは当然設計士に役目になるわけですが、より良い住宅を実現させるためには色々な情報が必要となってきます。その情報を伝えることが施主側の大事な仕事なわけですが、具体的にどうして欲しいと伝えることはとても難しいでしょう。

そこで、新しい家での生活を一生懸命イメージしていただきたいのです。朝は柔らかい光に包まれながらネスレのマシーンでコーヒーを入れ、昨日の仕事帰りにフレッセイ※7で買ってきたクロワッサンを食べる。ランチはダイニングに集まって家族揃って食事をしたい…休日はちょっと寝坊をして窓のカーテンから溢れる朝日を感じて目覚めたい…専業主婦の奥様であれば、お子様を保育園に送っていったあと明るいLDKでお子様の保育園バッグをトーマス※8の布で手づくりしてみようかな…お仕事をしている奥様であれば、朝の忙しいキッチンは明るく大きな窓から見える庭の緑を感じながら過ごしたいな…などなど。「彩りのある生活」には演出された光が必要不可欠です。演出とは考えつくされたということになりますね。

考えつくされた光を取り込むためには、施主の方から遠慮せず、

“もっとわがまま”

を伝えることが大事なのです。

家づくりで大事なのは昼間の太陽の光を使った直接照明・間接照明です。こればかりは家が出来上がった後に修正していくのは難しいことです。窓の大きさ、向き、壁の位置。全て光にとっては意味があります。

伝え、設計してもらい、話し合い、修正し、この作業を繰り返し、納得し、家が出来上がっていきます。

時にお互いの根気が必要な場面が出てくることもあるでしょう。素敵な家づくりのため、笑顔で過ごせる家づくりのため「諦め」はNGです。

Have a good life with good house!


※1 時の過ぎゆくままに(As Time Goes By)は、1931年にハーマン・フップフェルドがミュージカル「エブリバディズ・ウェルカム 」のために作曲。しかし、この曲を世に知らしめたのは1942年の映画「カサブランカ」のテーマとして使用されたのがきっかけです。ちなみに沢田研二のヒット曲「時の過ぎゆくままに」も阿久悠の歌詞が印象的な名曲でしたね。
※2 CPM-MARVINを中心に、複数人のヴォーカリスト/ミュージシャンからなるヒップホップ/R&Bユニット。代表曲「KOOL LIKE OTIS」はホンダ・アコードのCMで使用され、その圧倒的なグルーヴ感で今なお支持される名曲です。
※3 「編集者泣かせ」とはこういう状況を言うのでしょうね…
※4 ペンダントライトとはチェーンやコードなどで、天井から吊り下げた照明のこと。
※5 シーリング=天井に直付けするタイプの照明器具のことを指します。天井の中央部に設置することで部屋全体を照らすために使用することが多く、日本の住宅に最もよく使われる照明です。
※6 国立天文台が編纂した自然科学に関するデータ集のこと。しかし、著者が真面目に大学へ行っていたとは…
※7 群馬県前橋市に本社を置き、同県及び栃木県、埼玉県で展開するスーパーマーケット。中に入っているパン屋さんのクロワッサンは確かに美味しい!
※8 「きかんしゃトーマス」はイギリス制作の幼児向けテレビ番組のこと。汽車に人の顔がついたやつ、といえばわかっていただけるはずです。


山﨑かずお

著者プロフィール
多摩美術大学建築科卒。都内設計事務所勤務を経て、フリーランスの商業建築設計及びグラフィックデザイナーとして活躍。現在は「サラリーマン道」を究めるため、某住宅メーカーに在籍中。

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