
毎回地元をリードするトップランナーを取り上げる。第2回となる今回は、前橋市にある株式会社林藤ハウジング。群馬県産の木材を家づくりに活かしつつ、植林し木を育てるという環境保護活動にも積極的に取り組んでいる。目指すべきは「家づくり」と「自然環境」の共生。30年と言われる日本の住宅寿命に一石を投じるべく、20年以上も前から「サスティナブル・ハウジング(持続可能な住宅)」を掲げるなど、この分野においては県内でも先駆け的存在といえる会社だ。
林 慧次郎
一級建築士、インテリア・プランナー。昭和57年1月に同社を創設。エコ先進国と言われるドイツでその家づくりに触れ、帰国後は化学物質を一切使用ない家づくりを提唱。北関東地域住宅開発ネットワークの会長を務めている。
「バウビオロギー(Baubiologie)」という言葉をご存知だろうか。このドイツの造語が意味するのは「建築生物学」という分野だ。「bau(バウ)は建築・構成、「bio(ビオ)」は生物、そして「~logie(ロギー)=~学」の語源である、ラテン語の言語・精神を意味する「logos(ロゴス)」を結びつけた思想・学問のことを指す。これはドイツのアントン・シュナイダー博士主宰の「バウビオロギー+エコロジー研究所」が中心となり、住まいを「有機体」として捉え、合成化学物質を含まない調湿性能を持つ自然素材を中心とした家づくりを提唱したのが始まりである。ドイツやスイスといったヨーロッパのエコ先進国で盛んに展開されている考え方であり、我々の住宅が常に周辺環境と連動していることを意識。気象・生態系と「いかに調和し、向き合っていくか」を課題とした取り組みを行っている。
このエコロジー建築の最先端を走る「バウビオロギー」の考えに基づき、環境と共生していく家づくりを独自の視点から掘り下げ、実践している工務店が群馬にある。それが今回ご紹介する、林藤ハウジングの代表取締役社長・林慧次郎氏である。
バウビオロギーとの出会い
まだ日本に「エコロジー」という概念が希薄だった時代。林氏は25年ほど前に先進国・ドイツを訪問し、バウビオロギーという思想やその家づくりを目の当たりにした。徹底した自然素材へのこだわり、化学物質を含まない建材の使用は当たり前。家づくりは「人間を中心に、人間と居住環境の全体的諸関係について考える」という先進的な哲学に、林氏はカルチャーショックを受けたという。今でこそ一般的となった「シックハウス対策」や「健康住宅」といった言葉が、まだまだ普及していない時である。化学物質を含んだ壁紙や塗料、建材に家具。接着剤で囲まれた当時の「日本の家づくり」を省みた林氏はその数年後に「環境共生住宅の実現」を掲げる「北関東地域住宅開発ネットワーク」に加盟。バウビオロギーの考え方である「住まいを第三の皮膚として捉え、自然素材を主体として心地よい空間を構築する」ことをベースに、20~30年と言われた日本の住宅寿命に警鐘を鳴らす「サスティナブル・ハウジング」へと着手することとなる。
サスティナブル・ハウジング
サスティナブル・ハウジング、つまり「持続可能な住宅」とは、子や孫の世代にまで住み継げることを前提とした家づくりのことである。
「木のプロ」である林氏が厳選した良質な木材を、経験豊富な大工が仕上げていく。漆喰や調湿効果の高い珪藻土、ニカワや続飯(そくい=でんぷんのり)を原料とする「自然由来の接着剤」をふんだんに用いて空気環境の改善を促す。そして高断熱・高気密技術を駆使することにより、できるだけ冷暖房器具を使わずに、省エネルギーで健康的な居住環境を実現しているのだ。この技術はヒートショックや結露といった問題に対しても非常に効果的で、快適かつ健康的な生活の基盤ともいえるだろう。また、自然の力を利用したパッシブソーラー技術に加え、リサイクル可能な材料や再生可能な自然素材の使用という「エコロジー住宅」としての性能も無視できない。
だが、何よりも驚くのは現在においても最先端とされるこれらの技術や考えを、20年以上も前から林氏が提唱・実践してきたということだろう。林氏が会長を務める「北関東地域住宅開発ネットワーク」が掲げている「環境共生住宅」が今、注目を集めているというのも頷ける。
木を育て、木を使う
林氏が目指す「家づくり」と「自然環境」の共生のためには、「木」を知り尽くし、愛し、そして無駄なく活用するということが重要となる。そしてそのために、林氏は自ら「木」を植え、「山」や「森」を育てている。
「森や山がなければ、そこに住む生物はもちろん我々人間も生きていくのは難しいでしょう。常に自然に感謝し、大事にしていく。家づくりに携わる者として、当然のことだと思います」と話す林氏は、協力業者でつくる「りんどう会」のメンバーや施主、一般参加者とともに高山村の森の整備活動に積極的に取り組んでいる。そして、その背景には「カーボンオフセット・カーボンフットプリント」や「自然環境保護」といった人間と自然が共に豊かに暮らしていくためのサイクルの実現がある。だからこそ林氏は県産材にこだわり続けている。構造材もバイオマス燃料で乾燥した材を使用している。
「外国からの安価な木材を使用すれば、伐採・運搬・加工を通じての莫大なエネルギー消費やCO2の発生は否めません。その点、県産材は外材のような工程は必要なく、地場産業の活性化にも寄与することができます」と林氏。また、「群馬県の気候風土で育った木だからこそ、そこに建つ家には地元の木が最も適しているのです」。
地元の木を使い、地元の森や山に再び木を植える。地産地消の「ゼロエネルギー住宅」こそ、これからの家づくりに最も必要なものではないだろうか。

自然環境は土壌、大気、水の三要素に分類されている。私たちは住まいづくりとそこでの生活を通じて、不本意にもこの三要素全てを汚染しようとしている。環境問題を切実に意識させられる場面が少ないのも影響しているが、いずれそのダメージは住まいに直結するだろう。
私たちがこれらの家を建てようとするとき、下の項目をどれだけ考慮するだろうか。これらは、全て周辺の自然やその地域が保有している有形・無形の資産(ポテンシャル)なのだ。このポテンシャルをバランスよく活用することが、「環境共生住宅」の考え方といえる。

建物が完成しても、それは「暮らし」という末永いテーマから見れば、あくまで途中でしかない。同社は建築後、数年経過した施主宅の見学会を定期的に行う。これにより自然素材の経年変化や生活感など、施主の実体験を通して「夏は本当に涼しいのか?」「冬は本当に暖かいのか?」「住み心地はどうか?」といった多くの疑問に答えることができるのだ。 ※写真は実際に施主が見学者の質問に答えているところ

群馬の気候条件を知る木材を家づくり活かす。それによって家と環境が一体感を持ち、強度を高め、末永く暮らせる住まいへと仕上がっていく。「自然の素材を使う事が人にも環境にも優しくなれる絶対条件」それが同社の基本姿勢だ。自然と共存するための太陽光パネル、美しく植栽された木々の彩り。まるで自然と調和するかのような外観デザインも「環境共生住宅」には欠かせない。

シックハウスは目に見えない。だからこそ厄介であり、社会現象と化した理由もここにある。同社は素材にこだわっているが、より安全性を追求するため、モデルルームにて様々な各種実験を行っている。温室度の年間測定や気密測定、揮発性有機化合物の測定。さらには日射しをコントロールするための日射遮蔽対策日記までつけているほどの徹底ぶりだ。

同社は椅子やテーブルなどの造作家具にも力を注ぐ。要望があればシステムキッチンや食器棚にも対応している。ここでも重要なのは、家具を組み立てる際にボンドなどの接着剤を一切使用していないということ。板と板の間には職人が自らの手で練り込んだ続飯(そくい)という昔ながらののりを用いるなど、化学物質のあらゆる可能性を排除している。
森林と家づくりは深い関わりがある。同社は家づくりに携わる責任ある会社として高山村の森を預かり、植林や森林整備などのボランティア活動を精力的に続けている。それは群馬という地域の環境、果ては地球環境までを見据え、同社協力会員の協力のもと「まずは我々にできることから」と手を挙げたのだ。伐採と植林というサイクルを繰り返す「カーボンニュートラル」。CO2排出を極力抑え、少しでも地球温暖化の防止につなげていく。そして家はいずれ大地に還るものであり、環境に負荷を与えない家づくりこそ、これからの建築会社に求められている重要なテーマだ。その先駆けともいえる同社の取り組みは、まさに他社の手本となるべきものである。
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株式会社林藤ハウジング
〒371-0036
群馬県前橋市敷島町248-9
TEL:027-234-4060
URL:http://www.rindou.com/
MAIL:eco-home@rindou.com
【所属団体】
新木造住宅技術研究協議会会員
北関東地域住宅開発ネットワーク会員
社団法人 群馬県木造住宅産業協会会員
自然×住宅の会会員
日本バウビオロギー研究会 理事
【各賞受賞】
「ぐんまの家」設計・建設コンクール
・1990年 S邸 佳作
・1993年 H邸 優良賞
・1996年 Y邸 優良賞
・1998年 U邸 住宅金融公庫北関東支店長賞
「大地に還る住宅」全国提案競技
・2000年 A邸 優秀賞
・2004年 東京電力主催のSwitch! Housing Reviewで受賞
・2005年 「ふるさと木の家」建設コンクール
・2005年 「杉100本」家づくり推進事業の部 最優秀賞(高崎 U邸)
・2006年 「ふるさと木の家」建設コンクール
・2006年 「杉100本」家づくり推進事業の部 優秀賞(高崎 E邸)
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